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{{出典の明記|date=2012年4月11日 (水) 14:32 (UTC)}}
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'''ペロブスカイト構造'''(ペロブスカイトこうぞう)とは、[[結晶構造]]の一種である。[[ペロブスカイト]](灰チタン石)<ref>ペロブスカイト(灰チタン石)は、[[化学組成]] CaTiO<sub>3</sub> の[[鉱物]]で、[[ロシア]]人[[科学者]] [[:en:Lev Perovski|Lev Perovski]] にちなんで名づけられた。</ref>と同じ結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。例えば BaTiO<sub>3</sub>([[チタン酸バリウム]])のように、RMO<sub>3</sub> という3元系から成る[[遷移金属]][[酸化物]]などがこの結晶構造をとる。
 
== 概要 ==
'''ペロブスカイト構造'''とは[[結晶構造]]の一種である。元来[[ペロブスカイト]]とは CaTiO<sub>3</sub>([[灰チタン石]])のことを指し、この名前は発見者である[[ロシア]]人[[科学者]] Perovsky にちなんで名づけられた。
理想的には[[立方晶]][[単位格子]]をもち、立方晶の各頂点に金属Rが、体心に金属Mが、そして金属Mを中心として[[酸素]]Oは立方晶の各面心に配置している。酸素と金属Mから成る MO<sub>6</sub> 八面体の向きは金属Rとの[[相互作用]]により容易に歪み、これにより、より[[対称性]]の低い[[斜方晶]]や[[正方晶]]に[[相転移]]する。
 
これにより、この結晶の[[物性]]が劇的に変化する。例えば、対称性の低下により、[[モット転移]]を起こし、金属Mのサイトに局在していた[[価電子]]が[[バンド]]として広がることが出来できるようになったり、金属Mのサイト同士の[[スピン]]間の相互作用による[[反強磁性]]秩序が崩れ、[[常磁性]]に転移したりする。この歪みによる相転移は、温度の上昇による金属Rの[[イオン半径]]の増加や、金属Rサイトに不純物原子を導入することなどでコントロールすることができる。
ペロブスカイトと同じ結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。例えば BaTiO<sub>3</sub>([[チタン酸バリウム]])のように、RMO<sub>3</sub> という3元系から成る[[遷移金属]]酸化物などがこの結晶構造をとる。
 
== マントル内部のペロブスカイト ==
理想的には[[立方晶]]系の単位格子をもち、立方晶の各頂点に金属Rが、体心に金属Mが、そして金属Mを中心として[[酸素]]Oは立方晶の各面心に配置している。酸素と金属Mから成る MO<sub>6</sub> 八面体の向きは金属Rとの相互作用により容易に歪み、これにより
[[ファイル:Earth cross section (Japanese).svg|thumb|250px|[[地球の構造]]<ref>http://www.gsj.jp/geomap/earth/earthJ.html</ref>]]
より対称性の低い斜方晶や正方晶に[[相転移]]する。
{{See also|マントル#地球|ポストペロブスカイト}}
数十G[[パスカル|GPaPa]]を超える超高圧の環境では、ペロブスカイト構造は非常に一般的な構造である。この構造には原子を稠密に詰め込むことができるためである。[[地球]]内部における主要な[[化学組成]]である MgSiO<sub>3</sub> は地下約660kmから約2,700kmの[[マントル]]下部において、ペロブスカイト構造をとっていると考えられる。この MgSiO<sub>3</sub> を125GPa、2,500[[絶対温度|K]]という超高圧高温環境下におくと、[[ポストペロブスカイト|ポストペロブスカイト構造]]と呼ばれる、より原子が稠密に詰め込まれた相に転移することが明らかにされた。地下約2,700kmより深いマントル最下層では、MgSiO<sub>3</sub> はポストペロブスカイト構造をとっていると考えられる。
 
この MgSiO<sub>3</sub> を、125GPa、2,500[[絶対温度|K]]という超高圧高温環境下におくと、[[ポストペロブスカイト|ポストペロブスカイト構造]]と呼ばれる、より原子が稠密に詰め込まれた相に転移することが明らかにされた。地下約2,700kmより深いマントル最下層では、MgSiO<sub>3</sub> はポストペロブスカイト構造をとっていると考えられる。
これにより、この結晶の物性が劇的に変化する。例えば、対称性の低下により、[[モット転移]]を起こし、金属Mのサイトに局在していた[[価電子]]がバンドとして広がることが出来るようになったり、金属Mのサイト同士のスピン間の相互作用による[[反強磁性]]秩序が崩れ、[[常磁性]]に転移したりする。この歪みによる相転移は、温度の上昇による金属Rのイオン半径の増加や、金属Rサイトに不純物原子を導入することなどでコントロールすることができる。
 
