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'''ブルガダ症候群'''(ブルガダしょうこうぐん、{{lang-en-short|Brugada syndrome}})は、[[1992年]]に[[スペイン]]人医師ペドロ・ブルガダとその兄弟によって報告された心疾患<ref>Brugada, P.; Brugada, J. (1992). "Right bundle branch block, persistent ST segment elevation and sudden cardiac death: a distinct clinical and electrocardiographic syndrome. A multicenter report." ''J. Am. Coll. Cardiol.'' '''20'''(6):1391–6. PMID 1309182</ref>で、疾病名は最初の報告者名に由来する。'''ブルガーダ症候群'''とも呼ばれる。重篤な[[不整脈]]である[[心室細動]]により失神し、死に至る場合がある。
 
== 概要 ==
[[心筋梗塞]]、[[狭心症]]、[[心不全]]等の所見が認めなれないのに[[心室細動]]を生じる疾患で、夜間に心室細動の発作を起こすことが多いとされている。多くの場合は一過性の心室細動を生じるだけで元々の正常な脈拍に戻り、一時的な症状で終わる。しかし、希に重篤な[[不整脈]]である心室細動により失神し、死に至る場合がある<ref name="DCMO">[http://cardio.icn.jp/modules/page/shokogun.html ブルガダ症候群/QT延長症候群/突然死症候群] 岡山大学循環器内科</ref>。心室細動の他に発作性[[心房細動]]を来すこともある。失神や心停止蘇生や心室細動の既往歴のある群と、全く症状を有しない群に分けられ、それぞれ、'''症候性ブルガダ症候群'''(有症候群)と、'''無症候性ブルガダ症候群'''(無症候群)に分類される。
心筋細胞の[[細胞膜]]上にあるナトリウム・チャンネルのαサブユニットをコードしている[[遺伝子]]の変異に原因がある例が認められる。問題の遺伝子SCN5Aは第3[[染色体]]の短腕 (3p21) 上に位置する。遺伝子の変異により右室心外膜における[[活動電位]]時間が著明に短縮し、貫壁性の再分極状態のばらつきが大きくなるため、心室細動を起こしやすくなると考えられている。変異したナトリウム・イオンチャンネルがアンキリン-Gと結合できないため、心臓活動電位が変化すると考えられている。アンキリン-Gは、細胞骨格とイオンチャンネルの相互作用を調停する膜骨格[[タンパク質]]である。なお遺伝子の変異は、常染色体優性で遺伝する。しかし、遺伝子異常は検索されても20%程度のみにしか認められず、すべての症例がSCN5Aの異常で説明されるわけではない。
 
また、発作を起こす危険性の高い人を確実に見分ける検査方法は確立されていないが、他の心疾患のような運動制限は不要である。
[[Image:Brugada EKG Schema.jpg|right|250px|thumb|ブルガダ症候群に見られる心電図の波形 A:健康な心臓 B:ブルガダ症候群 V2ではST上昇(赤矢印)がはっきり現れている]]
[[心電図]]で、典型的には[[右脚ブロック]]様波形(V1,2のrSR’パターン)とV1~V3にかけてのcoved型、またはsaddleback型のST上昇を来す。心室細動の他に発作性[[心房細動]]を来すこともある。[[自律神経]]の影響から夜間に突然死することもある。
 
[[キャリア]]の90%が男性で、1000人に1〜2人の割合で存在する。発作は[[心室細動]]で[[自動の発作がいつ起こるか解らないため、外式内埋め込み型除細動器|AED]]体外用除細動器)または[[植え込み型除細動器|ICD]](体内埋め込み型除細動器などの電気ショックで回復する。心室細動の発作がいつ起こるか解らないため、ICDの利用が多くなってきている。しかし、ICDは[[電磁波]]によって誤作動の危険性もあり、社会的な環境保全が待たれる。また、電子調理器盗難防止用電子ゲート大型のジェネレーターなどが誤作動を誘発する恐れがある。
<!--[[2002年]]の[[高円宮憲仁親王]]の急死が引き金となり、全国でAEDの設置が進められている。-->
 
現在無症状であっても45歳以下の突然死の家族歴、失神発作、夜間苦悶様呼吸の既往を有する場合は、当該疾病を疑い精密検査をすべきであるとの見解もある<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/47/1/47_1_33/_article/-char/ja/ ブルガダ型心電図を呈した症例の検討(健康診断時の対応)] 産業衛生学雑誌 Vol.47 (2005) No.1 P33-39</ref>。
== 疫学 ==
 
* Brugada症候群での不整脈イベントの発生は30~50歳で多いことが疫学調査から知られている。
== 臨床像 ==
* Brugada症候群をもち不整脈イベントを起こす患者の90%を男性が占める。
アジア人の30代から50代の男性に多く発症する。男女比率は9:1で、無症状の有所見者が心室細動を起こす可能性は、100人中、2年に1人程度とされている<ref name="DCMO"/>。多くは、無症候性と考えられるが、無症候群では突然死などのイベント発生率が年0.3 - 4.0%であるのに対し、有症候群はイベント発生率が年10 - 15%と報告されている。前駆症状を伴わない失神発作が初発症状。
 
