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{{medical}}
'''西洋医学'''(せいよういがく、Western medicine)とは、主としてヨーロッパにおいて発展した[[医学]]のことである。
 
[[東洋医学]]とは異なる理論・治療体系をもつ医学である。
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==歴史==
[[ファイル:Asklepios.3.jpg|120px|thumb|[[ギリシア神話]]にて医学の神である[[アスクレーピオス]]の像。左手に持つ[[蛇]]のまとわりついた杖がシンボルとなっている。]]
ヨーロッパにおいては、「医」の起源は[[古代ギリシア]]の[[ヒポクラテス]]とされている。その後[[古代ローマ]]の[[ガレノス]]が[[アリストテレス]]の哲学(学問の集大成)を踏まえ、それまでの医療知識をまとめ、学問としての医学が確立されたと言われている。ガレノスはその後、数百年ものあいだ[[権威]]とされた。
 
中世では、外科は[[キリスト教]]徒の職業とはみなされていなかった。[[病気]][[]]の恵みであり、[[医療]]は神への[[冒涜]]とされた。当時は[[理容師]]([[英語|英]]Barber surgeon:理容外科医とも言われた)によって外科手術やまじない的な[[瀉血]]治療などが行われていて、これは学術的な医学が発達するまで広く行われていた。このように、ヨーロッパにおいては、古代ギリシア等の知識が継承されることなく、学問としての医学は低迷した。
 
古代ギリシャの医学知識は、[[イブン=スィーナー]]や[[イブン=ルシュド]]に代表される、イスラム世界において継承された。 (→[[イスラム医学]]、[[イスラム科学]])
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{{要出典範囲|西洋医学の発祥の地は[[ドイツ]]だ|date=2010年1月}}ともされている。
 
[[日本]]では1543年に[[安土桃山時代鉄砲伝来]]に本格的なした以降、西洋医学が伝えられ始め、[[宣教師]]はキリスト教布教に[[医術]]を利用しといわれており<ref>[[小川鼎三]]『医学の歴史』(中公新書、1964年)、pp.96-97</ref>。[[ポルトガル人]]、[[ルイス・デ・アルメイダ|アルメイダ]]は[[豊後]]に日本最初の洋式病院を設立した<ref>小川鼎三『医学の歴史』(中公新書、1964年)p.96</ref>。幕末に[[蘭学]]とともに西洋医学書の[[翻訳]]などが行なわれた。[[明治維新]]後には[[漢方医学]]を廃し、西洋医学を「医学」とするようになった、とも言われる。
 
20世紀になると、医者は患者の人体に劇的に作用する技術の向上に力を注いだ。
 
20世紀になると、医者は[[患者]]の人体に劇的に作用する技術の向上に力を注いだ。
<!--だが、このような医療のあり方は、心のない、機械的な治療として非難される{{who}}ようになった。{{要出典}}-->
 
=== 西洋医学への批判 ===
 
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[[1970年代]]になると、専門的な知識が集まるようになり、[[1980年代]]には、多くの人々によって、まとまった議論となりはじめた。中でも最も辛らつな批判を行ったのは、[[イヴァン・イリイチ]]であろう。イリイチは『脱病院化社会 ''Medical Nemesis''』(1976年)において、現代医療は病気を取り除く際に、健康を取り戻すことをせず、結果的にむしろ健康を損なっている、と指摘した。現代医学の見方では、人間は人間ではなく、一生「患者」とされてしまう、といった主旨のことを述べた。 (→[[医原病]])
 
これらの現代医学への批判は、医学を教える大学・学校の教育課程に影響を及ぼすようになった。現在は教育時に[[医療倫理]]が重視され、生物心理社会的介入モデルや同様の概念などの全体論的医学の重要性を教えるようになっている。それでも現代医学は多くの批判に応え切れていない現実がある。
 
