「欧州連合の言語」の版間の差分

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'''欧州連合の言語'''(おうしゅうれんごうのげんご)は、[[欧州連合]](EU)の[[欧州連合加盟国|加盟国]]内の市民が用いる[[言語]]。多くの言語があるが、とくにEUの[[公用語]]とされるのは2324の言語である。EUのポータルページである[http://europa.eu/ Europa]では、"Languages: Europe's asset"(言語は貴重な財産である)とされ、[[欧州委員会]]にも[[多言語|多言語主義]]を担当する委員がおり、2007年以降はレオナルド・オルバンが務めている。
 
EUにおいて言語政策は加盟国にとって大きな課題であり、またEUには共通言語政策というものがない。このためEUの機構において、[[補完性原理]]に基づき、言語に関する分野を支える役割を担っている。EU諸機関の役割は加盟国間の協力を促し、またヨーロッパという範囲において加盟国の言語政策の促進を図るものである。EUは域内の市民に対して複数の言語を話すことができるように努めており、とくに[[母語]]に加え2つの言語が話せるようになることに力を入れている。EUでは教育制度に関しては加盟国個別で政策が実施されていて、EU自体の影響力は限られたものであるが、多くのEUの財政計画では言語学習や言語の多様性の促進に重点が置かれている<ref>[http://ec.europa.eu/education/policies/lang/policy/index_en.html The European Commission's Action Plan for Language Learning and Linguistic Diversity] - 欧州委員会(英語ほか1011言語)</ref>。
 
== EUの公用語 ==
EUの公用語は[[欧州経済共同体]](EEC)理事会において規定されている。規則1/1958ではEECにおいて用いられる言語について[[1958年]][[4月15日]]に<ref>[http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CELEX:31958R0001:EN:NOT Council Regulation (EC) No 1791/2006 of 20 November 2006], ''Official Journal L 363 of December 12, 2006''. Retrieved on February 2, 2007.</ref>以下の通り定められている<ref>[http://ec.europa.eu/education/policies/lang/languages/index_en.html LANGUAGES OF EUROPE] - 欧州委員会(英語ほか1011言語)</ref>。
 
{| border="0" cellpadding="0" cellspacing="0" width="90%" style="border-collapse: collapse ; margin-left: auto; margin-right: auto;"
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* [[スペイン語]]
* [[スウェーデン語]]
* {{lang|hr|Europska unija}} ([[クロアチア語]])
|}
 
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さらにすべての加盟国の言語がEUの公用語となってはおらず、たとえばルクセンブルクでは[[1984年]]に[[ルクセンブルク語]]が公用語となり、キプロスでは[[トルコ語]]が公用語となるが、いずれもEUの公用語にはなっていない。
 
EUのすべての言語は作業言語 (working language) となっている<ref>[http://europa.eu/languages/en/chapter/33 Translation - Policies] - EUROPA(EUポータルサイト、英語ほか2223言語)</ref>。ある加盟国の法の管轄を受けている個人や加盟国自体が[[欧州共同体]](EC)の機関に対して送付する文書は、その送付者が選択した公用語を使用することができる。またその文書の返答に使われる言語も送付した文書と同じ言語で作成される。規則およびそのほか申請文書は2324の公用語で表記される。EUの広報誌"Official Journal of the European Union"は2324公用語で出版されている。
 
法令や重要な公文書は全2324公用語で作成されるが、重要度の低い文書では必ずしもそうではない。国家当局に対する伝達や特定の個人・団体を対象とした決定や書簡などの文書は必要とされる言語にのみ翻訳される。[[欧州連合の機構|EU機関]]では、内部での目的に関しては法令により言語を選択することができる。たとえば欧州委員会では内部での作業を行うさいには英語、フランス語、ドイツ語を使用することができ、すべての公用語を用いるのは公式情報や伝達のさいに限られる。他方、欧州議会では自分の使用する言語で書かれた文書を必要とする議員がおり、そのため最初から複数の言語で書かれた文書でなければならない<ref>[http://europa.eu/languages/en/document/59#5 Europa:Languages and Europe. FAQ: Is every document generated by the EU translated into all the official languages?]- EUROPA(EUポータルサイト、英語ほか2223言語)</ref>。非EU機関では全2324言語で文書を作成することは法的な義務となっていない<ref>Kik v. OHIM, Case No. C-361/01, 2003 ECJ I-8283</ref>。
 
EUの英語版サイトによると<ref>[http://europa.eu/languages/en/document/59#8 Europa:Languages and Europe. FAQ: What does the EU's policy of multilingualism cost?]- EUROPA(EUポータルサイト、英語ほか2223言語)</ref>機構の翻訳などの多言語主義政策の維持に毎年11億2300万[[ユーロ]]がかかり、これはEUの年間予算の1%に相当し、市民1人あたりでは2.28ユーロの負担となっている。
 
