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{{電磁気学}}
[[物理学]]において、'''磁性'''(じせい、[[英語|英]]:magnetism)とは、[[物質]]が原子あるいは原子よりも小さいレベルで[[磁場]]に反応する性質であり、他の物質に対して[[引力と斥力|引力や斥力]]を及ぼす[[性質]]の一つである。'''磁気'''(じき)ともう。
 
== 概要 ==
磁性は様々に分類がなされている。例えば、磁性の分類の中でも最もは[[強磁性]]がよく知られている[[強磁性]]の場合、強磁性を持つ物質は自ら持続的な[[磁場]]を生み出す。しか得る。また、電流がらどによっても磁場は発生する。ところで、あらゆる物質は程度の差こそあれ、磁場によって何らかの影響を受ける。磁場に引き付けられる物質もあれば([[常磁性]])、磁場に反発する物質もある([[反磁性]])。さらに、磁場と複雑な関係を有する物質もある。しかも、ある物質の磁性状態(または相)は、温度(あるいは圧力や周囲の磁場)に依存するため、1つの物質であっても温度などの条件によって様々な磁性を示すことがある。ただし、ほとんどの場合、磁場によって物質が受ける影響は、特別な装置を使わなければ検出できないほど小さい。中でも、磁場の影響が無視できる物質は非磁性 (non-magnetic) 物質と呼ばれる。、これには例えば、[[銅]]、[[アルミニウム]]、一般的な[[気体]]、[[合成樹脂]]などが含まれる。非磁性物質に対して、特別な装置など使わずとも容易に分かるほど強い磁性を示す物質(強磁性物質)として、[[鉄]]やある種の[[鋼]]のような人工的な[[鉄]]合金がよく知られている。また、[[磁鉄鉱]](天然磁石)や[[磁硫鉄鉱]]などといった[[鉱物]]なども強磁性物質であり、その名に「磁石」の「磁」よく知られ付いている。全ての物質はことからも明らかなように、人間が手を加えるまでもなく、[[磁]]によを持って多かいることが見て取少なかる磁石が天然に生成さ影響を受けが、ほとんどの場合、その影響は特別な装置を使わなけもあることが知らば検出できないほど小さ
 
'''[[磁力]]'''[[電荷]]の運動によって引き起こされる基本的な[[力]]である。磁力を支配する源や場の振る舞いは[[マクスウェル方程式]]で記述される([[ビオ・サバールの法則]]も参照のこと)。よって磁性は電荷を持つ[[粒子]]が[[運動]]をすればいつでも現れる。磁性は[[電流]]の中の[[電子]]の運動によって発生して[[電磁気]]と呼ばれたり、電子の[[量子力学]]的な軌道運動や[[スピン角運動量|スピン]]によって生じ、[[永久磁石]]の力の源となったりする(電子は[[太陽]]を周る[[惑星]]のような軌道運動を行なっているわけではないが、「実効的な電子の速度」は存在する)。
ある物質の磁性状態(または相)は温度(あるいは圧力や周囲の磁場)に依存するため、1つの物質であっても温度などの条件によって様々な磁性を示すことがある。
 
'''[[磁力]]'''は[[電荷]]の運動によって引き起こされる基本的な[[力]]である。磁力を支配する源や場の振る舞いは[[マクスウェル方程式]]で記述される([[ビオ・サバールの法則]]も参照のこと)。よって磁性は電荷を持つ[[粒子]]が[[運動]]をすればいつでも現れる。磁性は[[電流]]の中の[[電子]]の運動によって発生して[[電磁気]]と呼ばれたり、電子の[[量子力学]]的な軌道運動や[[スピン角運動量|スピン]]によって生じ、[[永久磁石]]の力の源となったりする(電子は[[太陽]]を周る[[惑星]]のような軌道運動を行なっているわけではないが、「実効的な電子の速度」は存在する)。
 
== 歴史 ==
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1187年、[[アレクサンダー・ネッカム]]はヨーロッパで初めて方位磁針とその航海への応用を記述した。1269年、[[ペトルス・ペレグリヌス]]が書いた『磁気書簡』(''Epistola de magnete'') は、磁石の性質について記した現存する最古の論文である。1282年、イスラムの物理学者で天文学者、地理学者のアル=アシュラフが磁石と方位磁針の性質について記述している<ref>{{Cite journal|title=Two Early Arabic Sources On The Magnetic Compass|first=Petra G.|last=Schmidl|journal=Journal of Arabic and Islamic Studies|year=1996-1997|volume=1|pages=81–132}}</ref>。
 