[[ハーバード大学]]の[[アイゼンバーグ]]博士の調査によって明らかになったことは、[[1993年]]には、[[アメリカ合衆国]]の人々が[[代替医療]]に支払った費用が、西洋医学の病院に支払った費用を上回ったという事実である<ref name="wyle">アンドルー ワイル『ワイル博士の健康相談 (1) 自然治癒力』pp.139-141 </ref>。つまり、現代西洋医学の医療(いわゆる「通常医療」)よりも、[[代替医療]]のほうを好んで利用するようになったということである。また、学歴が高い人、収入の多い人、知識人層など時代を先導してゆく人たちほど代替療法のほうを評価し、積極的に利用しているということも明らかになった<ref name="wyle" />。
 
=== EBMへ ===
 
なお、"西洋医学は実証的"というようなイメージだけは一般の人々の間で先行していたものの、その実態としては、実は、個々の治療法の効果は[[統計]]的・[[科学]]的には十分に[[検証]]されないまま、医師個人やグループがめいめいの少数の経験や「[[]]」で判断し、その怪しげとも言える知識が師から弟子へと伝承されるような状況が長らく続いていた。しかし、近年(ほんの10年~20年前)になって、ようやく、本当の意味でのより厳密な実証を求める[[エビデンスに基づく医療]]が真正面から提唱され、この数年、次第に医学界に浸透しつつあり、標準的/望ましい とされる治療法が一部で毎年少しずつ入れ替わるようになった(つまり「エビデンスに基づく医療」という手法が実際に効果を挙げつつある)。
 
== 下位分類 ==
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=== 社会医学 ===
[[社会医学]]とは社会的な環境と健康について研究する医学領域。
*[[衛生学]] - [[公衆衛生]] - [[疫学]](統計医学)- [[法医学]] - [[犯罪学]]などが含まれる。
 
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** [[循環器学]] - [[消化器学]] - [[呼吸器学]] - [[腎臓学]] - [[内分泌学]] - [[血液学]] - [[神経学]] - [[婦人科学]] - [[泌尿器科学]] - [[耳鼻咽喉科学]] - [[皮膚科学]] - [[眼科学]]
* 解剖学的分類
** [[胸部外科学]] - [[脳神経外科学]]
* ライフステージによる分類
** [[産科学]] - [[小児科学]] - [[老人医学]] - [[家庭医療]]
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*矢部 一郎『西洋医学の歴史』恒和選書、1983年
*インファンテ・ビエイラ セルソ『アディオス(さようなら)西洋医学―KI(気)がつけばハッピーライフ』さわやか出版社、1990、ISBN 4795214077
*ヒポクラテス、[[常石 敬一]] 『ヒポクラテスの西洋医学序説』[[小学館]]、1996 ISBN 4092510268
*ディーター・ジェッター『西洋医学史ハンドブック』[[朝倉書店]]、1996、ISBN 4254101376
*ジョン・Z. バワース『日本における西洋医学の先駆者たち』 [[慶應義塾大学出版会]]、1998 ISBN 4766407237
*加藤 文三、平尾 真智子、石井 勉『西洋医学がやってきた―近世(日本人 いのちと健康の歴史) 』 [[農山漁村文化協会]]、2008、ISBN 454007217X
*吉良枝郎『日本の西洋医学の生い立ち: 南蛮人渡来から明治維新まで』[[築地書館]]、2000、 ISBN 4806711977
*梶田昭『医学の歴史』[[講談社学術文庫]]、2003、ISBN 4061596144
*吉良枝郎『幕末から廃藩置県までの西洋医学』築地書館、2005、ISBN 4806713066
*石原結実『間違いだらけの医学・健康常識―西洋医学を過信すると早死にする』[[日本文芸社]]、2005、ISBN 4537253029
*河村 攻『「なぜ治らないの?」と思ったら読む本第3の医学“ハイブリッド医療”』ハート出版、2008、ISBN 4892955612
*石内 裕人、織部 和宏『各科の西洋医学的難治例に対する漢方治療の試み』たにぐち書店、2009、ISBN 4861290880
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*Nancy Midol & Wei Guo Hu, ''Médecine occidentale, médecine orientale : un dialogue intéressant pour penser la santé en Europe'', Le Détour, No.5, 2005, p.171-183
*金澤 一郎「西洋医学と東洋医学の統合」日本東洋医学雑誌 Vol. 59、2008 、 No. 6 pp.765-774
 
 
==出典 脚注==