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== 質問と質疑の違い ==
[[国会]]においては、国政全般に関して内閣の見解をただす行為を質問と呼び、会議([[本会議]]、[[委員会]]等)の場で議題となっている案件について疑義をただす行為を質疑と呼ぶ。質疑が口頭で行うものであるのに対し、質問は緊急質問(国会法第76条)の場合を除き、文書で行うことが原則である。緊急質問に対して、文書(質問主意書)を用いて行う質問を、特に文書質問と呼ぶ。
 
質疑は口頭で行うものであるのに対し、質問は緊急質問(国会法第76条)の場合を除き、文書で行うことが原則である。緊急質問に対して、文書(質問主意書)を用いて行う質問を、特に文書質問と呼ぶ。
委員会等の質疑では所轄外事項について詳細な答弁が期待できないことや、所属会派の議員数によって質疑時間が決まるため、無所属や少数会派所属議員は質疑時間が確保できない。これに対し質問主意書は一定の制約はあるものの国政一般についての質問が認められ、議員数の制約もないことが最大の特徴となっている。<ref name=sangiin>[http://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/keyword/situmon.html 参議院のあらまし]参議院</ref>
 
== 質問主意書の処理 ==
質問主意書は、まず所属院の事務局に提出され、議長の承認を受けのち、質問主意書は内閣に、内閣は7日以内に文書(答弁書)によって答弁する。期間内に答弁できない場合はその理由と答弁できる期限を通知する。<ref name=sangiin></ref>ただし、非公式には、議院事務局に提出された直後に院内の[[内閣総務官]]室に仮転送されており、内閣総務官室は、質問の項目ごとに答弁の作成を担当する省庁の割振りを仮決めし、各省庁にその適否を照会する。
 
各省庁は、仮決めされた割振りに異議がある(所管の誤りがある、他省庁と共同でないと答弁できないなど)場合は、照会から60分以内にその旨申し立て、省庁間及び内閣総務官室との協議を経て、仮転送当日のうちに割振りを決定する。
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作成された答弁案は、原則として、仮転送から2ないし3日(営業日ではなく、休日・祝日を含む暦日。以下同じ)で、執筆した各省庁の法令担当課及び[[内閣法制局]]において、質問に対する適確さ、現行法令との整合性、用語・用字などにわたる審査と修正を終了する必要がある。その後、内閣総務官室、与党国会対策委員長への内容説明などののち、仮転送から6ないし7日後の閣議決定を経て、正式な答弁書として提出議院の議長に提出される。
 
{{要出典範囲|以上の「案文執筆~省庁内・内閣法制局審査~根回し~閣議決定」という事務手続は、分量的にも内容的にも、[[政令]]の制定手続に相当するものだといわれている。通常、政令の制定には、省庁内審査の開始からでも1~2か月を要するといわれているからため、これを1週間程度という短期間で終えなければならない質問主意書の処理が、担当者に極めて強度と密度の高い労働を要求し、本府省職員への過度の負担となっている。|date=2012年10月}}
なお、答弁作成のために大量の資料を要するなどの事情があって、上述の期限内に答弁できない場合は、その理由と答弁することができる期限を、[[閣議]]決定のうえ、議長に対して文書で通知しなければならない。
 
質問主意書の提出数は増えてきているものの、答弁書の延期はほとんどなくなっている。これによりスピーディーなやり取りができるようになったと言われる反面、答弁内容が不十分になったとの声も出ている。<ref name=sangiin></ref>
以上の「案文執筆~省庁内・内閣法制局審査~根回し~閣議決定」という事務手続は、分量的にも内容的にも、[[政令]]の制定手続に相当するものだといわれている。通常、政令の制定には、省庁内審査の開始からでも1~2か月を要するといわれているから、これを1週間程度という短期間で終えなければならない質問主意書の処理が、担当者に極めて強度と密度の高い労働を要求し、本府省職員への過度の負担となっている。
 