1600年、[[ウィリアム・ギルバート (物理学者)|ウィリアム・ギルバート]]が ''[[:en:De Magnete|De Magnete, Magneticisque Corporibus, et de Magno Magnete Tellure]]''(磁石及び磁性体ならびに大磁石としての地球の生理)を出版。その中で地球をモデル化した [[:en:terrella|terrella]] を使った様々な実験結果を示している。そういった実験により、彼は地球自体が磁性を持っていて、それによって[[地磁気]]が発生して方位磁針が北を指すのだと結論付けた。それまでヨーロッパでは、方位磁針を引き付けているのは北極星([[ポラリス (恒星)|ポラリス]])だという説や北極にある巨大な磁石でできた島だという説が信じられていた。
 
[[電気]]と磁気の関係の解明は1819年、コペンハーゲン大学の教授だった[[ハンス・クリスティアン・エルステッド]]が電流によって方位磁針が影響を受けることを発見したのが始まりである。その後、[[アンドレ=マリ・アンペール]]、[[カール・フリードリヒ・ガウス]]、[[マイケル・ファラデー]]といった人々が実験を行い、電気と磁気の関係をさらに明らかにしていった。[[ジェームズ・クラーク・マクスウェル]]はそれまでの知見を[[マクスウェルの方程式]]にまとめ、電気と磁気と[[光学]]を一分野にまとめた[[電磁気学]]を生み出すことになった。1905年、[[アルベルト・アインシュタイン|アインシュタイン]]はそこから[[特殊相対性理論]]を生み出した<ref name="Moving">[http://www.fourmilab.ch/etexts/einstein/specrel/www/ A. Einstein: "On the Electrodynamics of Moving Bodies"], June 30, 1905.</ref>。
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* 多くの[[素粒子]]はゼロでない「真性」(または「スピン」)磁気モーメントを持つ。それぞれの粒子に[[質量]]と[[電荷]]があるように、ゼロでない磁気モーメントを持つことがある。
 
物体が磁性を持つ物理的原因は、電流の場合とは異なり、[[原子]]に生じる磁気双極子である。原子スケールでの磁気双極子、あるいは[[磁気モーメント]]は、電子の2種類の運動によって生じる。1番目は[[原子核]]の周りを回る電子の軌道運動である。これは電流のループと見なすことができ、原子の軸方向に軌道磁気モーメントを生じる。2番目の、もっとずっと強い磁気モーメントの源は、[[スピン角運動量|スピン]]と呼ばれる量子力学的な性質である。これはスピン磁気モーメントと呼ばれる(ただし現代の量子力学の理論では、電子が実際に物理的に自転したり原子核の周りを軌道運動したりするとされているわけではない)。なお原子核にも磁気モーメントは存在するが、一般に電子のそれの数千分の1の強さしかなく、物質の磁性にはほとんど影響しない。しかし、例えば[[核磁気共鳴]] (NMR) や[[核磁気共鳴画像法]] (MRI) はその原子核の磁気モーメントを利用している。
 
原子の全体的な磁気モーメントは、個々の電子の磁気モーメントの総和になる。磁気双極子は互いに反発して正味のエネルギーを小さくしようとするため、軌道運動においてもスピン磁気モーメントにおいても、いくつかの電子のペアが持つ反対向きの磁気モーメントは互いに打ち消しあう。このため、[[電子殻]]や副殻が完全に満たされている原子では磁気モーメントは通常は完全に打ち消される。磁気モーメントを持つのは電子殻が部分的に満たされている原子だけであり、その強さは不対電子の数で決まる。
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=== 強磁性 ===
{{Main|強磁性}}
強磁性体も常磁性体と同様に対でない電子を持つ。したがって、磁場に置かれたときにそれらの磁気モーメントが一定方向にそろう性質を持つが、同時にエネルギー状態を低く保とうとしてそれぞれの磁気モーメントが互いに揃おうとする傾向がある。そのため、磁場を除いても物質内の電子が同じ向きを維持し続け、永久磁石となり得る。
 
強磁性物質にはそれぞれ[[キュリー温度]]またはキュリー点と呼ばれる温度があり、それより高温の状態では強磁性を失う。これは、高温によって原子や分子が乱雑に運動するため、強磁性を発揮するために必要な向きの一致が保てなくなるためである。
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強磁性体を磁場に置くと、左図のように磁区が成長して磁場の方向に揃うようになる。外部磁場を取り除くいても、磁区の状態が元に戻らないこともある。そのため強磁性物質は磁化され、[[永久磁石]]となる。
 
