「MZ (コンピュータ)」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
Bellis (会話 | 投稿記録)
→‎クリーン設計: 独自研究かつ、不適切な出典情報の提示であるため除去します
編集の要約なし
1行目:
'''MZ'''(エムゼット)は[[1970年代]]から[[1980年代]]にかけて[[シャープ]]が販売していた[[パーソナルコンピュータ|パソコン]]のシリーズ名。
 
==設計とシステム構成==
MZシリーズの始まりは、[[1978年]]5月に発売されたマイコン博士[[MZ-40K]]という4ビット[[マイクロコンピュータ|マイコン]]のトレーニングキットである。MZ-40Kの名前の由来は風呂ブザー用に用意してあった登録コードを流用したものであった<ref>『パソコン革命の旗手たち』 p73</ref> 。
5 ⟶ 6行目:
製品を発案した事業部は部品を販売する部署であり、計算機などを扱う部署との摩擦を防ぐ意味合いもあって、MZ-40Kに続いて技術者用のトレーニングキットという名目でMZ-80Kを半完成キットの形で発売した<ref>『パソコン革命の旗手たち』 p72</ref>。これらとは別に、MZ-80Tというワンボードトレーニングマイコンも用意されていた。<!--(MZ-80Tについて、事情が特殊なのでノート参照)-->
シリーズとして以下のような特徴を持っている。
 
===クリーンコンピューター===
MZ-80Kも試作機では、[[BASIC]]も[[ROM]]で搭載されたコンピュータであったが、シャープROMを外部調達する都合上、ROMに納めたプログラムに[[バグ]]が発覚すればその原価から多大な損害が発生する。このリスクを回避するため実際に商品化された製品で採られた苦肉の策がシステム全体をROMとして持つのではなく、最低限の処理を収めたモニタのみを本体にROMで搭載し、基本プログラムは[[カセットテープ]]などのメディアで供給するという後に「クリーンコンピューター」とうたわれるシステムであった<ref>『パソコン革命の旗手たち』[[関口和一]] [[日本経済新聞社]] 2000年 73ページ</ref>。現実にはそれほど致命的なバグが露見することはなかったが、逆にマニアからすれば自分で自由にソフト開発ができる環境となっており、[[ハドソン|ハドソンソフト]]や[[キャリーラボ]]をはじめとしてシャープ以外のさまざまなソフトハウスから言語、オペレーティングシステム等が発売されると共に、各種言語やシステムのリリースが行われたり、シャープ自身もハイスピードBASICなどのソフトウェア的なアップグレードを実施した。これらの状況から、苦肉の策の設計であったクリーンコンピューターは、ソフトウェア的にフレキシブルなシステムであることを、以降のMZシリーズの特徴的な設計として広告文句にも利用するようになった。この実装では、システムそのものを本体に持たないため、当時の標準環境であったBASICが利用可能になるまで、標準内蔵デバイスであるデータレコーダからの起動で数分を要するという欠点もあったが、FDDの利用で10秒前後に短縮できるほか、MZ-80B以降のIPLでは、MZ-1R12等のメモリボードに予め起動するシステムを書き込むことでも改善することが出来た。同様にクリーン設計を採用したX1では、CZ-8RB01として予め拡張ボードに書き込まれたBASICも発売されていた。これらのSRAM若しくはROMボード上からの起動でも、それらは直接メモリ空間にマッピングされているわけではなく、IPLにより、メインメモリに「転送」されて起動する。
 
====実装の変遷====
MZ-80Kではコマンド自体が6種しか実装されていないものの、実際にROMで実装されているモニタは現在の[[BIOS]]に相当し、文字表示内蔵デバイスへの入出力、音の出力等ローレベルな処理が書き込まれており、最低限の物しか存在していないわけではない。
MZ-80Bでは、本体基板にはIPLのみをROMで実装し、モニタも含むシステムプログラムは、全てRAMに展開されるよう更にその設計を推し進めたものになり、同社X1では更にアドレスデコードの工夫によって、IPL自身が直接読み込むことが可能な容量が増えている。
これら、ソフトウェアを固定しない形で進められたその思想は、X1turboやMZ-2500では再度、複雑化したハードウェアをサポートするためのBIOS(IOCS)が本体に実装されるようになり、結果として先祖がえりする形になっている。
また、他の機種であっても、起動時にディスク対応のモジュールの読み込みを行ったり、ROM部分のバンク切り替えによるRAM化が可能になるなど、実質的には実装の差は、互換性を維持するために搭載されるBASIC-ROMの有無のみになっていった。
 
===オールインワン設計===
初期の同シリーズは、本体・[[ディスプレイ (コンピュータ)|ディスプレイ]]・キーボード・[[データレコーダー]]を一体とし、本体のみでシステムが最低限完結するように設計されていた。
機種によって構造やパーツは異なるものの、筐体は底面のビスを外すことで背面の蝶番を支点として、車のボンネットカバーのように持ち上げることが可能になっており、内部に用意された支柱によって固定し、内部をメンテナンスできるようになっている。
PCシリーズを祖とするMZ-3500、MZ-5500シリーズを除けば、MZ-2000MZ-1200の世代まで受け継がれる外観にも現れる特徴的な設計となっていたが、ディスプレイのカラー化などの流れとコストのバランスの都合から、MZ-700以降は見られなくなった。
 
