「学校群制度」の版間の差分

*[[1967年]] - [[東龍太郎]]都知事時代、[[小尾乕雄]]（おびとらお）[[教育長]]の主導によって[[都立高等学校|都立高校]]入試に学校群制度が採用されることとなった。[[1966年]]4月に同制度の構想を公表、7月に導入を正式決定、1967年2月に同制度による第1回入試を実施と、構想の公表から入試実施まで1年足らずであった。詰込教育批判への対応から学力試験の科目数が9科目から3科目へと削減され、9科目の[[調査書 (進学と就職) |内申]]と学力試験とを実質的に同等に評価することとなった。同時に、第二志望を認めるしくみをなくし、不合格者は学区内での成績いかんにかかわらず都立高へは進学させないこととなった。学校群制度は[[美濃部亮吉]]都知事時代にそのまま引き継がれ、[[鈴木俊一 (東京都知事)|鈴木俊一]]都知事時代の[[1981年]]まで存続した。

**制度導入の背景として、受験戦争の過熱があった。とりわけ、旧制時代の[[ナンバースクール (東京都)|ナンバースクール]]をはじめとする名門校には、希望者が殺到していた。住民票を当該校学区内に移しての[[越境入学]]が常態となり、都民からは不満の声が上がっていた<ref name="kousatsu">『東京都立高校における学校群方式入試制度の考察』（伊藤純、1971年）</ref>。

**学校群編成にあたり、旧制中学系と旧制高女系の一流校は基本的に同一の群とされ、名門校の温存が図られた。その結果、学校群内の学力は均質になったものの、今度は学校群間に格差が発生した。第二志望が認められなくなったため、高学力の難関学校群不合格者はいわゆる[[併願受験|滑り止め]]高などの私立高校へ流出することとなった。また、もともと校風の全く異なる学校（学校群以前において、旧制中学系高校は男子、高女系は女子の定員比率が高く設定され、旧制以来の校風が残されていた）同士を組み合わせたため、本来の志望校以外に振り分けられた場合の違和感は大きく、多くの都立棄権者を出すことになった<ref name="kousatsu"/>。

**学校群制度は、その内容から俗に「[[東京都立日比谷高等学校|日比谷]]潰し」と称された。同校は[[東京都立九段高等学校|九段]]及び[[東京都立三田高等学校|三田]]と学校群「11群」を形成したが、（1）他の主要学校群がおよそ二校なのに比して三校で群を形成、（2）受験生の意思による単独での学校選択が出来なくなったこと（その他に部活動に関しても、入学後は野球をする意志のある者は当時野球部が存在しなかった三田には入学しないであろう<ref>『愉快に日比谷高校』 （[[久野猛]]、[[日本加除出版]]、2001年4月）</ref>）、（3）住民抄本提出の義務等など学区外からの越境入学が難しくなり受験出来る者が限られたこともあり、志願者層の変化が起こったこと、（4）[[1965年]]の進学指導中止を申渡す「第1次小尾通達」もあり、[[学園紛争]]の影響下、都立各校では進学指導を中止する動きが広まったことや補習科の廃止など、教える側の熱意が奪われたこともあり教育内容面での変化も起きたこと、（5）[[新中間層]]の出現など大衆受験社会の到来もあり時代的に国私立の中高一貫校の台頭など進学ルートの多様化が既に見られたことなど、その他の要因（学校個々の[[文化資本]]、[[ドーナツ化現象]]etc）もあるにせよ東大合格者数トップの座を失い、以後も同じ都立高である[[東京都立西高等学校|西]]や[[東京都立戸山高等学校|戸山]]等と比較しても急速に東大合格者数上位校からもその名が消えることになった。