「フォン・ノイマン宇宙」の版間の差分

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[[数学]]の[[集合論]]とその周辺分野において、'''フォン・ノイマン宇宙''' '''V'''とは、[[遺伝的]] [[整礎的集合|整礎集合]]全体の[[クラス (集合論)|クラス]]である。この集まりは、[[ZFC]]によって定義され、ZFCの公理のinterpretationやmotivationを与えるためにしばしば用いられる。
[[数学]]の[[集合論]]とその周辺分野において、
'''フォン・ノイマン宇宙''' '''V'''とは、
[[遺伝的]] [[整礎的集合|整礎集合]]全体の[[クラス (集合論)|クラス]]である。
この集まりは、[[ZFC]]によって定義され、
ZFCの公理のinterpretationやmotivationを与えるためにしばしば用いられる。
 
整礎集合の'''階数(rank)'''はその集合の全ての要素の階数より大きい最小の[[順序数]]として帰納的に定義される。
最小の[[順序数]]として帰納的に定義される。
<ref>Mirimanoff 1917; Moore 1982, pp. 261-262; Rubin 1967, p. 214</ref>
特に、[[空集合]]の階数は0で、順序数はそれ自身と等しい階数をもつ。''V''の集合はその階数に基づいて[[超限]]個の階層に分けられ、その階層は'''累積的階層'''と呼ばれる
''V''の集合はその階数に基づいて[[超限]]個の階層に分けられ、
その階層は'''累積的階層'''と呼ばれる。
 
== 定義 ==
 
この累積的階層は[[順序数]]のクラスによって添え字付けられた集合''V''<sub>α</sub>の集まりであり、特に、''V''<sub>α</sub>は階数α未満の集合全てによる集合である。ゆえに各順序数 α に対して集合''V''<sub>α</sub>が[[超限帰納法]]によって以下のように定義できる:
集まりであり、
特に、''V''<sub>α</sub>は階数α未満の集合全てによる集合である。
なので各順序数 α に対して集合''V''<sub>α</sub>が[[超限帰納法]]によって
以下のように定義できる:
* ''V''<sub>0</sub>は[[空集合]], {}とする。
* 各[[順序数]] βに対して、''V''<sub>β+1</sub>は''V''<sub>β</sub>の[[冪集合]]とする。
* 各[[極限順序数]] λに対して、''V''<sub>λ</sub>は、次の[[和集合]]とする:
*: <math> V_\lambda := \bigcup_{\beta < \lambda} V_\beta .</math>
 
この定義で重要なのは、ZFCのある式φ(α,''x'')で
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クラス''V''は全ての''V''-階層の和、すなわち:
:: <math> V := \bigcup_{\alpha} V_\alpha.</math>
と定義される。
 
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と定義できる、ここで<math>\mathcal{P} (X) \!</math>はXの[[冪集合]]のことである。
 
集合''S''の階数は<math>S \subseteq V_\alpha \,.</math>となる最小のαとも言える。
 
==Vと集合論==
ω を[[自然数]]全体の集合とすると、''V''<sub>ω</sub>は[[遺伝的有限集合]]全体の集合であり、[[無限公理]]の成り立たない集合論[[モデル理論|モデル]]である。''V''<sub>ω+ω</sub>は[[ordinary mathematics]]の[[宇宙 (数学)|宇宙]]であり、[[ツェルメロの集合論]]のモデルである。
ω を[[自然数]]全体の集合とすると、
''V''<sub>ω</sub>は[[遺伝的有限集合]]全体の集合であり、
[[無限公理]]の成り立たない集合論[[モデル理論|モデル]]である。
 
κ が[[到達不能基数]]ならば、''V''<sub>κ</sub>は[[ZFC]]のモデルである。そして、''V''<sub>κ+1</sub>は[[モース-ケリー集合論]]のモデルである。
''V''<sub>ω+ω</sub>は"[[ordinary mathematics]]"の[[宇宙 (数学)|宇宙]]であり、
[[ツェルメロの集合論]]のモデルである。
 
V は二つの理由によって、"[[ラッセルのパラドックス|全ての集合による集合]]"とは異なるものである。第一に、これは集合ではない。各階層''V''<sub>α</sub>がそれぞれ集合でも、その和である''V''は[[クラス (集合論)|真のクラス]]であるからだ。第二に、''V''の要素は全て整礎集合に限られている。[[正則性公理]]は全ての集合が整礎的であることを要求していて、だからZFCでは全ての集合が''V''に属する。しかし、正則性公理を除いたり否定するような別の公理系を考えることも可能である(例えば[[:en:Aczel's anti-foundation axiom]])。このような非整礎集合の集合論は一般的に採用はされていないが、研究する余地はある。
κ が[[到達不能基数]]ならば、''V''<sub>κ</sub>は[[ZFC]]のモデルである。
 
そして、''V''<sub>κ+1</sub>は[[モース-ケリー集合論]]のモデルである。
 
V は二つの理由によって、"[[ラッセルのパラドックス|全ての集合による集合]]"とは異なるものである。
 
第一に、これは集合ではない; 各階層''V''<sub>α</sub>がそれぞれ集合でも、
その和である''V''は[[クラス (集合論)|真のクラス]]である。
 
第二に、''V''の要素は全て整礎集合に限られている。
[[正則性公理]]は全ての集合が整礎的であることを要求していて、
だからZFCでは全ての集合が''V''に属する。
しかし、正則性公理を除いたり否定するような別の公理系を考えることも可能である、
 
(例えば[[:en:Aczel's anti-foundation axiom]])。
このような非整礎集合の集合論は一般的に採用はされていないが、研究する余地はある。
 
==関連項目==