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[[画像:Burne-Jones-le-Vampire.jpg|right|220px|thumb|吸血鬼: [[フィリップ・バーン=ジョーンズ]]画(1897)]]
[[ファイル:BramStoker.jpg|thumb|200px|ブラム・ストーカー]]
'''吸血鬼'''(きゅうけつき)は、[[民話]]や[[伝説]]に登場する、[[生命]]の源とも言われる[[血]]を吸い栄養源とする生き物。
{{文学}}
'''ブラム・ストーカー'''('''Abraham''' "Bram" '''Stoker'''、本名:エイブラハム・ストーカー、[[1847年]][[11月8日]] - [[1912年]][[4月20日]])はイギリス時代の[[アイルランド人]]の[[小説家]]。怪奇小説の古典、『[[ドラキュラ]]』で有名。『ドラキュラ』は[[吸血鬼]]ものの定番となった。
 
== 略伝概要 ==
[[ブラム・ストーカー]]の『[[ドラキュラ]]』、[[シェリダン・レ・ファニュ]]の『[[カーミラ]]』などにおいて登場してきた。[[生]]と[[死]]を超えた者、または生と死の狭間に存在する者、[[不死]]者の[[王]]とされる。
1847年11月8日、[[グレートブリテン及びアイルランド連合王国]]のアイルランド・[[ダブリン]]でアイルランド政庁の公務員である父母の3人目として生まれた。6人の兄弟がいる。病弱で7歳まで歩けなかった。16歳、ダブリン大学の[[トリニティ・カレッジ (ダブリン大学)|トリニティ・カレッジ]]に入学。[[オスカー・ワイルド]]と知り合いで、クリスマスにワイルドの両親に招かれた事もある(後にワイルドの恋人だった女優のフローレンス・アン・レモン・バルコムと結婚する)。
 
一般に吸血鬼は、一度死んだ人間がなんらかの理由により不死者として蘇ったものと考えられている。[[ヴァンパイア]]のイメージは、ヨーロッパの伝承に起源をもつものが強い。吸血鬼の伝承は世界各地で見られ、[[東ヨーロッパ]]のヴァンパイアに加え、[[アラビア]]の[[グール]]、[[中国]]の[[キョンシー]]等がある。この場合、吸血鬼という名称が用いられているが、人間の血を吸う行為は全ての吸血鬼伝承に共通するものではない。
劇に興味を持ち劇評を書いたりして[[ヘンリー・アーヴィング]]に知り合う。大学卒業後政庁に就職も文筆活動は継続。カレッジの先輩[[シェリダン・レ・ファニュ]]の女吸血鬼小説『[[カーミラ]]』を読む。30歳、アーヴィング劇団の秘書になった。アーヴィングのライシーアム劇場のビーフ・ステーキ・クラブの運営も手伝う。
 
43歳、アーヴィングの家でハンガリーのブダペスト大学の東洋言語学教授[[アルミニウス・ヴァーンベーリ]]に出会う。ある図書館で『ワラキア公国とモルダヴィア公国の物語』に「串刺し公」[[ヴラド・ツェペシュ]]の記述をみつけた。[[1897年]]に『ドラキュラ』を出版。ただちにアーヴィングが演劇化したこともあり、この小説はよく売れた。その収入はアーヴィングの死後、ライシーアム劇場が焼失した際の処分の為の費用に使われたという。1912年4月20日死去。74歳没。
 
== 子孫発祥 ==
[[意志#意志発動の障害|カタレプシー]](蝋屈症)を死亡と信じた人々によって[[埋葬]]され[[棺]]の中で[[蘇生]]した人や、[[死蝋]]など埋葬された時の条件によって腐りにくかった死体への[[錯誤]]、あるいは[[黒死病]]の蔓延による[[噂]]の流布により生まれたとされる
甥の孫にあたる[[デイカー・ストーカー]]は、『[[新ドラキュラ]]』を発表<ref>{{Cite news |title=新ドラキュラ(上)
=== 語源 ===
|url= http://www.mediafactory.co.jp/c000051/archives/031/007/31701.html|date=-- |newspaper=|publisher= |accessdate=2013-03-13}}</ref>。
諸説有るが、[[1730年代]]における[[英語]]の出版物に「Vampire(Vampyre)」の文字があるため、それ以前の時期から使われていた語とされている。一般的には[[リトアニア]]語の「Wempti(飲む)」由来とされる他、[[トルコ]]語の「Uber([[魔女]])」、[[セルビア・クロアチア語]]の「Pirati(吹く)」も提唱される。
 
