「パンフォーカス」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Suzukitaro (会話 | 投稿記録)
ディープフォーカス 2012年12月16日 (日) 02:21‎ 版 よりコピペ(統合のため)
Suzukitaro (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
1行目:
{{mergefrom|ディープフォーカス|date=2012年12月}}
[[ファイル:Deepfocus.JPG|thumb|400px|パンフォーカスの写真。[[焦点距離]]18ミリ(APS-Cサイズデジタル)、[[絞り]]F22。]][[ファイル:IGP7842.jpg|thumb|400px|パンフォーカスでない写真。[[焦点距離]]21ミリ(APS-Cサイズデジタル)、[[絞り]]F2.8]]
'''パンフォーカス'''あるいは'''ディープフォーカス'''とは、[[写真]][[撮影]]および[[映画]]撮影において[[被写界深度]]を深くする事によって、近距離から遠距離まで[[ピント]]を合わせる方法、またはその方法により撮影された写真・映画のこと。対義「パンフォーカス」は和製英語であり、本来の英語は[[ボケ (写真)|ボケ表現]]「ディープフォーカス」である
== スチール写真 ==
対義語は[[ボケ (写真)|ボケ表現]]。
 
右上の写真では手前のバラから奥の洋館まで画面のすべての位置のピントがあって見える。これはパンフォーカスの写真である。
7 ⟶ 8行目:
一方、右下の写真は手前のバラにはピントが合っているが、背景はボケている。このような写真はパンフォーカスではない。
 
=== ボケ表現とパンフォーカスの効果 ===
*ボケ表現の写真が、主たる被写体に対しスポットライトのように注意を集中させる効果があるのに対して、パンフォーカスの写真は全体に注意を分散させ、主たる被写体とその周囲の環境との関係を明確にするという効果を持つ。その結果、余計なものまで写りすぎてしまうという欠点ももつ。(右上の写真では他のカメラマンが中景にはっきり写りこんでいるが、右下の写真では背景の観光客はぼかされて不鮮明となり邪魔な感じが少ない。)
*ボケ表現は「柔らかい感じ」を、パンフォーカスは「硬い感じ」を表現するのに用いられることが多い。
15 ⟶ 16行目:
逆にあまりパンフォーカスが用いられない分野としては花の[[接写]]、[[女性]]の[[ポートレート]](やわらかい表現が求められる)などがある。また被写界深度が浅い超望遠レンズで速い[[シャッタースピード]]が要求される[[スポーツ写真]]では、結果的に背景がボケたものが多く見られる。
 
=== 撮影方法 ===
なお「パンフォーカス」は和製英語であり、正しい英語では「ディープフォーカス」と呼ばれる。
 
映画での同様の手法については、[[ディープフォーカス]]を参照。
 
== 撮影方法 ==
パンフォーカスの写真を撮るには次の3つの方法が用いられる。
#[[焦点距離]]の短いレンズを使う。一般的な銀塩写真フォーマットである35mm版(デジタルカメラでいうFXフォーマット)においては'''広角'''よりなほど被写界深度が深く、パンフォーカスになりやすい。冒頭右上の写真では焦点距離18ミリの広角レンズを用いている。なお、レンズの被写界深度は画角ではなく、焦点距離によって決まるため、コンパクト・デジタルカメラなど受光素子の小さいカメラでは画角に対し焦点距離が短くなるため、よりパンフォーカス効果を得やすくなっている。
26 ⟶ 23行目:
::特に[[望遠レンズ]]による撮影の場合は絞りだけでパンフォーカスを得ることはきわめて難しいので、撮影者が後ろに下がって被写体を相対的に遠距離に置くことでパンフォーカスを得ることができる。
 
=== 大判カメラとパンフォーカス ===
[[大判カメラ]]では、レンズの焦点距離が長く被写界深度が浅いため、特別に小絞りにできるように設計されており(F64、F128といった絞り値が使用できる)、絞り込むことでパンフォーカスを得ることができるほか、[[あおり (写真)|アオリ]]を使って被写界面を傾け(ピントの合う面を地面などに沿わせて)擬似的なパンフォーカス描写を得ることもできる。
 
