「アニメ監督」の版間の差分

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[[実写映画]]の場合、撮影現場はスタッフ、キャストが集まって監督の指示の下に映画を制作する。この場合、監督とは作品の制作の他に現場を統括する管理者である。また人事を監督が行う場合もある。対して演劇の舞台監督は当日の進行を管理し、スケジュールを決定し、キャスト、スタッフの人事管理を行う。演劇の内容を担当するのは主に[[演出家]]である。アニメの場合は、アニメ黎明期のアニメ監督は人事やスケジュール管理は関与することがなかったので「監督」とは呼ばれず、演劇と同じように「演出」と呼ばれた。現在監督という呼称が定着しているのは[[アニメーション映画]]の場合、実写映画に合わせようと考えたのだと思われる。また[[テレビアニメ]]の場合、各話別の演出家が割り当てられており、それらをまとめる監修者の存在が必要だったと考えられる。
 
アニメにおける監督を含めた演出家の仕事(演出処理)は、[[絵コンテ]]を映像化するための各セクションに演技や仕上がりのイメージなどの指示をすることである。シナリオライターによる脚本を元に[[絵コンテ]]を作成するのも演出家の仕事であるが、現在は分業化が進み絵コンテ担当者と演出処理担当者が別であるケースが多い。絵コンテの作成はまず監督と演出家との打ち合せ(通称'''コンテ打ち''')により意見をまとめ、作業に入り、2〜4週間ほどで完成する。絵コンテが完成すると、監督は演出家と演出処理についての打ち合せ(通称'''演打ち''')を行ない、処理の方向性を確認する。ここから先は各話担当の演出家の仕事の範疇となる。演出はまず原画マンや[[作画監督]]と打ち合せを行う。その後上がってきたレイアウト、原画をチェックし、[[美術監督]]や[[色彩設計]]、撮影との打ち合せも行う。その後[[編集]](カッティングと呼ばれる)や[[アフレコ]]・[[ダビング]]といった音響作業に指示を出していく。映像が完成すればスタッフとともにラッシュのチェックを行ない、リテイクを見つけそれを修正するための処理をしていく。全てのリテイクが終り'''V編'''と呼ばれる[[ポストプロダクション]]が行なわれ、ようやく納品となる。
 
[[東映アニメーション]]では音響作業においての[[音響監督]]を演出家が兼ねる体制をとっている。アニメーション黎明期において本来は音響も演出の仕事の範疇であったが、東映以外の会社では分業化されていった歴史があるためである。また東映は他社に比べて演出の権限が強く「各話監督」のような役割が与えられているのも特徴である。ゆえにクレジット上で「監督」を置かず、現場の長には「シリーズディレクター」や「チーフディレクター」といった肩書きが与えられるし前述の通り各話演出の権限がやや強い事を除けば作業内容はほぼ他社の監督と同意であり、現場でも「監督」と呼称されている
 
== 演出家の出身職業 ==
演出家はアニメーションに携わるクリエイターの現場監督とも言える存在であるが、必ずしも人並み以上に絵が描ける必要があるとはされていない。むしろ全く描けない演出家も少なくない。
アニメーションそのものの黎明期において、アニメーションは個人あるいは少人数での制作がほとんどであり、アニメーター=演出家と言えるものであった。しかしアニメーション文化が映像、商業として発展していくにつれ分業化が進み、専業の演出家が必要とされていった。
初期においてはアニメーターとしてある程度の技量を持った人間がそのまま演出家になることが多く、その傾向は現在も続いている。一方、[[東映動画]]は実写映画の助監督のように演出助手(後述)を募集しており、[[高畑勲]]のように、絵は描けずともはじめから演出助手として採用されたうえで演出に昇格するというパターンもあった(現在の[[東映アニメーション]]でもそのシステムは引き継がれている。また試験を受ければ社内のどのセクションからも演出に転身でき出来るようになっている)19611961年に設立された[[虫プロ]]では、初期は東映から移籍してきた[[杉井ギサブロー]]などアニメーター出身の演出がほとんどであったものの、[[富野由悠季]]や[[高橋良輔]]などの[[制作進行]]出身のアニメ演出家が登場し、以降業界では制作進行から演出家になるという流れも一般化した。また、設立当初から分業化を進めていた[[タツノコプロ]]においては、[[押井守]]のようにいきなり演出として採用されることもあった。
90年代までは基本的に東映の演出助手経験者、アニメーターあるいは制作進行が演出家になるパターンが多く、それ以外の職種からの転身はそれほど見られなかったが、00年代になってデジタル化が進むと撮影やCG出身の演出家も多く輩出されるようになった。これは現代のアニメの画作りにおいては撮影マンやCGクリエイターの技術に頼る事が多くなってきており、演出家にはデジタル映像技術への理解が必要不可欠となってきているためである。