== 酸化物高温超伝導体 ==
==マントル内部のペロブスカイト==
<br>[[ファイル:2dlayer.png|thumb|ペロブスカイトの2次元構造</div>]]
数十[[パスカル|GPa]]を超える超高圧の環境では、ペロブスカイト構造は非常に一般的な構造である。この構造には原子を稠密に詰め込むことができるためである。地球内部における主要な化学組成である MgSiO<sub>3</sub> は地下約660kmから約2,700kmの[[マントル]]下部において、ペロブスカイト構造をとっていると考えられる。この MgSiO<sub>3</sub> を125GPa、2,500[[絶対温度|K]]という超高圧高温環境下におくと、[[ポストペロブスカイト|ポストペロブスカイト構造]]と呼ばれる、より原子が稠密に詰め込まれた相に転移することが明らかにされた。地下約2,700kmより深いマントル最下層では、MgSiO<sub>3</sub> はポストペロブスカイト構造をとっていると考えられる。
YBa<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>7-&delta;</sub> や Bi<sub>2</sub>Sr<sub>2</sub>Ca<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>10</sub> といった[[高温超伝導|酸化物[[高温超伝導]]は全て、ペロブスカイト構造を基礎とした結晶構造をしている。これら酸化物高温超伝導体には共通して以下のような特徴がある。
* CuO<sub>2</sub> 八面体のような銅酸化物が2次元のシート状に広がっている。
* このシートの上下には、[[ランタノイド]]等による伝導をブロックする層があり、銅酸化物層とブロック層が交互に積層する構造をとっている。
 
図に見られるようにペロブスカイト構造はシート状に並んだ MO<sub>2</sub> 八面体層と金属Rの層が交互に配置している。このような構造による2次元的な[[電気伝導]]高温超伝導において重要な役割を果す。
==酸化物高温超伝導体==
YBa<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>7-&delta;</sub> や Bi<sub>2</sub>Sr<sub>2</sub>Ca<sub>2</sub>Cu<sub>3</sub>O<sub>10</sub> といった[[高温超伝導|酸化物高温超伝導体]]は全て、ペロブスカイト構造を基礎とした結晶構造をしている。これら酸化物高温超伝導体には共通して以下のような特徴がある。
*CuO<sub>2</sub>八面体のような銅酸化物が2次元のシート状に広がっている。
*このシートの上下にはランタノイド等による伝導をブロックする層があり、銅酸化物層とブロック層が交互に積層する構造をとっている。
下図に見られるようにペロブスカイト構造はシート状に並んだMO<sub>2</sub>八面体層と金属Rの層が交互に配置している。このような構造による2次元的な電気伝導が高温超伝導において重要な役割を果す。
 
== 脚注 ==
<div style="float:center">[[画像:2dlayer.png]]
{{脚注ヘルプ}}
<br>ペロブスカイトの2次元構造</div>
{{Reflist}}
<!-- == 参考文献 == {{Cite book}}、{{Cite journal}} -->
 
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Perovskite|灰チタン石(ペロブスカイト)}}
*[[結晶構造]]
* [[立方構造]]
* [[高温超伝導立方晶]]
* [[高温超伝導]]
* [[灰チタン石]](ペロブスカイト)
* [[ポストペロブスカイト]]
* [[マントル#地球]]
 
<!-- == 参考文献外部リンク == {{Cite web}} -->
 
[[Category{{デフォルトソート:結晶学|へろふすかいとこうそう]]}}
== 外部リンク ==
[[Category:結晶学]]
* [http://chiezou.jp/word/%E3%83%9D%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%9A%E3%83%AD%E3%83%96%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%88 ポストペロブスカイト]
[[Category:超伝導]]
 
[[Category:地球の構造]]
 
[[Category:結晶学|へろふすかいとこうそう]]
[[Category:超伝導|へろふすかいとこうそう]]
 
[[ca:Perovskita]]