「ペプチド固相合成法」の版間の差分

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'''ペプチド固相合成法'''(-こそうごうせいほう、英:Solid-phase peptide synthesis、SPPS)は研究室で[[ペプチド]]及び[[タンパク質]]を化学的に合成する際に、一般的に用いられる方法のひとつ。表面を[[アミノ基]]ある修飾した[[ポリスチレン]]製のビーズなどを固相として用い、ここから[[脱水反応]]によって1つずつ[[アミノ酸]]鎖を伸長していく目的とするペプチドの配列が出来上がったら固相合成法では表面から切り出し目的の物質を得る。バクテリア中で合成させることの難しい[[リボソームペプチド]]の合成、[[D体]]や[[重原子]]置換体などの非天然[[アミノ酸]]の導入、ペプチド及びタンパク質[[主鎖]]の修飾、D体のアミノ酸を用いたDタンパク質の合成なども可能である。
 
ペプチド固相合成法は[[ロバート・メリフィールド]]が研究の先駆けとなった。固相合成法では各ステップでかなりの高収率で目的物を得る事が、圧倒的に重要となってくる。例えば各ステップで99%の収率だった場合、26個のアミノ酸が結合したペプチドの最終的な収率は77%である。一方各ステップで95%の収率だった場合、同じものを合成したときの最終的な収率は25%である。このため各段階でかなりの過剰量(2~10倍)のアミノ酸を用い、またカップリングに用いるアミノ酸自体も特徴的な修飾がされることにより非常に最適化されている。
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またペプチド合成の難しさは配列にも依存する。例えば典型的なアミロイドペプチドやアミロイドタンパク質は合成が難しい。
 
== 合成手順 ==
固相合成法に用いる[[保護基]]は'''FMOC'''と'''t-BOC'''の2つが主流である。[[リボソーム]]上でのタンパク質合成とは異なり、固相合成法ではC末端側からN末端側へ向かって合成が進められる。モノマーのアミノ酸のN末端には前述した保護基で保護されており、これが脱保護されたポリペプチド鎖に結合される。
[[リボソーム]]上でのタンパク質合成とは異なり、固相合成法ではC末端側からN末端側へ向かって合成が進められる。すなわち、固相表面のアミノ基はアミノ酸の[[カルボキシル基]](C端側)と反応し、ペプチド結合を形成する。ただし、普通のアミノ酸はそれ自身アミノ基を持つため、そのまま使用すると更に別のアミノ酸のカルボキシル基と反応し、結果としてアミノ酸の[[ポリマー]]が生成してしまう。このため、固相合成を行う際は、反応剤として使うアミノ酸はアミノ基を[[保護基]]で保護しておく必要がある。ペプチド固相合成においては、アミノ基の保護として'''FMOC'''と'''t-BOC'''がよく使用される。また、[[アミド]]の反応収率を高くするために、HOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)やPCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)が使用されることも多い。
 
固相表面とアミノ酸との反応が終了したら、固相を溶媒でよく洗って残ったアミノ酸などを除去する。この後、固相に結合しているアミノ酸の保護基を除去(脱保護)すると、次の反応点となるアミノ基が再び固相表面に出現する。使用するアミノ酸を順次変更しながらこの手順を繰り返すことで、目指す配列をもつペプチドを精度よく合成することができる。なお、現在ではこの手順は自動化され、自動合成機が使用可能となっているが、手動での固相合成を行っている研究室も多い。
どちらの場合も自動合成機が使用可能であるが、多くの研究室では手動での固相合成を行っている。
 
==FMOC合成法==