「亀がアキレスに言ったこと」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Was a bee (会話 | 投稿記録)
Was a bee (会話 | 投稿記録)
style
6行目:
[[ファイル:LewisCarrollSelfPhoto.jpg|thumb|パラドックスを提示した[[ルイス・キャロル]]。一般には『[[不思議の国のアリス]]』の作者として有名]]
この議論はまず次のような論証を考えるところから始まる。
{{Quotation|
* '''前提''' '''A''': 同一のものに等しいものはお互いに等しい([[推移関係]])。
*'''前提''' '''B''': この三角形のこの二つの辺は同一のものに等しい。
:それゆえ
* '''結論''' '''Z''': この三角形のこの二つの辺は、お互いに等しい。
}}
 
ここで亀はアキレスに「この結論が[[前提]]から論理的に導かれているかどうか」を尋ねる。するとアキレスは「明らかにそうだ」と同意す答える。亀は再び訊ねる。「[[ユークリッド原論]]の読者のなかには、『前提Aと前提Bの両方が[[真]]である』という事は拒否しつつ、かつ、それでも『この論証の形式自体は[[妥当性|論理的に妥当]]だ』と認める者がいるのではなかろうか」と。アキレスは「そのような読者はいるだろう」と答える。つまり「もし前提Aと前提Bが真であるならばZも真でなければならない」とは認めつつも、「前提Aと前提Bが真である」とは認めない(つまり[[前提]]を否定する人間、論証の[[健全性]]を否定する人間)はいるだろう、と。
{{Border|
*'''前提''' '''A''':同一のものに等しいものはお互いに等しい([[推移関係]])。
*'''前提''' '''B''':この三角形のこの二つの辺は同一のものに等しい。
:それゆえ
*'''結論''' '''Z''':この三角形のこの二つの辺は、お互いに等しい。
|color=Gray}}
 
ここで亀はアキレスに「この結論が[[前提]]から論理的に導かれているかどうか」を尋ねる。するとアキレスは「明らかにそうだ」と同意する。亀は再び訊ねる。「[[ユークリッド原論]]の読者のなかには、『前提Aと前提Bの両方が[[真]]である』という事は拒否しつつ、かつ、それでも『この論証の形式自体は[[妥当性|論理的に妥当]]だ』と認める者がいるのではなかろうか」と。アキレスは「そのような読者はいるだろう」と答える。つまり「もし前提Aと前提Bが真であるならばZも真でなければならない」とは認めつつも、「前提Aと前提Bが真である」とは認めない(つまり[[前提]]を否定する人間、論証の[[健全性]]を否定する人間)はいるだろう、と。
 
ここで再び亀はアキレスにこう問いかける。「二番目の種類の読者として、『前提Aと前提Bが真である』とは認めながら、なおかつ『前提Aと前提Bがどちらも真であるならば、Zも真でなければならない』という原則については受け入れない、という者もいるのではないか?」と。アキレスは亀に同意して「そのような者もいるだろう」と認める。すると亀は「自分をそういう人間だと考えてくれ」とアキレスにいう。そしてその上で、「結論Zが正しくなければならないということを受け入れざるをえないよう論理的に私を説得してみてほしい」と頼む(亀は二番目の種類の読者として、[[論証]]そのもの、推論式による結論、形式、妥当性を拒否している)。
20 ⟶ 19行目:
A、B、Zをノートに書き留めたアキレスは、ならば「こういう前提を認めろ」と亀に迫る。
 
 
{{Border|
*{{Border| '''前提''' '''C''': もしAとBが正しければ、Zは正しくなければならない。|color=Gray}}
 
|color=Gray}}
 
亀はこれを受け入れる。ただし自分がこれを受け入れたことが分かるように、ノートにその新しい内容を書きこんでくれと頼む。アキレスはノートに前提Cを書き込む。そして新しい形はこうなった。
 
{{BorderQuotation|
*'''前提''' '''A''':同一のものに等しいものは、お互いに等しい(推移関係)。
*'''前提''' '''B''':この三角形のこの二つの辺は同一のものに等しい。
*'''前提''' '''C''':もしAとBが正しければ、Zは正しくなければならない
:それゆえ
*'''結論''' '''Z''':この三角形のこの二つの辺は、お互いに等しい。
}}
|color=Gray}}
 
しかし亀が前提Cを認めても、それはまだ論証を拡大させること自体を認めたわけではない。アキレスが「AとBとCが正しいならば、Zも認めなければならない」といえば、亀はそれは異なる仮言的命題(hypothetical proposition)だと区別を迫る。そしてCを認めても、Dが正しいかどうかを確かめねばZという結論はまだ誤りがありえるとほのめかした。
 
*{{Border| '''前提 D''': もしAとBとCが正しければ、Zは正しくなければならない。|color=Gray}}
 
前提をノートに書き足してくれるならばそれぞれの仮言的前提を認めてもよいが、結論にはまだ至らないと亀は続けていった。つまり、書き込んだ前提が全て正しければ、Zは正しくなければならないということを仮言的に否定すればよいのである。