「ヒルベルト空間」の版間の差分

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ヒルベルト空間の概念の重要性は、それが最も適切な[[量子力学の数学的基礎]]の提供を実現したことで強く認識されるようになった<ref>{{harvnb|Prugovečki|1981|pp=1–10}}.</ref>。簡単に言えば、量子力学系の状態はある種のヒルベルト空間におけるベクトルであり、可観測量はその空間上の[[エルミート作用素]]であり、系の[[対称性 (物理学)|対称性]]は[[ユニタリ作用素]]であり、[[量子測定|測定]]は[[直交射影]]である。量子力学的対称性とユニタリ作用素との間の関係は、1928年のワイル<ref name="Weyl31" />に始まる[[群 (数学)|群]]の[[ユニタリ表現|ユニタリ]][[群の表現論|表現論]]の発展の原動力となった。他方、1930年代の初め頃には、古典的な[[力学系]]のある種の性質が、[[エルゴード理論]]の枠組みのもとでヒルベルト空間を用いた方法で調べられるようになり、明らかにされた<ref name="von Neumann 1932">{{harvnb|von Neumann|1932}}</ref>。
 
量子力学における[[可観測量]]の代数は、[[ヴェルナー・ハイゼンベルグ|ハイゼンベルグ]]の[[行列力学]]による量子論の定式化に従って、自然に或るヒルベルト空間上で定義される作用素環となる。1930年代のうちにフォン・ノイマンがヒルベルト空間上の作用素の成す[[環 (数学)|環]]としての[[作用素代数|作用素環]]を調べ始め、フォン・ノイマンやその時代の人々が研究した種類の作用素環は、今日では[[フォン・ノイマン環]]と呼ばれている。1940年代には、[[イズライル・ゲルファント|ゲルファント]]、{{仮リンク|マーク・ナイマーク|en|Mark Naimark|label=ナイマーク}}、{{仮リンク|アーヴィング・ジーゲル|en|Irving Segal|label=ジーゲル}}らが[[C*代数| ''C''<sup>&lowast;</sup>-環]]と呼ばれる種類の作用素環の定義を与えた。これはヒルベルト空間の基盤となることはない一方で、それまで知られていた作用素環のもつ有用な特徴が当てはまる。特に、存在する殆どのヒルベルト空間論の根底にある、自己随伴作用素のスペクトル定理が ''C''<sup>&lowast;</sup>-環に対して一般化された。これらの手法は今や抽象調和解析や表現論において基本となっている。
 
== 例 ==