「古海卓二」の版間の差分

 
== 人物・エピソード ==
京都北野の「マキノ教育映画製作所」での第一回監督作品『小さな勝利者』は、長屋でのロケから始まった。子役主演の[[マキノ雅弘]]は姉役の女優と長屋で待機していて、段取りが済むと、獏監督は[[トーマス・栗原]]仕込みの英語で「レディー!(用意)」と叫んだ。雅弘はちょうど中学校で「レディー」が「婦人」だと習ったところだったので、姉役の女優に「あんた呼んではる」と云って慌てて外へ押し出した。女優は「なんです?」と獏に尋ね、監督は「馬鹿! 引っ込め!」と怒鳴って、この女優はびっくりして引っ込んだ。
 
再び外から「レディ!」と獏の怒鳴り声が聞こえ、雅弘は「お前や」と云ったが女優は「いやや」と云って出ていかなかった。すると次にまた監督の大きな声で「アクション!」と聞こえた。雅弘はこの言葉は習っていなかったが、獏与太平という監督がこんな風にやたらと英語で号令をかけようとは思いもよらなかったという。
 
最後に獏監督が「キャメラ・ゴー!」と叫ぶと、キャメラマンの橋本佐一呂(マキノ省三の兄の長男)と喧嘩になった。橋本は「キャメラはどこにも行かへんて! キャメラ・ゴー! なんちゅう大声出すな。キャメラはここにあるわい」と馬鹿にした口調で獏に云い、これに怒った獏は「やめた! 中止!」と叫んで脚本を地面に叩きつけた。橋本は「なんや、お前中止だけ日本語で云うんか」とせせら笑い、大騒ぎとなってマキノ省三の裁判が入った。省三はまず「この馬鹿! お前運動会やっててレディがわからへんのか」と雅弘を怒鳴りつけ、「レディは用意や。そやろが」と云い、「その次は、ハクションか」と訊いた。獏が「いえ、アクションです」と抗議すると「ええわい、ハクションにせい、ほてからハナ“かめら”やあ」と言ったので、周りにいた獏も内田吐夢も二川文太郎も吹き出してしまった。
 
続いて省三は獏に「一ってのは英語で何や」と訊き、獏が「ワンや」、「二は?」「ツー」「そんなら三は何ちゅうんや?」「スリー」と答えたところで省三が、「そやけどワン、ツー、スリーちゅうたら気が抜けるがな。ワン、ツーはええが、スリーは日本語でいけ。ワ、ツーやのホイ、アッ! これ!  これ!  これでいこう!」と云い出し、以来マキノではこの号令が定番となった。[[衣笠貞之助]]、[[稲垣浩]]両監督は終生この号令で通している<ref>『映画渡世・天の巻 マキノ雅弘伝』([[マキノ雅弘]]、平凡社)</ref>。
 
獏の没後一年に、長男・古海巨が遺稿集を編纂・発行した。巨は『聴力障害新聞』編集長等を歴任した編集者である。
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