== 質問主意書に関する議論 ==
[[東京大学]]先端科学技術研究センター [[菅原琢]]特任准教授が2008年12月29日に発表した「質問主意書制度のコスト―答弁書受領まで時間がかかった質問主意書ランキング」によると、2000年10月2日から2008年4月9日までに衆議院で提出され、2008年4月25日までに答弁が行われたもの3151通のうち、回答に100日以上を要した質問主意書16通のうち14通が民主党の長妻昭衆議院議員が提出したものであり、答弁までに最長183日を要している。彼が提出する質問趣意書は大抵が内閣にとって都合の悪い事例の公表を迫るものであり、答弁書は長妻による政府批判の材料になることはあっても、立法に結びついたり現状の抜本的な改革につながるものとは必ずしもいえないと指摘している<ref>[http://www.senkyo.janjan.jp/senkyo_news/0812/0812280345/1.php 質問主意書制度のコスト―答弁書受領まで時間がかかった質問主意書ランキング]</ref>。また答弁書を作成する場合、担当[[省庁]]は[[内閣法制局]]の審査の後[[閣議決定]]を受けなければならず、案件によってはさらに関係各省との調整も経なければならない
上述のとおり質問主意書制度は、通常の国会質疑の場でなくとも政府の見解を質したり情報提供を求めたりすることができ、議席の少ない野党や[[無所属]]議員にとって有用な政治活動の手段であると評価されることが多く、実際にこの制度を積極的に利用する野党が増えている。質問時間が不足しがちな少数政党や無所属の議員は、質問主意書をもって国会審議を補っているという側面もある。また、質問主意書によって政府見解が明確になったり、政府の問題が明らかとなったりするメリットもあるとされる。2005年度は[[新党大地]]の[[鈴木宗男]]衆議院議員がこの制度を利用し[[外務省]]内のセクハラ事件などの情報を引き出した。
 
上述一方ことおり質問主意書制度は、通常の国会質疑の場でなくとも政府の見解を質したり情報提供を求めたりすることができ、議席の少ない野党や[[無所属]]議員にとって有用な政治活動の手段であると評価されることが多く、実際にこの制度を積極的に利用する野党が増えている。質問時間が不足しがちな少数政党や無所属の議員は、質問主意書をもって国会審議を補っているという側面もある。また、質問主意書によって政府見解が明確になったり、政府の問題が明らかとなったりするメリットもあるとされる。<ref>[http://www.iwais.com/qt.html 岩井茂樹公式サイト]岩井茂樹公式サイト。</ref>また長妻は自身の公式サイトに、質問主意書が「野党議員にとっては、巨大な行政機構をチェック・是正出来る武器(国会法74条、75条)」で、「本質問主意書がきっかけで是正された事項も数多い」と記している<ref>[http://naga.tv/kokkai/shitsumon/index.html 質問主意書]長妻昭公式サイト</ref>。2005年度は[[新党大地]]の[[鈴木宗男]]衆議院議員がこの制度を利用し[[外務省]]内のセクハラ事件などの情報を引き出した。
その一方で、質問主意書制度に関し、「行政の阻害要因となっている」との問題点も指摘されている。質問主意書の答弁を作成する場合、担当[[省庁]]は[[内閣法制局]]の審査を受け、[[閣議決定]]を受けなければならず、案件によってはさらに関係各省との調整も経なければならない。これにより、政府部内での作業が膨大に増え、本来業務が停滞し国民にとって損害となる、との指摘がある。これは本府省庁に勤務する国家公務員の長時間労働問題にも、直接的に関わっている。
 
そのため、7日以内に回答しなければいけないという規定を逆利用し、行政側が回答を拒否したケースもある。政府内部のみならず、行政外部の有識者からもこうした指摘が出てきたことを受け、[[細田博之]][[官房長官]](当時)は2004年8月5日の記者会見で、[[民主党 (日本 1998-)|民主党]]の[[長妻昭]]代議士の質問主意書を手に取り、「『自分は質問主意書日本一だ』と自慢して、[[選挙公報]]に出している人までいる。非常に行政上の阻害要因になっている」と発言し、質問主意書制度の運用の見直しに着手することを表明した。
また、国会議員が単なるデータ調査の目的でいちいち質問主意書を提出し、行政機関の処理能力をはるかに上回る作業を強いることにより、行政の停滞や国民へのサービスの低下を招く、との指摘もある。さらには、配偶者の著述活動や[[弁護士]]業務に用いる資料を収集するためと思しき質問主意書が提出されるなど、国会議員の権利濫用が疑われるケースもある。
 