ただし「ヴァンパイア」という言葉が一般的に使用されるようになる以前から世界各地に[[伝説]]があり、それぞれの名前で呼ばれている
== 作品リスト ==
[[image:Dracula1st.jpeg|150px|thumb|『ドラキュラ』の表紙(1897年)]]
* ドラキュラ
* ドラキュラの客 ⇒ 映画『'''[[女ドラキュラ]]'''』( 原題:''Dracula's Daughter'' ) (1936)
* 判事の家
* 牝猫
* 金髪
* 蛇の道
* 日没の下
* ヘンリー・アーヴィングの思い出
 
日本においては、人型の異形の存在全般について[[鬼]]とする語彙が有り、血を吸う異形の存在であるヴァンパイアの日本語訳として吸血鬼という名称が作られた。
== 関連書 ==
* 桂千穂 訳『ドラキュラの客』 国書刊行会
 
== 脚注伝承の吸血鬼 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
 
古くから血液は生命の根源であると考えられており、死者が血を渇望するという考えも古くから存在する。例えば[[アステカ]]では人間の心臓と血液を捧げる血の儀式があり、[[キリスト教]]では血が神聖視され、[[古代ギリシア]]に書かれた[[オデュッセイア]]では、オデュッセウスが[[降霊術|降霊]]の儀式を行う際に生け贄の子羊の新鮮な血を用いるくだりがある。このようなイメージが吸血鬼を生み出したと考えられる。
==関連項目==
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{{Commons|Bram Stoker}}
{{Commonscat|Bram Stoker}}
*[[ブラム・ストーカー賞]]:アメリカ・ホラー作家協会が選ぶ、その年にもっとも大きな業績を残したホラー小説に与えられる賞
 
=== 吸血鬼の姿 ===
'''ぶよぶよした血の塊のようなもの'''であるか、もしくは生前のままであるとされることが多い。両者とも、一定の期間を経れば完全な人間になるとされることもある。また、様々な姿に変身することが出来るとされる。吸血鬼は、虫に変身する、[[ネズミ]]に変身する、[[霧]]に変身するなどの手段を用いて[[棺]]の隙間や小さな穴から抜け出し、真夜中から夜明けまでの間に活動するものとされた。また、地域によって異なるが、特定の[[月齢]]や[[曜日]]、キリスト教の祭日などの日には活動できないとされる場合が多い。吸血する際は、長い牙が出現するとされている。また、最近では、獲物である人間を惹きつけるために、美しい容姿を持つとされることが多い。
 
=== 吸血鬼となる理由 ===
{{DEFAULTSORT:すとおかあ ふらむ}}
死者が吸血鬼となる場合は、生前に[[犯罪]]を犯した、神や信仰に反する行為をした、惨殺された、事故死した、[[自殺]]した、葬儀に不備があった、何らかの悔いを現世に残している、などの例が挙げられる。また、これらの理由以外にも、まったく不可解な理由によって吸血鬼になることもあるとされた。そのため吸血鬼の存在が強く信じられた地域では、墓に大量の黍を捲く、にんにくを置く、茨を置く、一定期間墓の周りで火を焚き続ける、などの予防措置がほぼ全ての死者に対して行なわれた。
[[Category:アイルランドの小説家]]
 
[[Category:ダブリン出身の人物]]
吸血鬼がその活動によって与える害悪としては、眼を見る・名前を呼ぶ・何らかの方法により血や生気を吸うなどの手段により人を殺す、家畜を殺したり病気にする、家屋を揺さぶる、生前の妻と[[同衾]]し子供を産ませるなどの例がある。
[[Category:1847年生]]
 
[[Category:1912年没]]
最近では、吸血鬼に生き血を吸われた人間や、吸血鬼に殺された人間が吸血鬼になるとされることも多い。
[[category:ドラキュラ]]
 