===アルゴマーク===
MZ-80K発売に合わせ、ブランドの確立のため、シリーズのシンボルマークとして勇気、未来、探求、憧れの象徴として、ギリシャ神話の物語から[[アルゴー船|アルゴ号]]をモチーフに作られたデザインが制定された。その意匠デザインの由来については「MZ-80 SERIES BASIC解説」の冒頭に言及があり、Oh!MZ誌上でも、その一節は取り上げられた。このロゴマークは、当時家電メーカーとしてのイメージが強かったシャープでは社名のみではインパクトが弱く、多くの売れ筋製品の名前などの要素や、対象になるユーザーの嗜好などを考慮し、新しいベンチャーとしてのイメージ<ref>[http://blogs.yahoo.co.jp/nagusa_kei/11766379.html?type=folderlist]開発者の回顧録より。</ref>を託す形で新設された。この象徴的なマークは最終機まで引き継がれ、MZ-2500、MZ-2861では特殊キーのひとつにこのロゴが描かれたキーが存在する。
 
===内蔵データレコーダ===
MZシリーズの内蔵データレコーダは、専用に周辺回路が設計されていることもあり、競合製品のデータレコーダよりも高い信頼性を確保していた他、読み書きの速度も競合製品の平均的な速度よりも高速<ref>同時期に販売されていたベーシックマスター、PC-8001は、300Baud。FM-8は1600Baud。</ref>に設定されていた。記録されるデータはソフトウェア制御によるPWM変調で、同じデータの書き込みを繰り返し二回記録する。データの読み込みが失敗した場合は、二度目に記録したデータの読み込むを試みるようになっている。<ref>各機種、回路図並びに、Owner's Manualのモニタソースコードのデータレコーダ制御部で確認できる。</ref>このフォーマットは速度の差はあるものの引き継がれた。また、ハードウェアでは、その機種の標準速度を基準に調整されているものの、ソフトウェアによって波形は生成されるため、ソフトウェアによってある程度の記録速度の調整を行うことが可能であった。
 
MZ-80Bではソフトウェアでも頭出しやデッキオープン、早送り、巻き戻し等の制御が可能になった。この電磁制御のデータレコーダは別部署からリリースされたX1でも標準の内蔵デバイスとして採用された。また、MZ-2500では録再ヘッドがステレオ仕様になり、片方にデータ、片方に音声を記録し、ロードしながら音声を再生する、本体側から音声を頭出しし、再生するなどの利用も可能になった。この信頼性と高速性を持つデータレコーダに加え、他社の競合製品と比較し、純正FDDの標準価格が高価である事も手伝い、フロッピーディスクの標準搭載への対応が遅れる遠因となった。
 
MZ-80Bではソフトウェアでも頭出しや、デッキオープン、早送り、巻き戻し等の制御が可能になった。この電磁制御のデータレコーダは別部署からリリースされたX1でも標準の内蔵デバイスとして採用された。また、MZ-2500では、録再ヘッドがステレオ仕様になり、片方にデータ、片方に音声を記録し、ロードしながら音声を再生する、本体側から音声を頭出しし、再生するなどの利用も可能になった。この信頼性と高速性を持つデータレコーダに加え、他社の競合製品と比較し、純正FDDの標準価格が高価である事も手伝い、フロッピーディスクの標準搭載への対応が遅れる遠因となった。
===フロッピーディスクインターフェイス===
FDDインターフェイスの初期回路設計において、本来、負論理のバッファを通すところを直結し、その設計を踏襲したため、直接は互換性の無い機種においてもそのままディスクサイドの指定や、実記録されるデータが、標準的なディスクに対し反転している。また、初期の1Sドライブが片面35トラックであり、互換性を維持するため、純正FDDであるMZ-80BFではヘッドにストッパーが装着され、公式なトラック数が2Dでも片面35トラックとなっている。ただしコントローラーやドライブ自体はそれ以降のトラックも取り扱えるため、本来のドライブ側の仕様である80トラックを利用できる様にする改造や、仕様外のそれ以降を利用するソフトウェアも個人、雑誌レベルでは存在している。Hu-BASICでは、ソフトウェア的に反転させることにより、記録媒体レベルでのX1との互換性が実現されている。
 
===プリンタインターフェイス===
[[プリンター]]インターフェースは初期の実装ではMZ-80K系、MZ-80B系列それぞれ異なる独自仕様になっていたが、MZ-2000以降は一般的なセントロニクス準拠仕様に変わっている。但し、MZ-1500では互換性維持のため、本体背面にMZ専用仕様と[[IEEE 1284|セントロニクス準拠仕様]]とを切り替える[[ディップスイッチ]]があった。なお、最初に発売されたMZ-80P2は[[放電破壊プリンター]]だった。その後のMZ-80P3以降は[[プリンター#ドットインパクト方式|ドットマトリクスプリンター]]である。MZ-700には、専用内蔵プリンタが存在<ref>MZ-731以外の機種ではMZ-1P01としてオプション販売されている。</ref>しており、その後継機であるMZ-1500にもそれを外付け可能にしたMZ-1P09が発売されている。このプリンタは、安価にボールペンによって本来高価である[[プロッター|カラーペンプロッター]]を実現していた。<ref>[[MZ-700#プロッタプリンターの内蔵|MZ-700]]の項も参照のこと</ref>
 
