「動物行動学」の版間の差分

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行動生態学では特定の状況で取りうる複雑な行動が単一ではなく複数あるとき(例えば大きな敵と出会ったときに、逃げるか闘争するか)、その行動の選択肢を'''戦略'''と呼ぶ。また戦略の語は複数の行動が組み合わさった複雑な行動パターン(例えば求愛から繁殖、子育てまでをあわせて繁殖戦略と呼ぶなど)を指す場合にも用いられる。
 
== 心理学(精神医学)との融合 ==
[[File:Baby with book.jpg|right|200px|thumb|エソロジーの知見は心理学に取り入れられ、人間理解に大きく貢献している]]
[[精神分析家]]であり[[児童精神医学者]]でもある[[ジョン・ボウルビィ]]は、幼児と母親の関係において動物行動学的知見が有用であることに気づき、[[ニコ・ティンバーゲン]]、[[コンラッド・ローレンツ]]、[[ロバート・ハインド]]らと交流を深めた。WHOの精神保健コンサルタントでもあったボウルビィは、人間の『[[愛着]]([[アタッチメント]])』に注目し、子どもの心の発達には養育者との愛情ある母性的関わりが必要であることを『Maternal Care and Mental Health(1951)』において発表し、[[母性的養育の剥奪]]は子どもに精神的な問題や少年非行などの深刻な影響を与えることを報告した。それまで[[フロイト]]によって説明されてきた欲動理論とは異なり、[[1969年]]から発表された『Attachment and loss』三部作において、[[乳幼児]]は世界を探索するための『[[安全基地]](secure base)』を必要とし、乳幼児の不安の多くは養育者との安全な愛着がないために起こることを指摘した。これらの研究は精神分析家の[[ルネ・スピッツ]]や[[発達心理学者]]の[[メアリー・エインスワース]]らに影響を与え、後に『[[愛着理論]]』と呼ばれる発達理論を形成した<ref>[[#小此木啓吾 他 (2002) |小此木啓吾 他 (2002) ]] p.549</ref>。