「ガロア理論」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
→‎参考文献: 書誌情報を追加。
Sakayauchi (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
1行目:
'''ガロア理論'''(ガロア-りろん、<em lang="en">Galois theory</em>)は、[[代数方程式]]や[[体 (数学)|体]]の[[数学的構造|構造]]を "ガロア群" と呼ばれる[[群 (数学)|群]]を用いて記述する[[代数学]]の理論。
[[1830年代]]の[[エヴァリスト・ガロア]]による代数方程式の[[冪根]]による可解性などの研究に端を発するが由来数学的構造についての最も初期の研究であり、[[圏 (数学)|圏]]と[[関手]]の考え方を含む非常に現代的なパラダイムにもとづく理論と見なすこともできる。実際に
ガロアは、当時はまだ確立されていなかった群や体の考えを方程式の研究に用いていた。
 
ガロア理論によれば、"ガロア拡大" と呼ばれる[[体論|体の代数拡大]]について、
拡大の[[準同型|自己同型群]]の閉部分群と、拡大の中間体との対応関係を記述することができる。
 
== 概要 ==
ガロア理論では、加減乗除ができるような数の範疇での代数方程式を考察対象とする。
例えば、有理数や複素数の範囲で多項式で表わされる方程式の解を考えたり、
整係数の多項式で素数を法とした解を考えたりする。
 
代数方程式が "代数的に解ける" かどうか、
つまり係数に対する四則演算と根号の有限個の組合せで解が表せるかどうかが問題になる。
4 次までの代数方程式についてはこれが可能であり、
例えば二次の多項式 ''x''<sup>2</sup> &minus; 2''ax'' + ''b=0 の二つの根は
: <math> a \pm \sqrt{a^2 - b}</math>と表すことができる。
と表すことができる。一般的に、与えられた多項式 ''p''(以下技術的な仮定として ''p'' の分離性を仮定する)<!-- too techy? -->の根が(当該)多項式の係数の四則演算と冪根によって表せるかどうかは、係数の作る体 ''K'' の適当な[[冪根#冪根拡大|冪根拡大]]に根が含まれるかどうか、と言い換えることができる。別の見方をすれば、与えられた多項式の根を全て添加して、その上では多項式 ''p'' が一次式の積に分解するようにした体(多項式''p'' の'''分解体'''; ''splitting field'')''L'' が、体 ''K'' の冪根拡大になっているか、と定式化できる。
 
一般に、与えられた多項式 ''p''(以下技術的な仮定として ''p'' の分離性を仮定する)<!-- too techy? -->の根が(当該)多項式の係数の四則演算と冪根によって表せるかどうかは、
多項式''p'' を形式的に根の一次式の積として表す(実際、これは ''K'' を含む代数閉体上で可能になる)ことで 多項式''p'' の係数は根の[[対称式|基本対称式]]であること([[根と係数の関係]])が分かる。したがって拡大体 ''L'' の自己同型 &sigma; が根の入れ替えを引き起こしているときには &sigma; の下で多項式 ''p'' の係数や、より一般に ''K'' の元は変化しないことがわかる。一方、''K'' の元を不変にするような ''L'' の自己同型は多項式 ''p'' の根を入れ替えている。このような変換すべての集まり Gal(''L''/''K'') は変換の合成という二項演算について[[群 (数学)|群]]の構造を持っており、''L'' の ''K'' 上のガロア群または多項式 ''p'' のガロア群とよばれる。
係数の作る体 ''K'' の適当な[[冪根#冪根拡大|冪根拡大]]に根が含まれるかどうか。
 
