削除された内容 追加された内容
Bugei (会話 | 投稿記録)
→‎柔道事故: NHK番組の要約と思われる記事を項目化
519行目:
 
== 柔道事故 ==
まず、柔道の投技の基本は受の背中が大きく畳に着くように投げることだが、取は受を頭から落さないように投げ、多くの投技では受の体が畳に着く寸前に引き手を引いて受の体をわずかに引かなければならず、受は正しい受身(腕で畳を打って緩衝し、同時に顎を引いて固定し後頭部を打たないように護る)を身に付けなければならない。しかし、取と受の双方若しくはいづれか一方が未熟な場合、受が頭部を畳にぶつけることがある。例えば[[大外刈り]]は、受が後ろ倒しになるという技の性格上、まだ正しく受身を取れない段階の人(初心者)にかけると後頭部を強打する危険性が高い。
 
しかし、取と受の双方若しくはいづれか一方が未熟な場合、受が頭部を畳にぶつけることがある。例えば[[大外刈り]]は、受が後ろ倒しになるという技の性格上、まだ正しく受身を取れない段階の人(初心者)にかけると後頭部を強打する危険性が高い。また、頭からの落下による事故原因の他に[[加速損傷]](回転加速度損傷)が原因と思われる可能性も示唆されており、これは頭部に外力(極端な遠心力、加速度)が加わることで頭蓋骨に回転加速度がつき頭蓋骨内の脳が全体的に回転(一方向への偏り)することで脳と硬膜を繋ぐ橋静脈が破断、[[急性硬膜下血腫]]に至るという機序である<ref>[http://www.judo.or.jp/data/docs/print-shidou.pdf 柔道の安全指導 2011年第3版] 8-12頁 [[全日本柔道連盟]]</ref><ref>[http://www.asahi.com/sports/spo/OSK201108240163_01.html 遺族の思い、柔道界動かす 滋賀の柔道部員死亡から2年] asahi.com 2011年8月24日</ref><ref>[http://www.asahi.com/sports/spo/OSK201111270076.html 柔道のリスク知って 中学で必修化控えシンポ 滋賀] asahi.com 2011年11月28日]</ref>。
 
===柔道事故の統計===
死亡数の絶対値こそ水泳や陸上競技のほうが多いとの報告があるが(独立行政法人日本スポーツ振興センターが平成2年から21年までに、学校内で柔道の授業や部活動で死亡し見舞金を支給したのは74件。陸上競技275件、水泳103件)、2000年から2009年における中学生10万人当たりの平均死亡事例は柔道2.376人、2番目に高率なバスケットボールで0.371人であるとされ、学校における柔道の活動中の死亡事故発生率はバスケットや野球などのスポーツに比べて高いといえる。
まず概略を説明すると、柔道の指導中の死亡率はバスケットや野球などのスポーツに比べて10倍ほどであり、突出して非常に高い<ref name="nhk_closeup">NHKクローズアップ現代 「“必修化”は大丈夫か 多発する柔道事故」20120206 [http://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20120206-21-10831&pf=f]</ref>。
 
学校などによる必修授業での事故柔道の練習中に亡する子どもの数は年平均4以上というデータがあり、過去27年間で計110人の生徒が死亡、2009年から2010年にかけては計13人の死亡事故が確認されている<ref> http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2781906/6629423</ref>。名古屋大学[[内田良]]准教授の調査では1983年から2010年の28年間に全国で114人が死亡、内訳は中学39人、高校75人で中高ともに1年生が半数以上を占め、14人が授業中での死亡とされる。後遺症が残る障害事故は1983年から2009年にかけて275件で、内3割は授業中での事故との調査報告が出ている<ref>[http://repository.aichi-edu.ac.jp/dspace/bitstream/10424/2931/1/kenkyo59131141.pdf 内田良「柔道事故ー武道の必修化は何をもたらすのかー学校安全の死角4(pdf)]</ref><ref>[http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120117-OYT1T00433.htm 中高生114人、柔道で死亡していた…名大調査] (2012年1月18日 読売新聞)2012年1月30日閲覧</ref>。死亡数の絶対値こそ水泳や陸上競技のほうが多いとの報告がある<ref>(独立行政法人日本スポーツ振興センターが平成2年から21年までに、学校内で柔道の授業や部活動で死亡し見舞金を支給したのは74件。陸上競技275件、水泳103件)</ref>が、2000年から2009年における中学生10万人当たりの平均死亡事例は、柔道2.376人、2番目に高率なバスケットボールで0.371人であるとされる。柔道の事故に関して[[全国柔道事故被害者の会]]が存在する
 