十分強力に[[磁化]]されると、1つの磁区が支配的となって飽和磁化状態となる。ただし、磁化された強磁性物質を熱して[[キュリー温度]]を超えると、分子が揺り動かされて磁区を形成できなくなり、強磁性は失われる。
 
=== 反強磁性 ===
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* [[メタ磁性]]
* [[スピングラス]]
[[マグネター]]と呼ばれる非常に強い磁場を持つ[[天体]]も存在すると考えられている。
 
== 磁性・電気と特殊相対性 ==
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通常、磁場は[[磁気双極子|双極子]]場として現れ、[[S極]]と[[N極]]を持つ。「S極」「N極」という用語は磁石を[[方位磁石]]として使っていたことに由来している(方位磁石は地球の磁場すなわち[[地磁気]]と相互作用し、地球上での北 (North) と南 (South) を指し示す)。
 
磁場は[[エネルギー]]を蓄える。物理系は普通、エネルギーが最小となる配置で安定となる。そのため、[[磁気双極子]]を磁場の中に置くと、磁場と反対の方向に自らの磁極を向けようとし、これによって正味の磁場の強さをできるだけ打ち消して磁場に蓄えられるエネルギーを小さくしようとする。例えば、2つの同じ[[棒磁石]]を重ねると普通、互いのN極とS極がくっついて正味の磁場が打ち消されるようになり、同じ方向に重ねようとする力には逆らおうとする。(これが、方位磁石として使われる磁石が地球磁場と作用して北と南を向く理由である。)なお、2つの同じ磁場を持った棒磁石を無理矢理同じ方向に重ねた場合、2つの棒磁石を同じ方向で重ねるために使われたエネルギーは重なった2本の磁石が作る磁場に蓄えられ、その強さは1本の磁石の2倍になる。(これが、方位磁石として使われる磁石が地球磁場と作用して北と南を向く理由である。)
 
=== 磁気単極子 ===
{{Main|磁気単極子}}
棒磁石が強磁性を持っているのは、棒全体に電子が均一に分布しているからであり、棒を半分に切ってもそれぞれの断片が小さい棒磁石になる。(N極側とS極側で色分けがなされたデザインの棒磁石も存在するが、仮に色が分けられている場所で切断したとしても、それぞれの色の2本の棒磁石ができるだけである。)いずれにしても磁石にはN極とS極がありできてしまい、磁石を切断してもN極とS極を分離することはできない。もしも[[磁気単極子]]というものが実在するなら、全く新たな磁気効果を生じるだろう。それはN極またはS極がもう一方と対ではなく単独で存在するものを指す。1931年以降2010年現在まで磁気単極子の体系的な探索が行われてきたが、未だに発見されておらず、実在しないと見られている<ref>{{cite journal |last=Milton |first=Kimball A. |title=Theoretical and experimental status of magnetic monopoles |journal=Reports on Progress in Physics |volume=69 |issue=6 |month=June |year=2006 |pages=1637–1711 |doi=10.1088/0034-4885/69/6/R02 |url= http://arxiv.org/abs/hep-ex/0602040}} - Milton はいくつかの決定的でない事象に言及し (p.60)、「磁気単極子が存在したという証拠は全く残っていない」と結論している (p.3)。</ref>。
 
以上のような通常の経験に反して、いくつかの理論物理学のモデルでは'''[[磁気単極子]]'''(モノポール)の存在を予言している。[[1931年]]に[[ポール・ディラック]]は、電気と磁気にはある種の[[対称性]]があるため、[[量子電磁力学|量子論]]によって単独の正あるいは負の[[電荷]]の存在が予言されるのと同様に、孤立したS極あるいはN極の磁極も存在するはずだ、と述べた。しかし実際には、荷電粒子は[[陽子]]と[[電子]]のように個々の電荷として容易に孤立して存在できるが、SとNの磁極はばらばらには現れない。ディラックは量子論を用いて、もしも磁気単極子が存在するならば、なぜ観測される[[基本粒子|素粒子]]が電子の電荷の整数倍の電荷しか持たないのか、という理由を説明できることを示した。なお、[[クォーク]]は分数電荷を持つが、自由粒子としては観測されない。
 
