「ホスバッハ覚書」の版間の差分

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ニュルンベルク裁判においてゲーリングは、ヒトラーは陸軍の軍備拡大のペースが遅いブロンベルクに不満を持っており、緊迫した外交情勢を説明することで軍備拡大の必要性を示し、「はっぱをかける」ために会議を行ったと証言している{{sfn|堀内直哉|2006|pp=53}}。
 
 
== 会議 ==
11月5日の午後4時15分、総統官邸の会議室において会議が開催された{{sfn|堀内直哉|2006|pp=55}}。出席した軍首脳達は、原料問題に関係の無いノイラートが出席しているのに驚いた。会議の冒頭、ヒトラーはこれから述べることは、テーマが重要であるため閣議で議論することは差し控えるとした上で「自分が死んだ場合に備えて遺言として残したものと見なしていただきたい」と前置きし{{sfn|堀内直哉|2006|pp=47}}、ドイツの政治目標について語り始めた。その後には外交政策について語りはじめ、1945年までの段階で武力による拡張を目指すべきであると説いた。他の参加者は後に意見を述べたものの、会議の第一部はほとんどヒトラーによる独演会であった。第二部には軍備問題が話し合われた{{sfn|堀内直哉|2006|pp=62}}。会議が終了したのは午後8時30分であった{{sfn|堀内直哉|2006|pp=56}}。
 
=== 出席者 ===
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== 覚書の作成 ==
この会議の公式な議事録は作成されていない{{sfn|堀内直哉|2006|pp=47}}。しかし会議の出席者であり、総統個人副官であった[[フリードリヒ・ホスバッハ]]大佐は、会議の状況を私的なメモとして記録し、11月10日に国防省内でメモと記憶を元として覚書を作成した{{sfn|堀内直哉|2006|pp=47}}。
 
ニュルンベルク裁判中にはこの史料自体の真贋を巡って論争が行われたが、ホスバッハ自身が「全体として」彼自身の作成したオリジナルを再現したものであると認めている{{sfn|長野明|2001|pp=46}}。また内容の信憑性や、史料の真贋にまつわる論争はすでに決着している{{sfn|長野明|2001|pp=46}}。
 
== 影響 ==
この会議においてヒトラーの意見に否定的な意見を述べたブロンベルクとフリッチュは、1938年2月頃に相次いでスキャンダルによってその地位を追われることになる([[ブロンベルク罷免事件]])。また外相ノイラート、経済相シャハトらも閑職に追いやられ、かわって[[ヴィルヘルム・カイテル]]や[[ヴァルター・フォン・ブラウヒッチュ]]、[[ヨアヒム・フォン・リッベントロップ]]といったヒトラーの方針に忠実な者達がその地位に就いた{{sfn|堀内直哉|2006|pp=55}}{{sfn|長野明|2001|pp=51-52}}。ヒトラーは1938年中にオーストリアとチェコスロバキアに対して恫喝を行い、その領土を支配下に置いた([[アンシュルス]]、[[チェコスロバキア併合]])。
 
== 評価 ==
ニュルンベルク裁判で[[共同謀議]]の証拠(証拠番号:386-PS)として採用されたように、この覚書はドイツの侵略政策の存在を示すものとされている{{sfn|堀内直哉|2006|pp=47}}。論者によってはこの会議の日を、ドイツが[[第二次世界大戦]]への歩みだす「運命の日」と位置づける者もいる{{sfn|堀内直哉|2006|pp=55}}{{sfn|長野明|2001|pp=48}}。一方で[[A・J・P・テイラー]]はこの会議は内政上の工作にすぎず、非現実的な空想が並び立てられただけであり、ヒトラーの戦争責任とは無関係であるとしている{{sfn|ハリー・ヒンズリー|2011|pp=179}}。
 
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
* {{Cite journal|和書|author=[[堀内直哉]]|title=1937年11月5日の「総統官邸」における秘密会議 : ヒトラー政権下の軍備問題をめぐって|format=PDF|journal=目白大学人文学研究 |publisher=目白大学|issue= 3|naid=110007000946|year=2006|pages=pp.47-63|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|author=[[ハリー・ヒンズリー]]|author2=[[佐藤恭三]](翻訳)|title=翻訳 F.H.ヒンズリー『権力と平和の模索--国際関係史の理論と現実』1963年(20)|format=PDF|journal=専修法学論集|publisher=専修大学法学会|issue=111|naid=120004448415|year=20112001|pages=pp.303-335|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=[[長野明]]|title=第三帝国―奈落への13階段 ナチス政権編年記|publisher=文芸社|year=2001|isbn=978-4835513850|ref=harv}}
 
== 関連項目 ==