「線型写像」の版間の差分

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定義について整理した。
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== 概要 ==
体 F 上の線型空間を V , W とする。V , W 間の写像 f : V → W が
[[関数解析]]の分野では、(特に無限次元空間上の)線型写像のことを「'''線型作用素'''」(せんけいさようそ、{{lang-en-short|''linear operator''}})と呼ぶことも多い。スカラー値の線型写像はしばしば「[[線型汎関数]]」もしくは「'''一次形式'''」(いちじけいしき、{{lang-en-short|''linear form'', one-form}}; 線型形式; 1-形式)とも呼ばれる<ref group="注">一次の微分形式([[一次微分形式]]もしくは微分一次形式; differential one-form)を単に「一次形式」または「1-形式」(one-form) と呼ぶこともある。これとの対照のため、本項に云う意味での一次形式を「代数一次形式」(albegraic one-form) と呼ぶ場合がある。</ref>。
:f( '''u''' + '''v''' ) = f('''u''') + f('''v''') ('''u''' , '''v''' &isin; V)
:f( c・'''u''' ) = c・f('''u''') ('''u''' &isin; V , c &isin; F)
上記を満たすとき<ref>この二性質を合わせて[[線型性]]と呼び、また有限個のスカラー &lambda;<sub>''i''</sub> とベクトル ''v''<sub>''i''</sub> に対して
: '''線型性''': <math>f(\lambda_1v_1+\lambda_2v_2+\cdots+\lambda_rv_r)=\lambda_1f(v_1)+\lambda_2f(v_2)+\cdots+\lambda_rf(v_r)</math>
のような形で言及されることもある。
</ref> f を'''線型写像(linear map)'''と呼ぶ。特に f : V → V と定義域と値域が同一の線型空間である線型写像を'''線型変換(linear transformation)'''と呼ぶ<ref>このような区別をつけず、定義域と値域が異なっていても線型変換と呼ぶことも多い。</ref>。
さらに、F 上線型空間から F への線型写像のことを'''線型関数(linear function)'''と呼ぶ。
 
[[関数解析]]の分野においては、[[Lp空間|L<sup>p</sup>空間]]<ref>[[Lp空間]]は[[バナッハ空間]]である。内積を定義していれば[[ヒルベルト空間]]となる。</ref>の間の線型写像のことを'''線型作用素(linear operator)'''と線型関数のことを[[汎関数|汎関数(functional)]]<ref>または線型汎関数。</ref>と呼ぶ。
 
'''線形'''等の用字・表記の揺れについては[[線型性]]を参照。
 
== 定義 ==
''V'' と ''W'' とを同じ[[体 (数学)|体]] ''F'' の上の[[ベクトル空間]]とする。''V'' から ''W '' への[[写像]] ''f'' が、任意のベクトル '''x''', '''y''' &isin; ''V'' と任意のスカラー ''c'' &isin; ''F'' に対し、
# [[加法的関数|'''加法性''']]: ''f''('''x''' + '''y''') = ''f''('''x''') + ''f''('''y''')
# [[斉次関数|'''斉一次性''']]: ''f''(''c'''''x''') = ''cf'' ('''x''')
をともに満たすとき<ref group="注">加法性から斉一次性が従うベクトル空間もあるが、一般にはそのようなことは期待できない。例えば、実数の全体 '''R''' は無限次元 '''Q'''-線型空間とも一次元 '''R'''-線型空間とも見做すことができるが、'''R''' 上の加法的関数は必ず '''Q'''-線型写像となり、しかし必ずしも '''R'''-線型でない(この場合はさらに[[連続関数|連続性]]を仮定すれば '''R'''-線型になる)ことが示される。つまり一般には「加法性」と「斉一次性」は独立した制約条件である。</ref>、''f'' を ''F'' 上の'''線型写像''' または簡単に ''F''-線型写像という。考えているベクトル空間および線型写像がどの体上のものであるかが明らかなときには、省略して単に「 ''f'' は ''V'' から ''W'' への線型写像である」などということもある<ref group="注">考えている係数体が何であるかは線型性にとって重要である。例えば、[[複素数]]全体の成す体 '''C''' は '''C''' 上一次元のベクトル空間であるとともに、'''R''' 上二次元のベクトル空間でもある。各複素数に対し、その[[複素共軛]]をとる操作は '''C''' 上の '''R'''-線型変換であるが、しかし '''C'''-線型ではない。</ref>。
 
上記の二性質を合わせて[[線型性]]と呼び、また有限個のスカラー &lambda;<sub>''i''</sub> とベクトル ''v''<sub>''i''</sub> に対して
: '''線型性''': <math>f(\lambda_1v_1+\lambda_2v_2+\cdots+\lambda_rv_r)=\lambda_1f(v_1)+\lambda_2f(v_2)+\cdots+\lambda_rf(v_r)</math>
のような形で言及することもある。
 
== 例 ==