現代の素粒子論では、電荷の量子化は非可換[[ゲージ]][[対称性]]の自発的破れによって実現されるとされている。現在のある種の[[大統一理論]]で予言されているモノポールはディラックによって考えられた元々のモノポールとは異なることに注意する必要がある。今日考えられているモノポールはかつての素粒子としてのモノポールとは異なり、[[ソリトン]]、すなわち局所的に集まったエネルギーの「束」である。こういったモノポールが仮にも存在するとすれば、[[宇宙論]]の観測結果と矛盾することになる。宇宙論の分野でこのモノポール問題を解決する理論として考えられたのが、現在有力とされている[[宇宙のインフレーション|インフレーション]]のアイデアである<ref>{{cite book |first=Alan|last=Guth|authorlink=アラン・グース|title=The Inflationary Universe: The Quest for a New Theory of Cosmic Origins|isbn=0-201-32840-2|publisher=Perseus|year=1997 |oclc=38941224}}.</ref>。
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=== その他の単位 ===
* [[ガウス]] – 磁場([[磁束密度]])の[[CGS単位系|CGS]][[物理単位|単位]]。
* [[エルステッド]] – [[磁場]]の強さのCGS単位。
* [[マクスウェル (単位)|マクスウェル]] – [[磁束]]のCGS単位。
* ガンマ (γ) – 地磁気の磁束密度の単位。1ガンマは1ナノテスラに等しい。
* ''μ''<sub>0</sub>&nbsp;– 真空の[[透磁率]]を表す記号(4π×10<sup>−7</sup> [[ニュートン|N]]/[[アンペア回数|AT]]<sup>2</sup>)
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== 生物と磁性 ==
一部の[[生物]]は磁場を知覚でき、これを[[磁覚]] ([[:en:magnetoception|magnetoception]]) と呼ぶ。[[医学]]的治療に磁場を使う [[:en:Magnetobiology|Magnetobiology]] もある。また、生物が磁場を生み出す現象を [[:en:biomagnetism|biomagnetism]] と呼ぶ。
 
== 脚注・出典 ==
{{Reflist}}
 
== 参考文献 ==
* {{cite book | author=Furlani, Edward P. | title=Permanent Magnet and Electromechanical Devices: Materials, Analysis and Applications | publisher=Academic Press | year=2001 | isbn=0-12-269951-3 | oclc=162129430}}
* {{cite book | author=Griffiths, David J.|title=Introduction to Electrodynamics (3rd ed.)| publisher=Prentice Hall |year=1998 |isbn=0-13-805326-X | oclc=40251748}}
* {{cite book | author=Kronmüller, Helmut.|title=Handbook of Magnetism and Advanced Magnetic Materials, 5 Volume Set| publisher=John Wiley & Sons|year=2007 |isbn=978-0-470-02217-7 | oclc=124165851}}
* {{cite book | author=Tipler, Paul | title=Physics for Scientists and Engineers: Electricity, Magnetism, Light, and Elementary Modern Physics (5th ed.) | publisher=W. H. Freeman | year=2004 | isbn=0-7167-0810-8 | oclc=51095685}}
* {{cite book | author=David K. Cheng | title=Field and Wave Electromagnetics | publisher=Addison-Wesley Publishing Company, Inc. | year=1992 | isbn=0-201-12819-5 }}
 
== 関連項目 ==
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* [[マグネター]]
* [[断熱消磁]]
 
== 脚注・出典 ==
{{Reflist}}
 
== 参考文献 ==
* {{cite book | author=Furlani, Edward P. | title=Permanent Magnet and Electromechanical Devices: Materials, Analysis and Applications | publisher=Academic Press | year=2001 | isbn=0-12-269951-3 | oclc=162129430}}
* {{cite book | author=Griffiths, David J.|title=Introduction to Electrodynamics (3rd ed.)| publisher=Prentice Hall |year=1998 |isbn=0-13-805326-X | oclc=40251748}}
* {{cite book | author=Kronmüller, Helmut.|title=Handbook of Magnetism and Advanced Magnetic Materials, 5 Volume Set| publisher=John Wiley & Sons|year=2007 |isbn=978-0-470-02217-7 | oclc=124165851}}
* {{cite book | author=Tipler, Paul | title=Physics for Scientists and Engineers: Electricity, Magnetism, Light, and Elementary Modern Physics (5th ed.) | publisher=W. H. Freeman | year=2004 | isbn=0-7167-0810-8 | oclc=51095685}}
* {{cite book | author=David K. Cheng | title=Field and Wave Electromagnetics | publisher=Addison-Wesley Publishing Company, Inc. | year=1992 | isbn=0-201-12819-5 }}
 
== 外部リンク ==