=== ヨーロッパの伝承 ===
ドイツでは[[胞衣]]を纏ったまま生まれた者は死後ナハツェーラーと成ると言われる。ヨーロッパにおいて吸血鬼伝承の多くが残る地域は[[バルカン半島]]の[[スラヴ人]]地域であるが、伝承そのものは、ほぼヨーロッパ全土に存在し、東は[[アナトリア半島]]・[[カフカス]]・[[ヴォルガ川]]沿岸地域にまで確認することが出来る。[[ギリシャ]]の[[ラミアー]]は、ラテン語に入ってから女吸血鬼全般を意味するようにもなった。また[[ロシア]]ではウプイリという、人間の顔をした巨大[[コウモリ]](美男や美女に変身できる)が伝承されている。
 
スラブの人々は4世紀ごろには既に吸血鬼の存在を信じていた。スラヴの民話によると、吸血鬼は血を飲み、銀を恐れる(ただし銀によって殺すことはできない)とされた。また首を切断して死体の足の間に置いたり、心臓に杭を打ち付けることで吸血鬼を殺すことができると考えられていた。
 
現在の吸血鬼に対する考え方は古代ルーマニアから続いているものである。古代ルーマニアは古来からの宗教や文化が、キリスト教やスラヴ民族と混ざりあう過程を経験した。異なる宗教と文化における矛盾、外からの人々の流入により新たな疫病が持ち込まれ不可思議な死が増加したことに対する答えとして吸血鬼伝承が生まれたと考えられている。この民話では吸血鬼によって殺された者は吸血鬼として復活することになっており、何らかの手段で殺されるまで新たな吸血鬼を増殖させることになる。この段階では吸血鬼は知性のない動物のような悪魔として扱われている。
 
 
=== その他の伝承 ===
[[マレーシア]]では[[空]]を飛ぶ頭と首の[[ペナンガラン]](宗教的な[[苦行]]の最中に誤って首を切り落とした女性が成る)、[[インドネシア]]では[[強姦]]されて[[妊娠]]した女性が甦り、男性の血を吸うスンダル・ボロンが伝えられている
 
=== 吸血鬼退治 ===
吸血鬼の存在を信じていた人々にとっては現実に差し迫った脅威であり、とくに農村部などにおいては、不可解な事件が発生した際に、多くの吸血鬼退治が現実に行なわれた。この吸血鬼退治は、ごくわずかではあるが20世紀になってからも行なわれたことが資料によって確認されている。
 
具体的な退治方法としては、首を切り落とす、心臓に杭を打つ、死体を燃やす、[[銀の弾丸]]もしくは呪文を刻んだ弾丸で撃つ、などの方法が挙げられる。また、葬儀をやり直す、死体を聖水やワインで洗う、呪文などを用いて壜や水差しに封じ込める、などの死体を損壊しない方法がとられることもあった。
 
吸血鬼退治は、聖俗の両権力から不当に死体を損壊する不道徳な行為であると考えられていたらしく、吸血鬼退治に関する禁令が出ることもしばしばであり、少なくとも近世以降は、吸血鬼という概念は知識階層にはあまり真に受けられるものではなくなっていたことが窺える。ただし農村部などでは、農民の反発を恐れた地方領主や役人が吸血鬼退治を看過することはとくに珍しいことではなく、禁令はたいていの場合無視されていた。
 
=== 現代の吸血鬼事件 ===
21世紀になった現代でも、一部の地域では吸血鬼の話が色濃く残っている。
 
2004年1月、ルーマニア南部の寒村で、76歳で他界したペトラ・トーマンが、埋葬後に親族の男性6人によって掘り起こされ、心臓を切り取られるという事件があった。もちろん、現代では犯罪であり、数日後、警察によって捜査、立件された。ペトラ・トーマンは生前は村人に親しまれ尊敬された人物であった。しかし、死後、親族がペトラ・トーマンがよみがえって血を吸った夢を見たといい、また、親族の数人が病気になった。このため、親族の一部はペトラ・トーマンが吸血鬼になったと信じ、前述の凶行に及んだ。切り出した心臓を焼いて灰にし、その灰を病気になった親族に飲ませたところ、悪夢もみなくなり、病気も全快したと犯行に及んだ親族は主張した。
 
このように一族や地域に病気が発生したとき、その原因を一族の死者に求める民俗はヨーロッパに広く見られる。死者の復活を防止するために心臓を抜き出して焼き、死者の首を切断したり、歩けないように足を折って足の位置を変える(足を胸の上に置くなど)、焼いた心臓の灰を病気になった人に飲ませるなどの行為を行う。ヨーロッパだけでなく、ヨーロッパからの移民が多いアメリカでも19世紀までしばしばこうした行為が行われた。
 
