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* [[松原聰]] 『フィールドベスト図鑑15 日本の鉱物』 [[学研ホールディングス|学習研究社]]、2003年、ISBN 4-05-402013-5。
* [[国立天文台]]編 『[[理科年表]] 平成19年』 [[丸善]]、2006年、ISBN 4-621-07763-5。
 
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Corundum}}
* [[鉱物]] - [[酸化鉱物]]
* [[鉱物の一覧]]
* [[ルビー]]、[[サファイア]]
* [[アルミニウム]]、[[酸化アルミニウム]](アルミナ)
 
{{Infobox 鉱物
| 鉱物名 = コランダム(鋼玉)
| 画像 = [[ファイル:Corundum USGOV.jpg|250px|none|コランダム]]
| 分類 = 酸化鉱物
| 色 = 灰色~青色
| 組成 = Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>
| 硬度 = '''9'''
| 比重 = 4.0
| 晶系 = 三方晶系
| 光沢 = ガラス光沢
| 条痕 = 無色
| 劈開 = なし
| 蛍光 =
| 断口 =
}}
[[ファイル:Corundum.jpg|thumb|200px|right|図1 採掘されたコランダムの塊]]
 
'''コランダム''' (corundum) は、[[酸化アルミニウム]] (Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>) の[[結晶]]からなる[[鉱物]]。'''鋼玉'''(こうぎょく)とも呼ばれる。[[赤鉄鉱]]グループに属する。
 
純粋な結晶は無色透明であるが、結晶に組みこまれる不純物[[イオン]]により色がつき、'''[[ルビー]]'''(赤色)、'''[[サファイア]]'''(青色などの赤色以外のもの)などと呼び分けられる。
 
古くから、磨かれて[[宝石]]として珍重されたが、現在では容易に人造でき、[[単結晶]]は、固体[[レーザー]]、精密器械の軸受などに使われ、大規模に作られる[[多結晶]]の塊は[[研磨剤|研磨材]]、耐火物原料などに使われる。
 
なお、[[磁鉄鉱]]、赤鉄鉱、[[スピネル]]などが混ざる粒状の不純なコランダムは、'''エメリー'''と呼ばれ、天然の研磨材であった。
 
== 結晶構造とコランダムの仲間 ==
[[ファイル:Corundum_Xtal_Layer.png|thumb|right|300px|図2 コランダムの結晶層]]
 
[[結晶格子]]中の[[イオン半径]]は、[[アルミニウム]]が68pm、[[酸素]]が126pmである。大きい方の[[酸化物]]イオンを密に並べると、図2の白球の集まりになり、やや歪んだ[[六方最密充填構造]]を形成する。そして、3つのO<sup>2-</sup>が接する「ヘソ」にAl<sup>3+</sup>イオン(黒丸)が座りアルミニウムイオンは6配位八面体の酸素に取り囲まれるが、組成がAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>なので、「ヘソ」の1/3は規則的に空いている。この層を積み重ねてコランダム結晶の模型を組むことができ、積むときは、黒球が座っていない下層の「ヘソ」に上の層の白球が座るようにする(図2のa)。そうするとアルミニウムの黒球は、下の層の「ヘソ」と上の層の「ヘソ」との間におさまる(図2のb)。
 
図2は[[結晶構造|六方晶]]的に描いてあるが、この結晶は[[結晶構造|菱面体晶]]にも描け、[[結晶構造]]は、対称性にまさる後者で記述される。
 
酸化アルミニウムの結晶は[[アルミナ]]ともいう。アルミナにはいろいろな結晶構造のものがあり、図2の構造のアルミナは、αアルミナである。
 
[[酸化クロム]]の結晶はコランダムと相似で、図2の黒球のAl<sup>3+</sup>は、Cr<sup>3+</sup>と入れ替わることができる。微量のCr<sup>3+</sup>が入れ替わるとコランダムはピンクになり、2%くらい入れ替わると全くのルビー色になる。これが、[[ルビー]]である。
 
Cr<sup>3+</sup>でなくFe<sup>3+</sup>などが入ると青色になり、これが、[[サファイア]]である。ただし、人造単結晶(後記)では、ルビー色でないコランダムを、無色透明のものも含め、サファイアと総称することがある。
 
[[ボーキサイト]]をアーク炉で融解し精製して作る褐色溶融アルミナ(後記)が、黒褐色不透明なのは、Tiイオン、MgイオンがAlイオンの場所のところどころにあることによる。
 
