「セラミック顔料」の版間の差分

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== 概説 ==
セラミック顔料は無機顔料に包括されるが<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>、高い耐熱性と釉薬に対する安定性を持つという点において[[塗料]]・[[インキ]]・[[絵具]]・[[プラスチック]]等に使用される一般の無機顔料とは異なる一群を形成しているといえる<ref name="日本大百科全書 13 673頁 一般の無機顔料">『日本大百科全書 13』、673頁。同書同頁ではセラミック顔料以外の無機顔料を「一般の無機顔料」と定義している。</ref>。
 
従来のセラミック顔料は釉薬の着色という技術から生み出されていたが<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>、近年では[[酸化物]]・複合酸化物・[[ケイ酸塩]]といった高温で安定な無色の化合物に[[遷移元素]]の[[イオン]]等を固溶させて発色させるという方法で開発されている<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>。
 
セラミック顔料は耐熱性・耐候性・耐薬品性に優れている<ref name="日本大百科全書 13 674頁">『日本大百科全書 13』、674頁。</ref>。[[陶磁器]]・[[セラミックス]]以外のさまざまな分野での利用も検討されるが<ref name="日本大百科全書 13 674頁"/>、総じて一般の無機顔料より単独での色は鈍く着色力が小さいためその利用は限られている<ref name="日本大百科全書 13 674頁 一般の無機顔料">『日本大百科全書 13』、674頁。同書同頁でもセラミック顔料以外の無機顔料を「一般の無機顔料」と定義している。</ref>。そのため[[黒|黒色]]・[[茶色|茶褐色]]・[[青|青色]]の[[スピネル]]系顔料や[[酸化チタン(IV)|二酸化チタン]]を母格子とする褐色顔料では焼成温度を低くして粒子径を小さくおさえることで[[陶磁器]]・[[セラミックス]]以外のさまざまな分野でも利用が拡大している<ref name="日本大百科全書 13 674頁"/>。また、[[プラセオジムイエロー|プラセオジム黄]]や[[クロムチタンイエロー|クロムチタン黄]]、[[クロムスズピンク]]は絵具にも使用されている。
 
== セラミック顔料と一般の無機顔料の違い<ref name="日本大百科全書 13 673頁 一般の無機顔料"/> ==
* 組成:一般の無機顔料は酸化物・[[炭酸塩]]・[[硫酸塩]]・[[硫化物]]・[[アルミニウム粉末]]・[[炭素]]等多種多様だが<ref name="日本大百科全書 13 673頁 一般の無機顔料"/>、セラミック顔料は酸化物・複合酸化物・ケイ酸塩が用いられる<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>。
* [[クロム]]について:一般の無機顔料では[[オキサイド・オブ・クロミウム]]、[[ビリジアン]]、コバルトターコイズを除き[[六価クロム|6価]]だが<ref name="日本大百科全書 13 673頁 一般の無機顔料"/>、セラミック顔料では殆どが3価で6価のものはない<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>。
* [[鉛]]について:一般の無機顔料では[[黄色]]顔料、[[橙色]]顔料の重要成分となる[[元素]]であるが<ref>『日本大百科全書 13』、673頁。同書同頁では鉛を含む無機顔料は「一般の無機顔料」と定義しているが、毒物であり、「鉛を含む無機顔料は一般的でない」との意見は[[Wikipedia:信頼できる情報源]]である『日本大百科全書』の否定であり、[[Wikipedia:検証可能性]]及び[[Wikipedia:独自研究は載せない]]に反する主張である。</ref>、セラミック顔料では顔料そのものではなく釉薬の重要成分<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>。
 
== セラミック顔料の色調と特徴 ==
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=== 茶褐色・橙色 ===
黒のセラミック顔料同様スピネル系顔料が主要な位置を占めるが<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>、黒の顔料と異なり[[石灰]]亜鉛釉で鮮明な呈色をする<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>。そのため茶褐色のスピネル系顔料には成分として酸化亜鉛を含むものがある<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>。スピネル系の顔料以外ではプラセオジム黄と[[サーモンピンク]]の混色併用で茶褐色や橙色の色調を出すことができる<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>。なお黒の顔料同様茶褐色・橙色の顔料も名称を持つものはないので<ref name="日本大百科全書 13 674頁"/>、「Zn-Cr-Fe」や「Zn-Al-Cr-Fe」のように成分となる元素の構成により各顔料を区別する<ref name="日本大百科全書 13 674頁"/>。
 