=== パンフォーカスを利用したカメラ ===
[[携帯電話]]に内蔵のカメラや[[レンズ付きフィルム]]、[[トイカメラ]]など安価なカメラでは、ピント合わせ機構を省略した[[固定焦点]]レンズつきのカメラがあるが、これは広角レンズに固定絞りを入れたレンズを装着して、常にパンフォーカス撮影となるように設計されている。
 
36 ⟶ 33行目:
[[オートフォーカス]]普及以前の、マニュアル操作の普及機において、日中ならパンフォーカスで撮影できる距離と、マニュアル絞り機であれば適切な絞り値のところに、わかりやすい印が付けるなどされているものがあった。手軽に失敗無く程々の品質の撮影ができる工夫であった。
 
=== デジタルカメラとパンフォーカス ===
一般に被写界深度は[[フィルム]]または[[撮像素子]]([[CCDイメージセンサ|CCD]]、[[CMOS]]など)のサイズにも影響されるといわれる。これはフィルムや撮像素子のサイズ自体の性質によるのではない。これは、同じレンズを使ったとき、サイズが小さいほど[[画角]]が狭くなる([[APS-C]]で約1.5倍、[[フォーサーズ]]で2倍など)ため、例えば[[35ミリフィルム]]の場合と同じ画角にしたいときには焦点距離の短いレンズを用いなければならなくなるからである。特に[[コンパクトデジタルカメラ]]や[[携帯電話]]つきのカメラの撮像素子は非常に小さいものが多いので、非常に焦点距離の短いレンズが用いられる。このためパンフォーカスになりやすいのである。(逆にボケ表現には向かない。)
 
デジタルカメラでも例えば35ミリ判より撮像素子の大きな中判カメラの場合、同じ画角を得るためには焦点距離のより長いレンズが必要となるため、ボケの量はより大きくなり、より大きく絞り込まないとパンフォーカスにならない。従って、デジタルだからといってパンフォーカスになりやすいということはいえない。
 
== 映画 ==
映画においては、被写体深度を絞ることにより一つの[[ショット]]のアクションの多岐にわたって[[ピント]]を合わせることができる。
 
多くの重要なアクションが奥行きの異なった焦点で同時に起こることを可能にし、[[シャロウフォーカス]]とは正反対である。シャロウフォーカスでは、カメラに最も近いただ一つのアクションのみに焦点が合っている(もっとも、その他のアクションもぼやけてはいるが見ることができる)。
 
ディープパンフォーカスでは、観客が数多くの可能性と選択肢を手にすることができるため、映画における[[リアリズム]]技法の一つとみなされてきた。とりわけ、[[ロングテイク]]と共に使われる場合はそうであった。
 
その反面、ディープパンフォーカスは観客がそのショットあるいはミゼンセヌ(画面上の構成)の数多くの異なった地点にまなざしを向けることを可能にする。
 
ディープパンフォーカスは初期の[[サイレント映画]]で用いられていたが、フィルム・ストックの質が変化したため、この技法を利用するのが困難になっていた。
 
しかし、[[1930年代]]になってはじめて撮影監督の[[グレッグ・トーランド]]が、演劇的なルックを求めた[[ウィリアム・ワイラー]]監督の要望によってディープパンフォーカスの先駆的な仕事を成し遂げた。また、ソビエト連邦(当時)の[[エイゼンシュテイン]]監督、[[エドゥアルド・ティッセ]]撮影による『メキシコ万歳』において1931年にディープパンフォーカスの技術が採用されており、これが世界で最初にディープパンフォーカスを技法として利用した映画作品と唱える説もある。しかし、屋外撮影でのみ利用されていることや、元々はハリウッド資本で製作されたこの作品が日の目を見たのは1979年になってからであることなどから、ディープパンフォーカスを用いた嚆矢の作品として論及されることは少ない。
 