== 性質 ==
* [[密度]]: 3.987g/cm<sup>3</sup>。
* [[モース硬度]]: [[ダイヤモンド]]に次ぐ9。
* [[モース硬度|修正モース硬度]]: [[ダイヤモンド]]、[[炭化ケイ素]]に次ぐ13。
* [[ヌープ硬度]]: 1,700 - 2,500kgf/mm<sup>2</sup>。結晶面により異なる。
* [[条痕]]: 白。
* 色: 上記のとおり、無色透明から黒褐色不透明まで、いろいろ。
* [[融点]]: 2,050℃。
* [[電気伝導]]: [[固体]]の状態では[[絶縁体]]。2,050℃で融けた[[液体]]は[[良導体]]。
 
== 産出 ==
コランダムは、さまざまに産出する。
* [[ペグマタイト]]、[[花崗岩]]、[[閃長岩]]などの[[火成岩]]とともに。
* [[結晶片岩|雲母片岩]]、[[片麻岩]]、[[大理石|結晶質石灰岩]]、[[ホルンフェルス]]などの[[変成岩]]とともに。
* [[ボーキサイト]]などの[[堆積岩]]とともに、また、地表の[[砂]]の中から。
* [[地殻]]内の高温水溶液([[熱水]])から晶出した熱水鉱床から。
 
[[鉱床]]は、[[カナダ]]、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]、[[ロシア]]、[[南アフリカ]]などにある。ルビーは、[[ミャンマー]]、[[タイ王国|タイ]]、[[スリランカ]]で、砂の中から多く採掘される。
 
== 単結晶の人造法 ==
コランダム(ルビー、サファイア)の[[単結晶]]は、次のような方法で人造できる。
 
=== 火炎溶融法 ===
この方法は、フランスの[[オーギュスト・ヴェルヌイユ]] ([[:en:Auguste Victor Louis Verneuil|Auguste Victor Louis Verneuil]]) が[[1903年]]に始めたことから、ヴェルヌイユ法([[ベルヌーイ法]]、[[:en:Verneuil process|Verneuil process]])ともいう。生成速度が早くコストが低い。
 
α-[[アルミナ]]ほかの微粉を酸水素炎中に降らせて液滴にし、それを台座の種結晶の上に垂らし、種結晶と同じ[[結晶方位]]に再結晶させ、台座を1時間に数mmの速度で下げて、長い単結晶に成長させる。その棒状の単結晶をブール (boule) と呼ぶ。成長に伴いできる線が同心円状にできるのが特徴。
 
=== フラックス法 ===
[[ミョウバン]]を濃く水に溶かし、その中に結晶の粒を吊しておくと、大きな単結晶に育ってゆく。これと同様な方法でコランダム単結晶を育てるのだが、アルミナは常圧下の水には溶けないので、融解した[[融剤|フラックス]]に溶かす。フラックスには[[フッ化鉛]]、[[酸化鉛]]などが用いられる。この方法によるコランダムは[[1960年代]]から製造されるようになった。
 
[[ルツボ]]中の原料を加熱してフラックスを融解し、1,000℃以上に保持してアルミナほかを溶かしたのち、1時間に数度の速度で冷却して過飽和状態にすると、約900℃でコランダムの単結晶が析出する。この方法は[[格子欠陥]]の少ないmm単位の単結晶の製造には適するが、実用的な宝石の大きさに育てるには時間がかかりすぎる。煙状の包有物から、天然物とは区別できる。
 
従来は長時間を必要としていたが数時間で天然ルビーと同じ構造の六方両錐結晶を、酸化[[モリブデン]]をフラックスとして用い約1,000℃でアルミナルツボ中で製造する方法を、[[信州大学]]の大石修治らの研究グループが2011年に開発した<ref>[http://saiplus.jp/special/2011/11/148.php 世界初!六方両錐の「人工ルビー」] 長野県のものづくりを応援する サイプラス</ref><ref>[http://www.kankyo.shinshu-u.ac.jp/~oishilab/index.html 信州大学 工学部 環境機能工学科] 大石・手嶋研究室</ref>。
 
=== 熱水法 ===
地殻内で起こっている熱水変質作用を人為的に行っているといってよい。
 
アルミナは1気圧の100℃の沸騰水には溶けないが、地殻内の1,000気圧以上、1,000℃以上の熱水には溶け、[[溶解度]]は温度が高いほど高く、溶けたアルミナは低温のところへ析出する。この環境を人為的に作る。[[オートクレーブ|高圧容器]]の中に水を入れ、原料のアルミナ他を沈め、種結晶を上から吊し、底から加熱すれば、原料は高温高圧の水に溶け、上部の低温の種結晶の表面に析出する。
 