日本に於ける、突然死症候群のうち'''ぽっくり病'''の主要疾病と考える研究者もいる<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/7/100_2036/_article/-char/ja/ 健診で心電図異常を指摘された34歳の男性] 日本内科学会雑誌 Vol.100 (2011) No.7 p.2036-2038</ref>。
 
後述の様な特徴的な[[心電図]]が現れる。
 
== 疫学原因 ==
心筋細胞の[[細胞膜]]上にあるナトリウム・チャンネルのαサブユニットをコードしている[[遺伝子]]の変異に原因がある例が認められる。問題の遺伝子SCN5Aは第3[[染色体]]の短腕 (3p21) 上に位置する。遺伝子の変異により右室心外膜における[[活動電位]]時間が著明に短縮し、貫壁性の再分極状態のばらつきが大きくなるため、心室細動を起こしやすくなると考えられている。変異したナトリウム・イオンチャンネルがアンキリン-Gと結合できないため、心臓活動電位が変化すると考えられている。アンキリン-Gは、細胞骨格とイオンチャンネルの相互作用を調停する膜骨格[[タンパク質]]である。なお遺伝子の変異は、常染色体優性で遺伝する。しかし、遺伝子異常は検索されても20%程度のみにしか認められず、すべての症例がSCN5Aの異常で説明されるわけではない<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo1969/35/6/35_459/_article/-char/ja/ 堀江 稔:研究会 第37回理論心電図研究会 テーマ : 心筋のCaハンドリング Brugada症候群とナトリウム・チャネル遺伝子異常] 心臓 Vol.35 (2003) No.6 p.459-464</ref>
 
=== 心電図 ===
[[Image:Brugada EKG Schema.jpg|right|250px200px|thumb|ブルガダ症候群に見られる心電図の波形 A:健康な心臓 B:ブルガダ症候群 V2ではST上昇(赤矢印)がはっきり現れている]]
[[心電図]]で、典型的には[[右脚ブロック]]様波形(V1,2のrSR’パターン)とV1~V3にかけてのcoved型、またはsaddleback型のST上昇を来す。心室細動の他に発作性[[心房細動]]を来すこともある。[[自律神経]]の影響から夜間に突然死することもある
{{-}}
 
== 治療 ==
唯一有効な治療方法は、対症療法としての[[自動体外式除細動器|AED]](体外用除細動器)または[[植え込み型除細動器|ICD]](体内埋め込み型除細動器)が選択される。
 
薬剤による発症抑制および治療方法は確立していなが、発作予防の薬剤として、イソプロテレノールという交感神経刺激剤を点滴、シロスタゾールの内服など。抗不整脈薬として、発作頻度を減らすためにキニジン<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/67/5/67_5_299/_article/-char/ja/ ブルガダ症候群での心室細動誘発に対するキニジン静脈内投与による抑制効果] 日大医学雑誌 Vol.67 (2008) No.5 P299-303</ref>、ジソピラミド、ベプリジルが用いられることがある。
 
家族歴や有症候群の場合は、植え込み型除細動器の使用が推奨される。
 
禁忌薬として、抗不整脈薬、抗うつ薬。
 
==参考文献==
{{Reflist|2}}
 
== 外部リンク ==
* {{PDFlink|[http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2007_ohe_h.pdf QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン(2007年改訂版)]}} 日本不整脈学会
[http://www.udatsu.vs1.jp/Bru-new-top.htm 徳島大学名誉教授 森博愛によるBrugada症候群の解説]
* [http://www.nanbyou.or.jp/entry/2390 循環器系疾患分野 Brugada症候群(ブルガダ症候群)] 難病情報センター
* [http://www.udatsu.vs1.jp/Bru-new-top.htm 徳島大学名誉教授 森博愛によるBrugada症候群の解説]
* [http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000656.html ブルガダ(Brugada)症候群] 慶應義塾大学病院
* [http://meddic.jp/ブルガダ症候群 ブルガダ症候群]
* [https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo1969/37/Supplement3/37_142/_article/-char/ja/ 第17回 心臓性急死研究会 ブルガダ型心電図症例における心室細動(VF)誘発性と臨床的危険予測因子の比較検討] 心臓 Vol.37 (2005) No.Supplement3 p.142-146
* [https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/68/5/68_5_290/_article/-char/ja/ ブルガダ症候群における心房細動の発生機序に関する検討] 日大医学雑誌 Vol.68 (2009) No.5 P290-296
* [http://circ.ahajournals.org/content/105/6/702.full.pdf+html Wichter, T. et al. Clinical investigation and reports: cardiac autonomic dysfunction in Brugada syndrome. Circulation 2002;105:702-706]
 
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