「耳なし芳一」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
16行目:
ある夜、[[和尚]]の留守の時、突然一人の[[武士]]が現わる。芳一はその武士に請われて「高貴なお方」の屋敷に琵琶を弾きに行く。盲目の芳一にはよくわからなかったが、そこには多くの貴人が集っているようであった。[[壇ノ浦]]の戦いのくだりをと所望され、芳一が演奏を始めると皆熱心に聴き入り、芳一の芸の巧みさを誉めそやす。しかし、語りが佳境になるにしたがって皆声を上げてすすり泣き、激しく感動している様子で、芳一は自分の演奏への反響の大きさに内心驚く。芳一は七日七晩の演奏を頼まれ、夜ごと出かけるようになる。
 
和尚は目の悪い芳一が夜出かけていく事に気付いて不審に思い、寺男たちに後を付けさせた。すると芳一は一人、平家一門の[[墓地]]の中におり、平家が崇拝していた[[安徳天皇]]の墓前で無数の[[鬼火]]に囲まれて琵琶を弾き語っていた。寺の者たちは慌てて芳一を連れ帰り、和尚に問い詰められた芳一はとうとう事情を打ち明けた。和尚は怨霊たちが単に芳一の琵琶を聞くことだけでは満足せずに、芳一に危害を加えることを恐れ、これは危ない、このままでは芳一が平家の[[怨霊]]に殺されてしまうと和尚は案じた。和尚は自分がそばにいれば芳一を守ってやれると考えたが、生憎夜は[[法事]]で芳一のそばについていてやることが出来ない。かといって寺男では力不足である。芳一を法事の席に連れていっては大勢の怨霊をもその席に連れて行ってしまうことになりこれでは檀家との間にトラブルを発生させる危険性がある。そこで和尚は芳一を一人にするが怨霊と接触させない方法を採用することで芳一を守ることにした。和尚は、怨霊の目にはお経が書かれている身体部分は透明に映り視認できないという視覚能力の性質限界を知っていたので、怨霊が芳一を確認できないように法事寺の小僧と共に芳一の全身に[[般若心経]]を写した。ただしこのとき耳の部分に写経し忘れたことに気が付かなかった。また音声によって場所を特定されることを防ぐために芳一に怨霊の武士に声をかけれられても黙っているように堅く言い含めた。
 
その夜、芳一が一人で座っていると、いつものように武士(平家の怨霊)が芳一を迎えに来た。しかし経文の書かれた芳一の体は怨霊である武士には見えない。芳一が呼ばれても返事をしないでいると、「声も聞こえない、姿も見えない。さて芳一はどこへ行ったのか・・・」という独り言が聞こえる。そして[[怨霊]]には、耳のみが見えたが、芳一を連れて帰らないことで上司に職務怠慢と判断され叱られると心配し、「芳一がいないなら仕方がない。証拠に耳だけでも持って帰ろう」と考えた。耳だけ持ち帰ることが結果的に芳一にどのような損傷を与えるかに思いをいたせず、結果的に頭部から耳をもぎ取って持ち帰ってしまった。そのあと怨霊が上司にどのような対応を受けたかについては記述はない。