「枯草菌」の版間の差分

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| 属 = [[バシラス属]] ''[[w:Bacillus|Bacillus]]''
| 種 = '''枯草菌'''<br />'''''[[:w:Bacillus subtilis|Bacillus subtilis]]'''''
| 学名 = ''Bacillus subtilis'' {{AU|(Ehrenberg(Ehrenberg 1835)1835) Cohn 1872 (Approved(Approved Lists 1980)1980)}}
}}
 
'''枯草菌'''('''こそうきん''')は、自然界に普遍的に存在する[[真正細菌]]の一種。学名は''Bacillus subtilis''(本来[[ラテン語]]ではバキッルス・スプティーリス(細い小さな棒)だが、通常バチルス・サブティリス<ref name="TTM2007">日本細菌学会用語委員会編『微生物学用語集 英和・和英』南山堂、2007</ref>または、バシラス・サチリス<ref name="TTM1985">日本細菌学会用語委員会編『英和・和英微生物学用語集』第3版、菜根出版、1985</ref>が使用される)。0.7-0.8 x 2-3 &micro;mの大きさの[[好気性生物|好気性]]のグラム陽性桿菌で、[[芽胞]]を形成する。
 
土壌中や、空気中に飛散している常在細菌(空中雑菌)の一つで、枯れた草の表面などからも分離されることが多いためにその名が付けられた。[[芽胞]]を作ることによって熱や消毒薬などに対する耐久性を示すため、[[培地]]や食品の汚染([[コンタミネーション]])の原因になることがあるため、培養には細心の注意が必要となる。ヒトに対する病原性を持たないため医学上問題視されることは少ないと考えられているが、菌血症、心内膜炎、呼吸器感染症、食中毒、眼感染症をごく稀に引き起こす<ref>Pathogenic Bacteria Database; [http://bac.hs.med.kyoto-u.ac.jp/ Pathogenic Bacteria Database]</ref>。
 
[[藁]]などの枯れた草(特に[[イネ科]][[草本]]の枯死した茎葉が多く用いられる)を水に浸けて煮沸すると、ほとんどの微生物はその熱によって死滅するが、枯草菌の芽胞は高い耐熱性を持つため生き残る。その後、[[浸出液]]を放置すると芽胞が発芽して、枯草菌が[[優占]]して繁殖する。枯草菌は[[好気性生物|好気性]]であるため浸出液の液面で増殖し、また菌膜(バイオフィルム)を産生して液面を覆うことが多い。この現象は、[[ルイ・パスツール]]が白鳥の首フラスコによる実験で微生物の[[自然発生説]]を否定した後、[[ジョン・チンダル]]によってその例外的な現象として発見された。
 
この性質を利用して自然環境から枯草菌を分離することが可能である。また稲わらを用いた伝統的な[[納豆]]は、煮沸した稲わらを使って煮た大豆を包んで製造するが、これは煮沸によって雑菌が死滅し、枯草菌の一種である[[納豆菌]] (''Bacillus subtilis'' var. ''natto'') の芽胞だけが生き残る性質を利用したものである。
 
煮沸後、一晩放置して枯草菌が増殖した浸出液を再び煮沸すると、枯草菌のほとんどは芽胞ではなく通常の菌体として増殖しているため、一回の煮沸では除去できない枯草菌のほとんどを加熱[[殺菌]]することが可能である。この滅菌方法を[[殺菌#方法による分類|間欠滅菌]]と呼ぶ。通常は、間に一晩静置をそれぞれ挟んで煮沸を三回繰り返して行われる。この他、枯草菌芽胞を完全に除去するには、[[オートクレーブ]]滅菌(120℃, 2気圧, 15分以上)や[[殺菌#方法による分類|乾熱滅菌]](180℃, 30分以上など)、[[殺菌#濾過滅菌|ろ過滅菌]]など、「[[殺菌|滅菌]]」と呼ばれるレベルの殺菌処理が必要である。
 
==利用==
ある種の枯草菌が[[納豆菌]] (''Bacillus subtilis'' var. ''natto'') として[[納豆]]の製造に用いられるほか、一部の枯草菌が作る[[サチライシン]]などの[[プロテアーゼ|タンパク質分解酵素]]が[[洗剤]]に利用されるなど、代表的な有用微生物の一つに挙げられる。
 
煮沸した枯草の浸出液を放置して枯草菌を増殖させた後、池などから採取された水を加えると、細菌を餌とする[[ゾウリムシ]]などの[[繊毛虫]]類がよく増殖する。そのため、これらの[[原生動物]]の分離[[培養]]にも用いられる。
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[[分子生物学]]分野では、枯草菌は[[グラム染色|グラム陽性]]桿菌の[[モデル生物]]として扱われている。[[1997年]]には枯草菌[[ゲノム]]の解読が完了しており、遺伝子研究や遺伝子組換えによる有用微生物の開発にも用いられている。
 
枯草菌は、枯草菌が抗菌性活性リポペプチド(iturinn A、plipastain)と強力な界面活性を示す物質(surfactin)を分泌することから、消臭に利用されたり、微生物農薬としての利用が進められている<ref>[http://www.titech.ac.jp/publications/j/techtech04/09_01.html]</ref><ref>[http://www.geocities.jp/poultry0455/bacillus.htm]</ref><ref>[http://www.ideshokai.com/navi/nioi03.html]</ref>。
 
==参考文献==