「用法基盤モデル」の版間の差分

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'''用法基盤モデル・使用依拠モデル'''(ようほうきばんもでる・しよういきょもでる、{{lang-en-short|Usage-Based Model}})は、[[認知言語学]]いられる語で、言語使用面から構造を、実際の言語を分析し使用によっいこう形作られるものして説明するモデル。この用語は始めに[[ロナルド・ラネカー|Langacker]]によって提唱された。認知言語学では、言語を閉じた規則と[[レキシコン]]の体系として規定していくのではなく、'''実際の言語使用の定着度、慣用度という観点から言語の体系を記述していく'''。この用法基盤モデルのアプローチでは、認知主体が言語使用をすることで、認知主体の言語活動、言語の体系にどのような影響が見受けられるか、という'''ボトムアップ的アプローチ'''を重視する。
 
 
このアプローチをとることで、[[Bybee]]の一連の研究に見られるように、従来[[生成文法]]で「言語能力competence」の問題として捉えられてきた問題が、「言語使用performance」から記述・説明できるようになってきている。例えば、[[英語]]の過去形における[[規則活用]]と[[不規則活用]]において、トークン頻度の高い[[動詞]]においては、不規則活用がそのまま残り、トークン頻度が低い動詞においては、-edに置き換わるという事実が挙げられる (Bybee 1985: 119-120)。実際に発話中にどのくらいの頻度である形式が産出されるか、という言語使用の側面が、言語システムそのものに影響を及ぼすということが、特にBybeeの一連の研究によって示されてきている。
 
このusage-based modelという用語はLangackerによって示されたものであるが、実際の言語使用の反映として、言語を扱う態度自体は決して新しいものではない。比較言語学においては、社会言語学的な要因・類推(Analogy)・借用という言語使用の側に属する作用との関係で言語変化が論じられてきた。日本の伝統的な国語学においては、コーパスという名称が言語学に導入される以前にも、「計量国語学」的視点によって数々の言語発掘量的な観点によって記述されてきた。また西洋でも機能主義言語学が発達するにつれて、[[Talmy Givon|Thomas Givon]], [[Paul Hopper]], [[Sandra Thompson]]等によって談話と文法の関係が盛んに論じられてきた。よって、この用法基盤モデルは、生成文法というシンタクスを自律的と考える言語観とのアンチテーゼと考えるべきこともはなくきるが、むしろ伝統的な言語研究の上に立つモデルとして捉えることも可能である。
 
また一方でこのモデルは、言語を「言語ユニットが組織的に構造化された実体」と捉える言語観を導き出している (Langacker 1987)点で、構文文法とも親和性を持ち、また言語使用の文脈から、言語システムを見るという点で、必然的にコーパス言語学とも親和性が高い。今後もコーパスを使用した実証的な研究がますます期待される。