方法自体は[[水晶]]合成のために[[1960年代]]に開発されたが、[[ルビー]]の場合はクロムの拡散が難しく、[[ニッケル]]を着色剤とすることで1990年代後半になって[[ロシア]]でようやく成功した。生成する単結晶は[[格子欠陥]]が少ないが、装置の構造が複雑で<!-- 面倒とは具体的にどうゆうこと? -->生成速度が遅いので、あまり行われない。包有物、赤外線吸収特性などにより天然物とは区別できる。
 
=== 引き上げ法 ===
[[半導体]]用の[[ケイ素]]単結晶の製造に広く行われるこの方法で、コランダムなどの単結晶を作ることもできる。これは[[ポーランド]]の[[ジャン・チョクラルスキー]]が[[1913年]]に開発したところから、[[チョクラルスキー法]]、CZ法とも呼ばれる。
 
ルツボに原料を入れて融解し、上から吊した種結晶を原料の液面に触れさせると、種結晶の方位の通りに液面が再結晶してゆく。適切な速度で結晶を引き上げて長い単結晶を作る。ただし、この方法でコランダムなどが作られたのは、[[1990年代]]の後半である。[[格子欠陥]]は少ない。
 
== 多結晶コランダム塊の製造法 ==
コランダムは硬いので、[[研磨剤|研磨材]]に使われる。また、耐火性が高いので、耐火物の原料にも使われる。天然のあるいは人造の単結晶のコランダムを粉砕しても、これらの目的に使えるが、高コストになる。そこで、mm単位以下の結晶からなる多結晶コランダムの塊が生産される。2大別できる。
 
=== 白色電融アルミナ ===
[[ボーキサイト]]を原料に[[バイヤー法]]で作ったバイヤーアルミナも、[[結晶構造]]は図2のコランダムだが、小麦粉のように細かい粉で、その粉1粒も10µm単位の微細な結晶の集まりで、[[研磨剤|研磨材]]には頼りない。
 
[[ファイル:Electric_Arc_Furnace.svg|thumb|200px|right|図3 アーク炉]]
雪は「かき氷」には頼りないから、一度融かして水にし、冷凍庫で氷にすればよいのと同じに、バイヤーアルミナを一度融かして固めればよい。融点2050℃のアルミナは図3のアーク炉で融かす。
 
垂直の3本の黒い丸棒は黒鉛電極である。電極の間に[[電圧]]をかけて[[アーク]]を飛ばしてアルミナを融かすと、電極と融けたアルミナとの間にアークが飛ぶようになる。トン単位のアルミナを融かしてから冷やし、多結晶の白いアルミナの塊を作る。
 
=== 褐色電融アルミナ ===
[[ボーキサイト]]を精製して作ったバイヤーアルミナを使わず、ボーキサイトをコークスおよび鉄屑とともにアーク炉で融解し、ボーキサイト中の[[シリカ]]、[[酸化鉄]]、[[酸化チタン(IV)二酸化チタン]]をいくぶん還元し、冷却凝固させた褐色の塊である。
 
原料に鉄屑を加えるのは、いくぶんの還元により生成する鉄-ケイ素合金の密度を上げて沈みやすくし、また、強磁性の組成にして、後の工程で磁力選別を可能にするためである。
 
白色溶融アルミナよりもアルミナ分は低く、黒褐色、不透明である。
 
== 用途 ==
天然から産出するコランダムのうち、美しいものは、磨いて、[[宝石]]、[[貴石]]に使われる。
 
人造の単結晶のコランダムは、固体[[レーザー]]、精密器械の軸受、[[ダイヤモンド類似石|合成宝石]]、[[模倣宝石|合成貴石]]などに使われる。[[レコード]]の針にも使われた。
 
アーク炉で作る多結晶の塊は、粉砕、精製、整粒して、[[研磨剤]]、耐火物原料などに使われる。重量で測る消費量は、これがもっとも多い。
 
== 参考文献 ==
* [[松原聰]] 『フィールドベスト図鑑15 日本の鉱物』 [[学研ホールディングス|学習研究社]]、2003年、ISBN 4-05-402013-5。
* [[国立天文台]]編 『[[理科年表]] 平成19年』 [[丸善]]、2006年、ISBN 4-621-07763-5。
 
== 脚注 ==
<references />
 
== 関連項目 ==