と表すことができる。一般的に、与えられた多項式 ''p''(以下技術的な仮定として ''p'' の分離性を仮定する)<!-- too techy? -->の根が(当該)多項式の係数の四則演算と冪根によって表せるかどうかは、係数の作る体 ''K'' の適当な[[冪根#冪根拡大|冪根拡大]]に根が含まれるかどうか、と言い換えることができる。別の見方をすれば、与えられた多項式の根を全て添加して、その上では多項式 ''p'' が一次式の積に分解するようにした体(多項式''p'' の'''分解体'''; ''splitting field'')''L'' が、体 ''K'' の冪根拡大になっているか、と定式化できる。
仮に 多項式''p'' の根が係数の加減乗除やべき根による式で表せていたとすると、その式のうち一部分で表される数から生成するような体を考えることができ、こうして得られる体は ''K'' を含んで ''L'' に含まれる体(''L'' の部分拡大)となる。このとき、ガロア理論の主定理によってこの部分拡大をちょうど不変体にするような Gal(''L''/''K'') の部分群が存在する。''K'' の元 ''x'' の ''n'' 乗根は ''n'' 個あるが、それらすべてで生成されるような ''L'' の部分体は重要な役割を果たす。より一般に、体の拡大において、ある体上で既約な多項式の分解体となるという性質を正規性といい、中間体の正規性はガロア群の部分群が正規部分群であることに対応している。
 
多項式''p'' を形式的に根の一次式の積として表す(実際、これは ''K'' を含む代数閉体上で可能になる)ことで 多項式''p'' の係数は根の[[対称式|基本対称式]]であること([[根と係数の関係]])が分かる。
例えば、''L'' の正規部分拡大のうちで ''K'' の特定の元のべき根によって生成されるもの ''M'' の対称性を表す群 Gal(''M''/''K'') = Gal(''L''/''K'')/Gal(''L''/''M'') は[[巡回群]]になる。''L'' が ''K'' のべき根拡大になっているかどうかは群 ''Gal(''L''/''K'') '' が[[群 (数学)#可解群・交換子群・冪零群|可解群]]になっているかどうかと同値になる。このようにして分解体の自己同型を調べることで方程式の可解性について考察することができる。一方、最も一般的な設定の下では群 Gal(''L''/''K'') は ''n'' 次の[[対称群]]になる。特に、5 次以上の一般の多項式の対称性を表す 5 次の対称群は可解群ではなく、このことから 5 次以上の代数方程式は一般に可解でない(代数的な根の公式が存在しない)ことがわかる。
拡大体 ''L'' の自己同型 &sigma; が根の入れ替えを引き起こしているときには &sigma; の下で多項式 ''p'' の係数や、より一般に ''K'' の元は変化しないことがわかる。
 
一方、''K'' の元を不変にするような ''L'' の自己同型は多項式 ''p'' の根を入れ替えている。
このような変換すべての集まり Gal(''L''/''K'') は変換の合成という二項演算について[[群 (数学)|群]]の構造を持っいる。
これを、''L'' の ''K'' 上のガロア群または多項式 ''p'' のガロア群とよばれる。
 
仮に 多項式''p'' の根が係数の加減乗除やべき根による式で表せていたとすると、
その式のうち一部分で表される数から生成するような体を考えることができる。
こうして得られる体は ''K'' を含んで ''L'' に含まれる体(''L'' の部分拡大)となる。
このとき、ガロア理論の主定理によってこの部分拡大をちょうど不変体にするような Gal(''L''/''K'') の部分群が存在する。
''K'' の元 ''x'' の ''n'' 乗根は ''n'' 個あるが、それらすべてで生成されるような ''L'' の部分体は重要な役割を果たす。
より一般に、体の拡大において、ある体上で既約な多項式の分解体となるという性質を正規性といい、
中間体の正規性はガロア群の部分群が正規部分群に対応している。
 
例えば、''L'' の正規部分拡大のうちで ''K'' の特定の元のべき根によって生成されるもの ''M'' の対称性を表す群 Gal(''M''/''K'') = Gal(''L''/''K'')/Gal(''L''/''M'') は[[巡回群]]になる。
''L'' が ''K'' のべき根拡大になっているかどうかは
群 ''Gal(''L''/''K'') '' が[[群 (数学)#可解群・交換子群・冪零群|可解群]]になっているかどうか。
このようにして分解体の自己同型を調べることで方程式の可解性について考察することができる。
 
一方、最も一般的な設定の下では群 Gal(''L''/''K'') は ''n'' 次の[[対称群]]になる。
特に、5 次以上の一般の多項式の対称性を表す 5 次の対称群は可解群ではない。
このことから 5 次以上の代数方程式は一般に可解でない(代数的な根の公式が存在しない)。
 
=== より発展的な定式化 ===