「緊急地震速報」の版間の差分

 
== 仕組み ==
地震が発生すると、揺れが物理的な[[波動|波]]ある[[地震波]]となって周囲に伝わる。地震波大きく2種類あって、[[初期微動]]と呼ばれる小刻み揺れを引き起こす[[地震波#P波|P波]]と呼ばれる小さな揺れ([[縦波]])と主要動でのと呼ばれる大きな揺れを引き起こす[[地震波#S波|S波]]と呼ばれる大きな揺れ([[横波]])および[[表面波]]同時に発生する。P波とS波(・表面波)は[[伝播]]速度が異なり、P波は毎秒約7km、S波・表面波は毎秒約4kmの速さで伝わる。この伝播速度差を利用して、震源に近い地点におけるP波の観測に基づき、後から来るS波の伝播を[[時系列]]的に予測し、震源からある程度以上(P波とS波の時間差が充分に開くほど)離れた地点に対しては、その到達前に予測を発表することができる。
 
現在の緊急地震速報で算出される地震の要素は、地震の発生時刻、震源の位置([[経緯度]]と震源の深さ)、規模([[マグニチュード]])などである。発生時刻と震源位置を算出する方法は、[[大森公式|震源距離の大森公式]]を改良したテリトリー法・グリッドサーチ法などに、既知の地震波速度分布<ref>精密観測などによって算出された走時表などを利用する。緊急地震速報では速さを重視して深さのみに依存する1次元走時表を用いている。</ref>などによる補正を行って求めるものであり、20世紀初頭には確立されている<ref name="jmatechref">[http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/Whats_EEW/reference.pdf 緊急地震速報の概要や処理手法に関する技術的参考資料] 気象庁、2007年7月29日。</ref>。これに自動観測技術と高速通信技術が加わったことにより、[[1980年代]]頃から発生時刻と震源位置を速報できるようになっていた。一方、速報で要求されるような、地震波到達直後に規模を求める技術が確立されたのは[[1990年代]]からである。高精度の[[デジタル]][[地震計]]が普及して波形解析が容易になったことで、過去の大地震の観測波形から統計的な法則が見出され、初期波形から規模を求める式が考案された。
 
国内数百か所で常時観測されている地震波形は、デジタル波形の[[バンドストップフィルタ|帯域除去]]・[[バンドパスフィルタ|帯域通過]]、レベル法、B-Δ法によるノイズ識別や震央距離算出が行われていて、ある程度の大きさの振動を観測するとデータセンターに情報を送出する。複数のデータセンターから情報が送られてきた場合はノイズの可能性が低く地震であると判断し、テリトリー法・グリッドサーチ法による発生時刻と震源位置の算出、マグニチュードの算出を行う。マグニチュード算出には、P波到達後3秒後の最大振幅に依る「P相マグニチュード(P相M)」を初期に適用し、適切な時間に全波形に依る「全波マグニチュード(全波M)」に切り替える方法をとっている。そして、これらの震源要素をもとにして、[[オペレーションズ・リサーチ|統計的手法]](経験的手法)により震源距離に既知の地盤の地震動増幅度による補正を加えて算出される各地点の[[表面最大速度]](PGV)から最大[[震度]]を推定する。また、S波の理論走時から主要動到達時刻を推定する。これらの結果から、後述の基準に達した地震について速報を発表する<ref name="jmatechref" />
 
緊急地震速報は秒単位を争う情報伝達であり、その処理や[[伝送]]に起因する警告の[[遅延]]時間を極力少なくして、地震の主要動が各地に到達するまでの事前の時間を少しでも長く確保する必要があり、配信システムや[[ネットワーク]]などには高速化のための工夫がされている。