==回路図・ソースコード==
元々部品事業部のトレーニングキット名目での製品であり、メモリの増設にもハードウェアに手を入れる必要があるという状況もあいまって、MZ-2200の時代まで本体の回路図、モニタのソースコード、Z80の命令表等、ハードウェア、ソフトウェアを製作するのに必要な情報が、標準添付のOwner's Manualに記載されていることも特徴<ref>MZシリーズも規模が大きくなり、ユーザが自ら物を作ることが少なくなった[[MZ-1500]]以降は他社のPC製品同様、出版社等からこれらの情報が刊行される形に変更された。</ref>であった。
34 ⟶ 41行目:
BIOSやBASICのソースリストは工学社から発売された。
本体だけではなく、シャープ純正オプションの一部では付属マニュアルに回路図が記載されている。
 
==製品系列==
系列としてはMZ-80K系(40×25文字のテキスト画面を持つ。グラフィックキャラクタを使用した80×50ドットのセミグラフィックが可能)、MZ-80B系(320×200のモノクログラフィックを最大2画面分、テキストと別プレーンで持つ)、MZ-2000系(640×200の解像度に加えカラー表示対応)、PC-3100系、MZ-5500系(MZ-3500系を16bit化)などがある。
 
また、[[1982年]]からはシャープテレビ事業部から別系統の製品として、型番がCZの新シリーズが通称「パソコンテレビ[[X1]]」としてリリースされた。このX1シリーズは後に[[1986年]]に発表された[[X68000]]シリーズに引き継がれた。テレビ画面とのスーパーインポーズ機能が特徴的なこの系列は好評で、MZシリーズからも対抗するようにグラフィックやサウンド機能を強化したMZ-1500/2500を発売したものの、こちらは成功したとはいえなかった。
 
なお、MZの名称は同社の[[Mebius]]と[[Zaurus]]の頭文字に、分割して引き継がれていると[[宮永好道]]がコラム{{いつ|date=2011年4月}}で語っている。
 
===部品事業部によるMZ===
[[ファイル:Mz80k.jpg|thumb|right|MZ-80K]]
48 ⟶ 57行目:
** [[MZ-80#MZ-80K2E|MZ-80K2E]] - [[1981年]]発売。32KB RAM搭載。80K2の廉価版。CPUにICソケットを使用せず、直接基板に半田付けされているなど、コストダウンが随所に見られる。標準価格148,000円。
* MZ-80B系列 シリーズハイエンドを担い、後にMZ-2000へ繋がるシリーズ。オプションを取り込み事業部移行後にも、MZ-80B2としてMZ-2000と併売されている。<br/>320×200ピクセルのグラフィックス画面を最大2画面サポートし、CPUは4MHz、データレコーダはソフトウェアによって制御可能になるとともに、2000baudに高速化された。
** [[MZ-80#MZ-80B|MZ-80B]] - [[1981年]]発売。64KBオールRAM構成。 Bはビジネスの意味と言われているが、開発者達は BIGのBとして開発に打ち込んだ 究極のMZであった。標準価格278,000円。
 
===情報システム事業部によるMZ===
121 ⟶ 130行目:
*BASIC M25 MZ-6Z002 (MZ-2500用)
*BASIC S25 MZ-6Z003 (MZ-2500用)-->
SHARP BASICとして、(後に[[S-BASIC]]と呼ばれる)[[PET_2001|PET]]由来のコマンド群を持つBASICを[[カセットテープ]]並びに[[フロッピーディスク]]で標準添付並びにオプションとして供給していた。
演算精度の高いもの、漢字表示特定デバイスのサポート、カラー表示のサポートなど、拡張機能を実装したBASICは、別途オプションとして提供されている。
それらBASIC以外にも、[[リロケータブルバイナリ]]出力でユーザー定義のマクロ命令記述も可能な[[アセンブリ言語|マクロアセンブラ]]([[リンケージエディタ|リンカ]]・[[デバッガ|シンボリックデバッガ]]・[[PROM|P-ROM]]フォーマッタ含む)[[アセンブリ言語]]、マシンランゲージモニタ(現在でいう[[バイナリエディタ]])等も別売されており、テープメディアゆえ使い勝手に難ありといえども極めて強力な開発ツールであった。Floppy Disk Operating System(FDOS)には前記アセンブラのほかBASIC[[コンパイラ]]も同梱されており、[[Z80]]のセルフ開発環境としてはコストパフォーマンスを考慮すると当時の[[CP/M-80]]をも凌駕するものであった。