=== 黄色 ===
古くは[[鉛]]の多い釉にしか使用できなかったナポリ黄(Pb-Sb-Fe系及びPb-Sb-Al-Ce系の2種類がある)くらいしかなかったが<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>、プラセオジム黄・[[バナジウムスズ黄]](Sn-V系及びSn-Ti-V系の2種類がある)・[[バナジウムジルコニウム黄]]等が開発されたことにより石灰釉や石灰亜鉛釉等でも使用できる黄色の顔料が増えた<ref name="日本大百科全書 13 673-674頁">『日本大百科全書 13』、673-674頁。</ref>。なおZr-V-In系はバナジウムジルコニウム黄に[[インジウム]]を添加した黄色顔料であり<ref name="日本大百科全書 13 674頁"/>、Zr-Ti-V-In系はバナジウムジルコニウム黄にインジウム及び[[チタン]]を添加した黄色顔料である<ref name="日本大百科全書 13 674頁"/>。また素地用の黄色顔料であるクロムチタン黄(Ti-Cr-Sb系及びTi-Cr-W系の2種類がある)も黄色のセラミック顔料であるといえる<ref name="日本大百科全書 13 673-674頁"/>。Zr-Si-Cd-S系は一般の無機顔料である[[カドミウムイエロー]]を[[ジルコン]]でコーティングしたものだが<ref>『日本大百科全書 13』、673頁。同書同頁ではカドミウムを含む無機顔料も「一般の無機顔料」と定義しているが、毒物であり、「カドミウムを含む無機顔料は一般的でない」との意見は[[Wikipedia:信頼できる情報源]]である『日本大百科全書』の否定であり、[[Wikipedia:検証可能性]]及び[[Wikipedia:独自研究は載せない]]に反する主張である。</ref>、この顔料の色調はプラセオジム黄とサーモンピンクの混色併用で十分カバーできる<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>。Zr-Y-V系は[[ジルコニア]]に[[酸化イットリウム]] (Y<sub>2</sub>O<sub>3</sub>) と[[バナジウム]]を固溶させた顔料だが<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>、淡い橙色を呈するため黄色というより橙色の顔料と呼ぶべきである<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>。
 
=== 緑 ===
従来から使用された[[ピーコック (顔料)|ピーコック]]は[[青緑]]に近く<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>、同じく従来から使われたビクトリアグリーンは[[黄緑]]に近いため<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>、[[緑]]そのものの色調を呈する顔料は適切なものがなかった<ref name="日本大百科全書 13 673頁"/>。たがプラセオジム黄と[[バナジウムジルコニウム青]]の混色併用により黄緑から青緑まで非常に広い範囲の緑をセラミックスで使用できるようになった<ref name="日本大百科全書 13 673-674頁"/>。緑のセラミック顔料としては他に[[クロムグリーン]](Al-Cr系)及び[[オキサイド・オブ・クロミウム|Cr系]]<ref name="日本大百科全書 13 674頁"/>、青緑を呈するCo-Cr系等がある<ref name="日本大百科全書 13 674頁"/>。
 
=== 青 ===
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=== 赤 ===
一般の無機顔料であるカドミウムレッドをジルコンでコーティングしたファイアーレッドが使用されている<ref>『日本大百科全書 13』、674頁。同書同頁でもカドミウムを含む無機顔料は「一般の無機顔料」と定義しているが、毒物であり、「カドミウムを含む無機顔料は一般的でない」との意見は[[Wikipedia:信頼できる情報源]]である『日本大百科全書』の否定であり、[[Wikipedia:検証可能性]]及び[[Wikipedia:独自研究は載せない]]に反する主張である。</ref>。
 
== 参考文献 ==