「アダルトゲーム」の版間の差分

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だが、その反面で、ソフ倫はその業務内容については非公開としており、協会に人員を提供している制作会社には審査が甘いという指摘がなされるなど<ref>一例を挙げれば、[[サイレンス (ゲーム会社)|ソニア]]の『[[VIPER (ゲーム)|VIIPER]]』のとあるシーンが規制された時に、協会役員の企業である[[D.O.]]の作品に同様のシーンがあるのに規制されていないと反論されて問題になったことがある。</ref>、透明性が低いと言わざるを得ない組織体質であり、プレイヤーサイドの求めるものとのギャップも大きく、プレイヤーや会員メーカーからの不信感を招いた。その上、[[1999年]]に施行された[[児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律]]の影響が波及することを極度に恐れ、18歳未満の男女キャラの性的描写の禁止や、ゲーム内において使ってはいけない言葉(いわゆる「NGワード」)などといった規制強化ばかりを年々進め続け(例えば「[[高校生]]」(ほとんどが18歳未満)という言葉を「学園生」(年齢不詳)に言い換える、など<ref>規制前では、例えば『[[放課後恋愛クラブ]]』では主人公たちは高校生で、さらに後輩の中学生も登場している。逆に規制後の『[[D.C. 〜ダ・カーポ〜]]』では主人公達の年齢は詳らかにされないが、卒業した先輩が同じ制服を着て上の学校に通っており、[[中高一貫校]]の中学生とも解釈できる描写になっている。</ref>)、関連作品が数多く発売されている[[ジュブナイルポルノ]]などと比べても表現の制約と不自由さは増すばかりであった。しかも、ソフ倫はアダルトゲームの審査業務を事実上独占し、上述の様に流通をも掌握していたことから、アダルトゲームのメーカーやクリエイターたちはノベライズであるジュブナイルポルノ作品などの関連商品における表現も含めて、業界で権威を増すばかりのソフ倫の影響下から逃れることはできなかった。
 
この状況に小さくとも風穴が開く、すなわちアダルトゲームの審査業務におけるソフ倫の独占が崩れる、その転機となる出来事のきっかけは[[2001年]]8月に起きた。『[[君が望む永遠]]』(2001年、[[アージュ]])が、画像の修正処理に不手際があるとして“自主回収”となった。発売元のアージュの代表は後年、同作について「自主審査のうえで自主回収だった」としている<ref>[https://twitter.com/#!/kycow/status/25813527033810944 『君のぞ』は自主審査のうえで自主回収だったんですよ。その点では当時のソフ倫さんを恨む理由はないです。]</ref>が、自主回収騒動の後しばらくは主に同作に絡めてアダルトゲーム業界やソフ倫絡みの様々な憶測や情報や憶測が流れていた。{{see also|君が望む永遠#初回生産版回収騒動}}
 
いずれにせよ、その後、アージュ作品を取り扱っていたソフトウェア卸売会社[[ホビボックス]]は、アダルトビデオの自主審査機構だったメディア倫理協会(現・[[コンテンツ・ソフト協同組合]]メディア倫理委員会、以下メディ倫)にアダルトゲームの審査を行うように働きかけ、アージュは[[2003年]]にメディ倫審査に移行し、アダルトゲーム第1号となる『[[マブラヴ]]』を発売した。当時のメディ倫はソフ倫と異なり、全ての素材を審査する完全審査体制を取っており、卑猥な用語に対する規制もソフ倫より若干緩いものであった。
 
前作『君が望む永遠』がヒット作になったアージュの新作『マブラヴ』は、諸般の事情で発売予定日の延期を何度も繰り返しながらも大きな注目を集めていた。しかし、メディ倫審査による作品の登場という事態に対して、当初、パソコンソフト流通の企業や、このルートからの仕入れをメインとする[[卸]]業者・[[小売店]]の多くは、ソフ倫との関係への配慮からソフ倫審査作品以外は取り扱わない方針を取った。その結果、多くのパソコンソフト販売店で『マブラヴ』について入荷どころか仕入れ元からの情報さえ一切皆無という事態が起き、パソコンソフト販売店の店頭経由でや通販のルートからの購入希望者たちを困惑させる。その一方で、『マブラヴ』の流通と販売の中核を担ったのは、従前からメディ倫審査のアダルトビデオの販売を数多く手掛けていたアダルトビデオ系の流通とこれを取り扱うサブカルチャー系書店であった。パソコンソフト販売店での『マブラヴ』の入手難から、アダルトゲームのプレイヤーたちの間ではインターネット上で同作の販売概況を巡る情報交換が幅広く行われ、やがて実情が明らかになるに連れて、サブカルチャー系書店でのパソコンソフト販売に対する認知がプレイヤーの間で広まることになった。その後、[[2004年]]初頭に数々のブランドを抱える大手・[[テックアーツ]]がメディ倫への移行を表明、前後して主に中堅以下の数ブランドがメディ倫へ移行し、その後に設立されたメーカーの中には最初からメディ倫による審査を選択し、ソフ倫には加盟しない所も見られる様になった。これらの結果、パソコンソフト流通に属する流通・小売の各社もメディ倫審査の作品の存在を無視することができなくなり取り扱いを開始し、ソフ倫によるアダルトゲーム審査業務の独占は崩壊することになった。
 
この一連の流れを受けて、加盟メーカーのメディ倫審査への流出防止、すなわち組織防衛の必要に迫られたソフ倫が実施した主は様々な対を打ち出して各ブランドの引き留めを図ったが、その最大の切り札は、それまで組織内部では口にすることさえ事実上のタブーであった性的描写の一部規制緩和であり、2004年秋以降の作品で[[近親相姦]]描写などが解禁となった。
 
なお、メディ倫によるアダルトゲーム審査業務は、メディ倫の組織変更に伴い[[2010年]]に[[映像倫理機構]]による審査業務に移行している。