===柔道事故の起き方と民事訴訟===
頭から柔道落下による事故原因の他[[加速損傷]](回転加速度損傷)が原因と思われる可能性も示唆され関しおり、これは頭部に外力(極端な遠心力、加速度)が加わることで頭蓋骨に回転加速度がつき頭蓋骨内の脳が全体的に回転(一方向への偏り)することで脳と硬膜を繋ぐ橋静脈が破断、[[急性硬膜下血腫]]に至るという機序である<ref>[http://www.asahi.com/sports/spo/OSK201108240163_01.html 遺族の思い、柔道界動かす 滋賀の柔道部員死亡から2年] asahi.com 2011年8月24日</ref><ref>[http://www.judo.or.jp/data/docs/print-shidou.pdf 柔道の安全指導 2011年第3版] 8-12頁 [[全日本柔道連盟]]</ref><ref>[http://www.asahi.com/sports/spo/OSK201111270076.html 柔道事故被害者リスク知って 中学で必修化控えシンポ 滋賀] asahi.com 2011年11月28日]</ref>が存在する。部活動後や帰宅時に容態が急変した場合、回転加速度損傷は外傷が殆ど無い為に柔道事故と死亡の因果関係の立証が困難になる<ref>[2009年7月 http://judojiko.net/news/364.html 滋賀県愛荘町立秦荘中学校柔道部の事故]では、第1回口頭弁論の段階では町側は過失について争う姿勢を見せていた([http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20120124000141 町側が過失認める 愛荘の中学生柔道部員死亡訴訟]京都新聞 2012年01月24日 22時30分)([http://www.asahi.com/edu/news/TKY201201250195.html 中学柔道部死亡事故で元顧問の過失認める 滋賀・愛荘町] 朝日新聞 1/25) </ref>。
「頭をぶつけると起きるから、頭をぶつけないようにすれば大丈夫」などと思っている指導者が多いが、その考え方は甘い<ref name="nhk_closeup" />。たしかに頭をぶつけた場合も危険であるが、頭をぶつけていなくても頭に強い加速度が加わるだけでも頭蓋内出血が起き命にかかわることがある<ref name="nhk_closeup" />。
 
===柔道事故対策===
まず、柔道の投技の基本は受の背中が大きく畳に着くように投げることだが、取は受を頭から落さないように投げ、多くの投技では受の体が畳に着く寸前に引き手を引いて受の体をわずかに引かなければならず、受は正しい受身(腕で畳を打って緩衝し、同時に顎を引いて固定し後頭部を打たないように護る)を身に付けなければならない。しかし、取と受の双方若しくはいづれか一方が未熟な場合、受が頭部を畳にぶつけることがある。例えば[[大外刈り]]は、受が後ろ倒しになるという技の性格上、まだ正しく受身を取れない段階の人(初心者)にかけると後頭部を強打する危険性が高い。
柔道事故が多い状況に対して(財)全日本柔道連盟'''安全指導プロジェクト特別委員会'''を設け、事故予防や事故時の対応などを指導者に啓発してる<ref name="renmeitaisaku">(2011年度) http://www.judo.or.jp/data/docs/print-shidou.pdf</ref>。<small>同財団では柔道事故による見舞金制度が設けられており死亡または1級から3級の後遺障害に見舞金200万円、障害補償として2000万円が支払われはするが、お金で失われてしまった家族の命は帰らないし、一生治ることがない障害は、お金では治せず、非常に悲惨である。事故が起きる前に防止することが何よりも重要である。</small>
 