その一例として民主党の[[長妻昭]]衆議院議員が2003年6月6日に提出した「国の施設に入るテナントの選定及び適正使用料等に関する質問主意書」の場合、国の施設に入るテナントを省庁等別、店舗別に、1.店舗名、2.店舗を運営する法人等名、3.国との契約主体名、4.店舗の業種・内容、5.店舗が支払う月額使用料と支払先名、など13項目にわたり調査させた<ref>[http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a156096.htm 国の施設に入るテナントの選定及び適正使用料等に関する質問主意書]</ref>。
 
2003年9月30日に回答が受領されたが、ページ数で1525ページ、pdfファイルで129MBという巨大なものであった。しかしながら本回答がその後の立法・政策立案に役立たせたという記録はない。
 
[[東京大学]]先端科学技術研究センター [[菅原琢]]特任准教授が2008年12月29日に発表した「質問主意書制度のコスト―答弁書受領まで時間がかかった質問主意書ランキング」によると、2000年10月2日から2008年4月9日までに衆議院で提出され、2008年4月25日までに答弁が行われたもの3151通のうち、回答に100日以上を要した質問主意書16通のうち14通が民主党の長妻昭衆議院議員が提出したものであり、答弁までに最長183日を要している。彼が提出する質問趣意書は大抵が内閣にとって都合の悪い事例の公表を迫るものであり、答弁書は長妻による政府批判の材料になることはあっても、立法に結びついたり現状の抜本的な改革につながるものとは必ずしもいえないと指摘している<ref>[http://www.senkyo.janjan.jp/senkyo_news/0812/0812280345/1.php 質問主意書制度のコスト―答弁書受領まで時間がかかった質問主意書ランキング]</ref>。
 
このように近年は、「質問が抽象的・意味不明で答弁の作成が困難」「論点が絞り込まれていないため答弁の分量が膨大になる」「一般向けの書籍や各省庁のWebサイトなどで公表済みの情報を要求する」といった、答弁を作成する行政機関が答弁書作成の負担を負うべきか疑問視される質問主意書の提出が目立つ。
 
そのため、7日以内に回答しなければいけないという規定を逆利用し、行政側が回答を拒否したケースもある。政府内部のみならず、行政外部の有識者からもこうした指摘が出てきたことを受け、[[細田博之]][[官房長官]](当時)は2004年8月5日の記者会見で、[[民主党 (日本 1998-)|民主党]]の[[長妻昭]]代議士の質問主意書を手に取り、「『自分は質問主意書日本一だ』と自慢して、[[選挙公報]]に出している人までいる。非常に行政上の阻害要因になっている」と発言し、質問主意書制度の運用の見直しに着手することを表明した。
 
これに対し野党は「[[国政調査権]]の制限である」と強く反発し、民主党の[[川端達夫]][[国会対策委員長]](当時)は「国民の付託を受けてわれわれが要求することに、([[官僚]]が)[[徹夜]]してでもしっかりと対応するのは当然だ」と発言し、与野党の議論が紛糾した。その後の与野党の協議の結果、[[衆議院]]の[[議院運営委員会]]で、「事前に主意書の内容を各党の議院運営委員会の理事がチェックする」ことで合意した。
 
2010年12月、与党となった民主党は質問主意書について「公文書として残す意義がある例外的な場合に限る」として制限する方針を決めた<ref>
{{Cite news
|url=http://www.asahi.com/politics/update/1222/TKY201012220406.html
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|accessdate=2010-12-23
}}</ref>。今後の提出には[[政策部会|党政策調査会]]の了承が必要となる。
 
提出の多い例として、「質問主意書のキング」とも呼ばれ<ref>[http://www.j-cast.com/tv/2010/03/03061389.html?p=all j-cast]2010年3月3日</ref>野党時代に1900の質問主意書を提出した新党大地の鈴木宗男が挙げられる。鈴木は2009年に与党となった民主党と統一会派を組んでからも外務省への追及を緩めず、今後も提出を続けると語っている。<ref>[http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2009/10/post_383.html THE JOURNAL]2009年10月4日</ref>
 
=== 諸外国との比較 ===