== 現代の吸血鬼像 ==
腕力は人間を遥かに超え、体の大きさを自由に変えたり、[[コウモリ]]や[[狼]]などの動物、[[霧]]や[[蒸気]]に変身でき、どんな場所にも入り込む。また、[[催眠術]]や[[フクロウ]]、コウモリ、狼、[[狐]]、[[昆虫]]といった動物、[[自然現象]](特に[[嵐]]や[[雷]]など)を操る。[[トランシルヴァニア]]の伝説を元にした『[[ドラキュラ]]』は現代の吸血鬼のイメージに強い影響を及ぼしており、従って東ヨーロッパの吸血鬼は現代のそれに近い。『ドラキュラ』の登場人物の一人である[[ヴァン・ヘルシング]]教授は、吸血鬼を「怪力無双、変幻自在、神出鬼没」と称する
* ドラキュラのモデルは、ルーマニアの[[トランシルバニア]]地方出身の15世紀の[[ワラキア]]公[[ヴラド・ツェペシュ|ヴラド3世]](ヴラド・ドラキュラ或いはヴラド・ツェペシュ)と言われているが、この小説が初めてルーマニア語に翻訳されたのは1990年であり、それまで、地元ではヴラド・ドラキュラ公やドラキュラ伯爵は無名の存在だった。なお、実際のトランシルバニアのヴラド一族の領地一帯には吸血鬼伝説はない。また、原作中に言及のあるドラキュラ伯の素性にも史実のヴラド公を思わせるものはなく、ストーカーは単にドラキュラという名前だけを拝借したものと思われる。(ストーカーは[[アイルランド]]人であり、「人の生き血を吸う貴族」というのはかなり意味深な暗喩である)。
概して以下のような特徴を持つと言われている。
* [[燕尾服]]もしくは[[テールコート]]に[[シルクハット]]を被り、赤い勲章を下げ、立襟の黒[[マント]](裏地は赤)を羽織り、翻している古典的なヨーロッパ貴族のような姿が広く有名である。転じて、品が良く高貴なイメージが強い。
* 痩身で肌が青白い。
* 餌である人間を惹きつけるため、美しい容姿をした姿で描かれることが多い。
* 棺桶の中で眠る。
* [[赤ワイン]]や[[バラ|薔薇]]が[[血液]]の[[比喩]]として用いられる事がある。
* [[鏡]]に映らない。
* [[コウモリ]]、[[オオカミ]]、[[霧]]、鼠などに変身出来る。
** 銀が弱点の場合は、銀製ではない武器が一切効かないこともある。
**[[ニンニク]]は[[エジプト]]では広く[[悪]]に対して効果があると伝承されており、それが世界各地に広まった。[[中国]]や[[マレーシア]]では[[額]]に、[[フィリピン]]では[[脇の下]]に擦り込み、[[スラブ]]では[[ドア]]や[[窓]]、[[首]]にかける
* 太陽の光にあたると灰になってしまう。
** 十字架、銀の様に強大な吸血鬼には効かない場合もある。
* [[蝋燭]]、[[香]]、[[ヒイラギ|柊]]、窓や扉に置いた[[ケシ]]の[[種子|種]]・[[麦]]・[[雑穀]]・[[漁網]]は厄避けになると言われる。
*:種などを見るとその粒を集めなければ気が済まない、[[縄]]の[[結び目]]を解こうと躍起になるという習性を利用したものとされる
* 杭を[[心臓]]に打ち込めば[[死亡]]する。
* [[牙]]が大きく、鋭い。
* 血を吸う相手の首筋に牙を当て、血を吸う。血を吸うときは、瞳が赤く光る。
* [[川]]などの流れる水を越える事ができない(空を飛ぶ動物に変身していたり、[[橋]]や[[ボート]]等があれば別)。
* 初めて訪問した家では、その家人に招かれなければ侵入できない。
* 吸血鬼に血を吸われ死んだ人や、吸血鬼の血液が体内に入った人は、吸血鬼になる。また、血を吸われなくても吸血鬼に殺されれば吸血鬼になる。ただし、吸血鬼に愛された人物は不死能力などを得るだけにとどまる。
* 性別に関係なく、女性を好んで襲う傾向にある。
* 一時的な暗示をかける[[魔眼]]をもっている。
* 魔法や魔術の類を操ることができる。
* 血を吸われる相手には性的な[[快楽]]がある。