「ロレンツォのオイル/命の詩」の版間の差分

映画にあるように血中VLCFA値の低下作用は明らかだったが,治療効果については当時より賛否両論であった.多くの患児の両親が「ロレンツォのオイル」を求めて争って投与したが,実際にはALD症状改善を認めることは少なかった.植物状態で死を待つだけだったロレンツォが,「ロレンツォのオイル」によって劇的に改善し,両親との意志疎通さえも可能となる映画のラストが感動的だっただけに,逆に多くの両親の失望は大きかったといえる.1993年のNew England Journal of Medicineに,「ロレンツォのオイルは無効である」という論文が発表されており,さらにEditorialで「医学は映画のように簡単はいかない」という痛烈な批判がなされたことが決定的だった.
 
映画の中で,両親の性急さをしばしば諌め,ALDの全患児に責任ある意志医師の立場として「ロレンツォのオイル」の臨床使用を断る,いわば「悪役」としてのニコラウス教授のモデルとなったのは,ALDの世界的な権威であったProf. Mosarである.しかし実は「ロレンツォのオイル」が無効と言われ,詐欺師とかインチキとまで批判されたロレンツォの両親を最後まで支持し,擁護していたのがそのMosarだったのである.「オイル」の臨床試験を地道に続け,2005年に「ロレンツォのオイルはすでに症状が進行した患児には無効だが,血中VLCFA値が高値を示す児の発症予防や症状軽減には有効」という画期的な論文を出した.現在では,スクリーニングによって発症前の患児を見つけ,早期から「ロレンツォのオイル」を投与して発症予防を行うというプログラムが北米では進められている.
 
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