そもそも、[[絞り]]をしぼって撮影すれば、明瞭に焦点が長くなるのは分かっていたが、そのためには、特に屋内の撮影ではより[[感度]]の高いフィルム、十分な照明が必要であったが、グレッグ・トーランドは『[[嵐が丘]]』(1939)で初めてミッチェルBNCカメラを用い始める等、この技法の開発を始めていた。特に『[[市民ケーン]]』(1941)でのディープパンフォーカスの教科書的な使用例は、今日でも引き合いに出されるほど映画史的には有名である。[[アルフレッド・ヒッチコック|ヒッチコック]]や[[黒澤明]]も、好んで用いた事で知られている。黒澤の独特な[[パンフォーカス]]撮影については[[黒澤明]]を参照。
 
== 関連項目 ==
*[[ディープフォーカス]]
*[[被写界深度]]
*[[ボケ (写真)]]
55 ⟶ 66行目:
[[Category:写真]]
[[Category:カメラ]]
{{mergeto|パンフォーカス|date=2012年12月}}
'''ディープフォーカス'''('''Deep focus''')とは[[映画]]において一つの[[ショット]]のアクションの多岐にわたって[[ピント]]を合わせる撮影技法。日本では[[和製英語]]の[[パンフォーカス]]が使われる事が多い。[[スチール写真]]では専ら[[パンフォーカス]]の語が用いられている。
 
多くの重要なアクションが奥行きの異なった焦点で同時に起こることを可能にし、[[シャロウフォーカス]]とは正反対である。シャロウフォーカスでは、カメラに最も近いただ一つのアクションのみに焦点が合っている(もっとも、その他のアクションもぼやけてはいるが見ることができる)。
 
ディープフォーカスでは、観客が数多くの可能性と選択肢を手にすることができるため、映画における[[リアリズム]]技法の一つとみなされてきた。とりわけ、[[ロングテイク]]と共に使われる場合はそうであった。
 
その反面、ディープフォーカスは観客がそのショットあるいはミゼンセヌ(画面上の構成)の数多くの異なった地点にまなざしを向けることを可能にする。
 
ディープフォーカスは初期の[[サイレント映画]]で用いられていたが、フィルム・ストックの質が変化したため、この技法を利用するのが困難になっていた。
 
しかし、[[1930年代]]になってはじめて撮影監督の[[グレッグ・トーランド]]が、演劇的なルックを求めた[[ウィリアム・ワイラー]]監督の要望によってディープフォーカスの先駆的な仕事を成し遂げた。また、ソビエト連邦(当時)の[[エイゼンシュテイン]]監督、[[エドゥアルド・ティッセ]]撮影による『メキシコ万歳』において1931年にディープフォーカスの技術が採用されており、これが世界で最初にディープフォーカスを技法として利用した映画作品と唱える説もある。しかし、屋外撮影でのみ利用されていることや、元々はハリウッド資本で製作されたこの作品が日の目を見たのは1979年になってからであることなどから、ディープフォーカスを用いた嚆矢の作品として論及されることは少ない。
 
そもそも、[[絞り]]をしぼって撮影すれば、明瞭に焦点が長くなるのは分かっていたが、そのためには、特に屋内の撮影ではより[[感度]]の高いフィルム、十分な照明が必要であったが、彼は『[[嵐が丘]]』(1939)で初めてミッチェルBNCカメラを用い始める等、この技法の開発を始めていた。特に『[[市民ケーン]]』(1941)でのディープフォーカスの教科書的な使用例は、今日でも引き合いに出されるほど映画史的には有名である。[[アルフレッド・ヒッチコック|ヒッチコック]]や[[黒澤明]]も、好んで用いた事で知られている。黒澤の独特な[[パンフォーカス]]撮影については[[黒澤明]]を参照。
 
技術的側面に関しては、[[パンフォーカス]]を参照。
 
{{DEFAULTSORT:ていいふふおおかす}}
[[Category:撮影技術]]
 
[[de:Deep focus cinematography]]