=== マルタ語 ===
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* {{lang|es|''Unión Europea''}} ([[スペイン語]])
* {{lang|sv|''Europeiska unionen''}} ([[スウェーデン語]])
* {{lang|hr|Europska unija}} ([[クロアチア語]])
 
=== 上記以外の言語 ===
欧州憲法条約は加盟32候補国の公用語にも翻訳されていた。これらの言語でのEUの名称表記は以下の通りとなる。
 
* {{lang|hr|Europska unija}} ([[クロアチア語]])
* {{lang|mk|Европска Унија}} ({{lang|mk|''Evropska Unija''}}; [[マケドニア語]])
* {{lang|tr|Avrupa Birliği}} ([[トルコ語]])
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== EU市民の言語能力 ==
以下の表は2005年11-12月に調査され、2006年2月に発表された"Europeans and their Languages"と題された欧州委員会による"Special Eurobarometer 243"に基づいて作成されている<ref name="data01">Europeans and their Languages (Special Eurobarometer 243) [http://ec.europa.eu/public_opinion/archives/ebs/ebs_243_sum_en.pdf 要約]、[http://ec.europa.eu/public_opinion/archives/ebs/ebs_243_en.pdf 全文] いずれも英語、PDF形式</ref>。なお本調査は2007年にブルガリアとルーマニアが加盟した[[欧州連合の拡大|EU拡大]]前に実施されており、部分調査であって全体的なものではない。当時の加盟全25か国と2007年に加盟するブルガリアとルーマニア、加盟候補国の[[クロアチア]](当時)と[[トルコ]]に住む15歳以上の市民28,694人を対象に聞き取り調査を実施した。なおこの数値に移民は含まれていない。
 
表1では普段の会話ではどの言語を母語として使っているか、または[[第二言語|第2言語]]あるいは[[外国語]]として使っているかについて、市民の回答の割合を表している(ただしいずれの回答でも2%未満だった言語は除外している)。
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== EU公用語の言語学的分類 ==
EU公用語の多くは[[インド・ヨーロッパ語族]]のゲルマン、ロマンス、[[スラヴ語派|スラヴ]]の3つの語派に属している。ゲルマン語派に含まれるのはデンマーク語、オランダ語、英語、ドイツ語、スウェーデン語があり、EUの中部、北部において広く使用されている。ロマンス語派に含まれるのはフランス語、イタリア語、ポルトガル語、ルーマニア語、スペイン語であり、主に西部や南部で使用されている。スラブ語派に含まれるのはブルガリア語、チェコ語、ポーランド語、スロバキア語、スロベニア語、クロアチア語で、EUの東部で見られる。[[バルト語派]]にはラトビア語とリトアニア語が、ケルト語派にはアイルランド語がそれぞれあり、ギリシャ語はそれ自身がインド・ヨーロッパ語族の単独の語派のひとつ(ギリシャ語派)となっている。インド・ヨーロッパ語族以外のものとしてエストニア語、フィンランド語、ハンガリー語が[[ウラル語族]]の[[フィン・ウゴル語派]]に属し、マルタ語はEUの公用語の地位にある中で唯一[[アフロ・アジア語族]]の[[セム語派]]に属している。ほぼすべてのEU公用語は[[ラテン文字]]で表記されるが、例外として[[ギリシャ文字]]を使用するギリシャ語と[[キリル文字]]を使用するブルガリア語がある。
 
== 法的根拠 ==
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=== EUウェブページ ===
* [http://www.deljpn.ec.europa.eu/union/showpage_jp_union.history.cultural_diversity.php 文化の多様性] - 駐日欧州委員会代表部による
* [http://europa.eu/languages/ EUROPA Languages portal] (公用2324言語)
* [http://www.europarl.europa.eu/facts/4_16_3_en.htm European Parliament Fact Sheets: 4.16.3. Language policy] - 欧州議会ファクトシート(英語ほかドイツ語、フランス語)
* [http://ec.europa.eu/education/policies/lang/languages_en.html European Commission > Education and Training > Policy Areas > Languages] - 欧州委員会政策別ページ(言語) (英語ほかドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語)
* [http://ec.europa.eu/commission_barroso/orban/index_en.htm 欧州委員会多言語主義担当委員レオナルド・オルバン] (公用2324言語)
* [http://ec.europa.eu/dgs/education_culture/index_en.html 欧州委員会教育・文化総局] (英語ほか1920言語)
* [http://ec.europa.eu/dgs/translation/ 欧州委員会翻訳総局] (英語ほかドイツ語、フランス語)
* [http://ec.europa.eu/dgs/translation/ 欧州委員会通訳総局] (EU公用2324言語)
* [http://publications.europa.eu/index_en.htm 欧州委員会出版局]
* [http://publications.europa.eu/code/en/en-370200.htm European Union interinstitutional style guide] (英語ほか1011言語)
* [http://www.europa.eu/comm/dgs/translation/bookshelf/brochure_en.pdf The process of creating documents in this multilingual environment] (英語、PDF形式)