「[[ゴング格闘技]]」は2010年6月の[[七帝柔道]]大会の試合後に[[松原隆一郎]](東大教授)と[[増田俊也]](作家)を招き、全柔連ドクターと京大柔道部OBの医師を交えた4人による緊急鼎談を行い、「未然に事故を防げるように柔道界で一致団結して前向きに対策を練っていこう」という話にまとまった。京大OBからは、寝技中心の七帝柔道らしく「中学生はまだ体ができていないので、授業ではまず寝技だけを教えて、危険な立技は体ができてから教えても遅くないのではないか」との意見が出ている。ただし、高校2年生が寝技の基礎練習中に頸椎を損傷して首から下が不随の状態になっている事例もある<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20120118-OYT8T00700.htm 柔道部練習で高2が首脱臼、首から下が不随に](2012年1月18日 読売新聞)2012年1月30日閲覧</ref>。
頭からの落下による事故原因の他に[[加速損傷]](回転加速度損傷)が原因と思われる可能性も示唆されており、これは頭部に外力(極端な遠心力、加速度)が加わることで頭蓋骨に回転加速度がつき頭蓋骨内の脳が全体的に回転(一方向への偏り)することで脳と硬膜を繋ぐ橋静脈が破断、[[急性硬膜下血腫]]に至るという機序である<ref>[http://www.asahi.com/sports/spo/OSK201108240163_01.html 遺族の思い、柔道界動かす 滋賀の柔道部員死亡から2年] asahi.com 2011年8月24日</ref><ref>[http://www.judo.or.jp/data/docs/print-shidou.pdf 柔道の安全指導 2011年第3版] 8-12頁 [[全日本柔道連盟]]</ref><ref>[http://www.asahi.com/sports/spo/OSK201111270076.html 柔道のリスク知って 中学で必修化控えシンポ 滋賀] asahi.com 2011年11月28日]</ref>。部活動後や帰宅時に容態が急変した場合、外傷が殆ど無い為に柔道事故と死亡の因果関係の立証が困難になる<ref>[2009年7月 http://judojiko.net/news/364.html 滋賀県愛荘町立秦荘中学校柔道部の事故]では、第1回口頭弁論の段階では町側は過失について争う姿勢を見せていた([http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20120124000141 町側が過失認める 愛荘の中学生柔道部員死亡訴訟]京都新聞 2012年01月24日 22時30分)([http://www.asahi.com/edu/news/TKY201201250195.html 中学柔道部死亡事故で元顧問の過失認める 滋賀・愛荘町] 朝日新聞 1/25) </ref>。
 
===柔道事故への対応とNHK番組===
「頭をぶつけると起きるから、頭をぶつけないようにすれば大丈夫」などと思っている指導者が多いが、その考え方は甘い<ref name="nhk_closeup">NHKクローズアップ現代 「“必修化”は大丈夫か 多発する柔道事故」20120206 [http://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20120206-21-10831&pf=f]</ref>。たしかに頭をぶつけた場合も危険であるが、頭をぶつけていなくても頭に強い加速度が加わるだけでも頭蓋内出血が起き命にかかわることがある<ref name="nhk_closeup" />。
日本の[[文部省]]の対応は非常にずさんで誠意の無いものであった。日本国政府(文部省の公務員たち)は、柔道が原因となった加速損傷で死亡事後が起きるという事実をを30年前に把握していたにもかかわらず、そうした事実を隠蔽し、指導現場へ伝えることが無かったという<ref name="nhk_closeup" />。
 
日本の[[文部省]]の対応は非常にずさんで誠意の無いものであった。り、日本国政府(文部省の公務員たち)は、柔道が原因となった加速損傷で死亡事後が起きるという事実をを30年前に把握していたにもかかわらず、そうした事実を隠蔽し、指導現場へ伝えることが無かったという<ref name="nhk_closeup" />。
 
