「アルド・クレメンティ」の版間の差分

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前衛の停滞以降、クレメンティも積極的に過去の音楽的遺産を振り返るようになった。とはいえ、これらの作品群はすべて「カノン的思考」に徹底されていることが、クレメンティ音楽の大きな特色である。シェルシからクレメンティが学んだものは「聴覚上のカノン」ではなく「書法上のカノン」であった。実際、クレメンティの音響嗜好は年とともに刻々と移り変わってきた。最も有名なカノン・ラレンタンドの音響は立体的だが、晩年はそれに反するかのように平面的である。2000年代に入っても探求は衰えず、絶筆となった「ヴァイオリン協奏曲第2番」にいたっては、全ての楽器が完全に静止し、時の流れを感知できない。しかし、譜面はすべてカノン的な発想で確定された音符が精緻に並ぶ。
 
2013年現在こそ望月京やレベッカ・サンダースほかの現代音楽作品で本物のオルゴール<ref>Seminara, Graziella, and Maria Rosa De Luca (eds.). 2008. Canoni, figure, carillons望月は「クラウド・ナイン」、サンダースは「cinnabar」で用いている。</ref>が使われることは全く珍しくないが、複数個のオルゴールを実作に投入したのはアルド・クレメンティが最初の存在である。現在に到るまでイタリアの作曲家達は、16世紀以降対位法の伝統とは切れない関係にありつづけている。その中でクレメンティは[[マドリガル様式]]に現代的解釈を与えることに成功した<ref>Mattietti, Gianluigi. 2001. Geometrie di musica: il periodo diatonico di Aldo Clementi. Lucca: Libreria musicale italiana.を参照</ref>、唯一の作曲家である。実際に「マドリガル」という作品もある。
 
全作品は[[ゼルボーニ音楽出版社]]から出版されている。[[レンツォ・クレスティ]]と[[ジャンルイージ・マッティエッティ]]に拠る研究書も刊行されている。