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== 国際経済法 ==
{{出典の明記|date=2012年1月}}
「[[国際経済法]]」(International Economic Law)とは、国家間の経済活動を規律する国際法の一分野であり、第二次大戦後に急速に発展した分野の一つである。1947年の「[[関税と貿易に関する一般協定]]」(GATT; General Agreement on Tariffs and Trades)により、経済的価値が国際法に導入された。GATTの目的は、'''自由貿易の促進'''にある。そのために、[[最恵国待遇]]・[[無差別原則]](1条)、[[関税譲許]](2条)、[[内国民待遇]](3条)を原則とする。
'''国際経済法'''(こくさいけいざいほう)とは、学問的に明確な定義はないが、一般に国際[[経済]]活動に関連する法令の総称を指す。
 
そして、[[多角的貿易交渉]]・[[ウルグアイ・ラウンド]]の成果として、1994年に「[[マラケッシュ協定]]」が成立し、翌年、「[[世界貿易機関]]」(WTO; World Trade Organization)が設立に至り、単なる条約にすぎなかったGATT制度は、[[国際組織]]となった。そして、ウルグアイ・ラウンドで結ばれた数々の協定により、その対象領域は急速に拡大した。例えば、「[[サービスに関する一般協定]]」([[GATS]]; General Agreement on Trade in Services)、「[[衛生植物検疫措置の適用に関する協定]]」([[SPS協定]]; Agreement on the Application of Sanitary and Phytosanitary Measures)、「[[知的所有権の貿易関連の側面に関する協定]]」(TRIPs協定; Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)、「[[紛争解決に係わる規則及び手続きに関する了解]]」(Understanding on Rules and Procedures Governing the Settlement of Disputes)などである。
近年では、国際投資法などのように更に細分化された専門領域も出てきている。もっとも、[[大学]]の専門課程で講義される国際経済法の内容は、[[世界貿易機関|世界貿易機関(WTO)]]の規範、ならびに紛争解決機関である紛争処理小委員会(パネル)と、その上訴機関である上級委員会の裁定に関するものが多い。
 
WTOによって設立された'''紛争解決機関'''(DSB; Dispute Settlement Body)は、その後のGATT/WTO法の実効性に大きく寄与することとなった。特に、米国によりたびたび適用されてきた「[[スーパー301条]]」による一方的措置がこれによって禁じられ、全ての紛争は、「'''小委員会'''」(Panel)及びその上訴機関の「'''上級委員会'''」(AB; Appellate Body)の「報告」(Report)に服することになった。いわば、GATT/WTO法は、[[自己完結的制度]](self-contained regime)といえるだけの性格を保有するに至った。
[[1995年]]に世界貿易機関が成立して以降、発展途上加盟国も積極的に発言するようになり、殊に司法化の進んだ紛争解決機関の利用増加が「[[関税および貿易に関する一般協定|関税および貿易に関する一般協定(GATT)]]」の時代より顕著である。それゆえ、日々新たな裁定が公表されるといっても過言でないぐらいであり、WTO研究は[[日本]]も含めて活発である。このことから、[[企業]]の実務家・研究者・通商政策担当者にとって国際経済法の重要性は益々高まるばかりである。なお、国際経済法学者が集まる日本国際経済法学会がある。
 
また近年、GATT/WTO法による'''環境保護'''が急速に発展している。GATT20条(b)は、「人、動物又は植物の生命又は健康の保護のために必要な措置」を、同条(g)は、「有限天然資源の保存に関する措置」を、締約国に認めている。ただし、20条前文は、「ただし、それらの措置を、…濫用的に(arbitrary)もしくは正当と認められない差別的待遇の手段となる方法で…適用しないことを条件とする」としている。WTOが出来る前の1991年の「第一マグロ・イルカ事件」(メキシコ対米国; Tuna/Dolphine Case I)において、パネルは、20条(b)または(g)によって域外管轄権の行使を認めると、GATTで保障されている他の締約国の権利を害することになってしまう、として、米国の海洋哺乳動物保護法(MMPA; Marine Mammal Protection Act)による措置は正当化できないとした(Report of the Panel, paras.5.27, 5.32, 30 I.L.M. 1594(1991))1994年の「第二マグロ・イルカ事件」(Tuna/Dolphine Case II)においても、本質的に同様の理由により、米国のMMPAに基づく措置は正当化できないとした(33 I.L.M. 839(1994))。しかし、1998年の「小エビ事件」において、上級委員会は、GATT20条(g)にある「有限天然資源」の文言について、他の環境条約も考慮した「発展的解釈」により、「生物天然資源及び非生物天然資源」も含むと解釈した(WT/DS58/AB/R, paras.129-130)。これにより、各国独自の天然資源保護を目的とした一方的措置への可能性が開けた。
 
'''TRIPs協定'''については、2001年の「[[ドーハ宣言]]」によって、抗HIV薬の特許を最貧国(LDCs)に対しては2012年まで延期する旨、決定されたことが注目される。その後、インドや南アフリカにおいて、ヨーロッパの製薬会社が、抗HIV薬の違法コピーを訴える事件が起こったが、南アフリカでは製薬会社が訴訟を取り下げ、インドでは製薬会社の訴えを退ける判決が下されている。
 
'''農業分野'''では、日本・EUと米国の対立が解けず、[[シアトル・ラウンド]]は不成功に終わった。現在も、農業分野の協議が続行されているが、日本は農業生産物の輸入関税の大幅な引き下げを余儀なくされることが危惧されている。
 
また、最近では、各国間で「[[自由貿易協定]]」(FTA; Free Trade Agreement)や「[[経済連携協定]]」(EPA; Economic Partnership Agreement)が活発に結ばれている。これは、GATT24条の、貿易の自由の拡大のための関税同盟(例えば、[[EC]])または自由貿易協定を締結することを認める、という規定に基づく。日本は、2002年にシンガポールと初のFTA([[日本・シンガポール新時代経済連携協定]])を締結した。その後も、メキシコとFTAを締結、ASEAN諸国を中心にその他の国ともEPAを活発に結び、また結ぼうとしている。これらのことは、2002年に[[小泉純一郎|小泉首相]]によって提唱された「[[東アジア共同体]]」構想の実現に寄与するものと考えられる。
 
== 参考文献 ==
* 中川淳司/清水章雄/平覚/間宮勇『国際経済法』(有斐閣、2003年、340頁)
* 田村次朗『WTOガイドブック』(弘文堂、2001年、305頁)
* 小寺彰『WTO体制の法構造』(東京大学出版会、2000年、228頁)
* 松下満雄/清水章雄/中川淳司(編)『ケースブック ガット・WTO法』(有斐閣、2000年、354頁)
* Seidl-Hohenveldern,I., ''International Economic Law'', 3rd ed., The Hague/Boston/London, Kluwer Law International, 1999, 301pp.
* Bourgeois, J.H.J./Berrod,F./Fournier,E.G., ''The Uruguay Round Results'', Bruge, College of Europe, 1995, 541pp.
* Raworth,Ph./Reif,L.C., ''The Law of the WTO. Final Text of the GATT Uruguay Round Agreements, Summary & A Fully Searchable Diskette'', New York/London/Rome, Ocean Publications Inc., 1995, 932pp.
* Carreau,D./Juillard,P., ''Droit international économique'', 4e éd., Paris, L.G.D.J., 1999, 720pp.
 
== 外部リンク ==