日本国政府(文部省)は30年前に学校での柔道の指導中に起きた死亡事故で被害者家族から訴訟を起こされ、家族が「頭をうったと思われる」としたところ、文部省側は無罪を主張するために「頭を打っていなくても、加速損傷で脳が損傷をうけることがある」ということを主張するために、わざわざ英語で書かれた論文を持ち出して自己弁護したにもかかわらず、自らの弁護のために持ち出した「頭を打っていなくても、加速損傷で脳が損傷をうけることがある」という事実に基づいて対応策を打てば状況を改善できたはずであるにもかかわらず、その事実を全国の学校現場に伝える努力をまったくせず、結果としてその後に日本で100人以上の若者が命を落とすような状況を作り出していたのである<ref name="nhk_closeup" />。
546 ⟶ 553行目:
日本柔道連盟でも、連盟内に医師グループはいたものの、その中に頭を専門とする脳神経外科医がおらず、柔道事故の内実をよく理解していなかった<ref name="nhk_closeup" />。
 
二村雄次(日本柔道連盟所属の医師、自身も講道館柔道6段)は、NHKのクローズアップ現代(2012年2月6日放送)で、武道必修化(柔道必修化)の前に、第三者による柔道事故検証のしくみ(システム)を事前に用意しておくべきで、そうすればもしも柔道指導中の事故が起きた場合は(文部省の不誠実な公務員でもなく、事故を起こしてしまってから責任を回避しようとする現場の体育教師や校長などでもなく)第三者によって事故の実態を解明・分析し、そうすることで柔道事故の実態を解明し情報を蓄積すれば事故の防止策も打つことができる、と指摘した<ref name="nhk_closeup" />。
柔道事故が多い状況に対して(財)全日本柔道連盟では安全指導プロジェクト特別委員会を設け、事故予防や事故時の対応などを指導者に啓発<ref name="renmeitaisaku">(2011年度) http://www.judo.or.jp/data/docs/print-shidou.pdf</ref>。<small>同財団では柔道事故による見舞金制度が設けられており死亡または1級から3級の後遺障害に見舞金200万円、障害補償として2000万円が支払われはするが、お金で失われてしまった家族の命は帰らないし、一生治ることがない障害は、お金では治せず、非常に悲惨である。事故が起きる前に防止することが何よりも重要である。</small>
 
「[[ゴング格闘技]]」は2010年6月の[[七帝柔道]]大会の試合後に[[松原隆一郎]](東大教授)と[[増田俊也]](作家)を招き、全柔連ドクターと京大柔道部OBの医師を交えた4人による緊急鼎談を行い、「未然に事故を防げるように柔道界で一致団結して前向きに対策を練っていこう」という話にまとまった。京大OBからは、寝技中心の七帝柔道らしく「中学生はまだ体ができていないので、授業ではまず寝技だけを教えて、危険な立技は体ができてから教えても遅くないのではないか」との意見が出ている。ただし
高校2年生が寝技の基礎練習中に頸椎を損傷して首から下が不随の状態になっている事例もある<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20120118-OYT8T00700.htm 柔道部練習で高2が首脱臼、首から下が不随に](2012年1月18日 読売新聞)2012年1月30日閲覧</ref>。
 
2012年、文部科学省の外郭団体[[日本スポーツ振興センター]]名古屋支所が、同競技機関誌で掲載予定していた柔道の部活動や授業中の死亡事故への注意を呼びかける特集記事について、「中学の武道必修化が始まる前の掲載は慎重にすべきだ」という本部からの指摘を受けて不本意ながら掲載を見送った<ref>http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120125/k10015523971000.html 柔道事故への注意記事 掲載見送り
1月25日 16時27分  2012年1月30日閲覧</ref>。
 
二村雄次(日本柔道連盟所属の医師、自身も講道館柔道6段)は、NHKのクローズアップ現代(2012年2月6日放送)で、武道必修化(柔道必修化)の前に、第三者による柔道事故検証のしくみ(システム)を事前に用意しておくべきで、そうすればもしも柔道指導中の事故が起きた場合は(文部省の不誠実な公務員でもなく、事故を起こしてしまってから責任を回避しようとする現場の体育教師や校長などでもなく)第三者によって事故の実態を解明・分析し、そうすることで柔道事故の実態を解明し情報を蓄積すれば事故の防止策も打つことができる、と指摘した<ref name="nhk_closeup" />。
 
== 外部リンク ==