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'''幼生'''(ようせい)は、[[後生動物]]の[[個体発生]]の過程で、[[胚]]と[[成体]]との間に、成体とは形態が著しく異なり、多くの場合は生体とは違った独自の生活様式を持つ時期がある場合に、その段階にある個体のことである<ref name="iwanami">『[[岩波生物学辞典]]』第4版(1996)「幼生」、[[岩波書店]]</ref>。
'''幼生'''(ようせい)とは、[[動物]]一般における[[子供]]のことを指す言葉である。動物群によってさまざまな名称がある。
 
[[英語]]では {{en|larva}}<ref name="iwanami"/>([[複数形]]は {{en|larvae}})。動物群によって特別な名称がある。
== 概論 ==
動物のほとんどは[[卵]]を産み、そこから[[孵化]]したものは親より小さく、構造が単純なものである。それらは次第に[[成長]]し、形を変えて親の姿になる。そのような、卵から産まれて親になるまでのものを一般に'''幼生'''(ようせい [[:en:Larva]] pl.Larvae)という。これに対して、親のことを'''成体'''と言う。
 
[[卵生]]で[[変態]]する動物について簡潔に言えば、幼生とは「[[孵化]]から変態まで」となる。
普通、幼生と言われるのは卵から孵化して、独立に栄養を取り、成長して親になるまでの間の[[個体]]である。卵の中にある間はこれを[[胚]]と言い、また、[[胎生]]や[[卵胎生]]のもので、親の体内にいる場合これを[[胎児]]という。ただし、分類群によって孵化の時期は異なり、近縁なグループでは既に孵化している段階のものが、別のグループではいまだに卵の中にいるという場合もある。極端なものでは親の体内で卵が親の段階にまで成長してしまうものもあり、この場合には幼生の時期はない、とも言える。しかし、近縁の群で見られる幼生の姿が卵の中で形成される場合も多く、その形態が明確な場合には、それをその幼生の名で呼ぶことも可能である。
 
どのくらい成体と異なれば幼生と呼べるかについて、生物群を問わない汎用的な定義は難しい<ref name="Y&H">{{cite | title=“Larva”, “paralarva” and “subadult” in cephalopod terminology | first=Richard Edward | last=Young | first2=Robert F. | lasrt2=Harman | year=1988 | journal=Malacologia | volume=29 | issue=1 | pages=201&ndash;207 | url=http://citebank.org/uid.php?id=49447 }}</ref>。[[ルドルフ・ガイギー|ガイギー]]と[[アドルフ・ポートマン|ポートマン]]は、変態する場合のみ幼生と呼べるとする<ref>{{cite | last=Geigy | first=R. | last2=Portmann | first2=Adolf | author2-link=:en:Adolf Portmann | year=1941 | title=Versuch einer morphologischen Ordnung der tierischen Entwicklungsgänge | journal=Naturwissenschanen | volume=29 | pages=734-743 }}</ref><ref name="Y&H"/>が、伝統的に幼生と呼ばれる仔の中には変態をしない例外も多い。
幼生は親に似ている場合もあれば、全く異なった姿である場合もある。異なった姿の親子は、その生活も全く異なっている場合もある。成長の途中で構造が大きく変化する場合、これを[[変態]]と言う。
 
== 幼体・亜成体 ==
幼生の形は分類群によりさまざまであり、それぞれに固有のものがあるので、それぞれに命名されている。海産[[無脊椎動物]]では、幼生の時期を[[プランクトン]]で暮らすものがあり、それを'''幼生プランクトン'''という。そのようなものでは、親とのつながりが分かる前に、幼生が発見され、独自に命名される場合もある。そのような例に、[[ホウキムシ]]の幼生であるアクチノトロカ幼生や、[[イセエビ]]などの幼生の[[フィロソマ]]がある。また、いまだに幼生しか発見されていない動物もある。
幼体 ({{en|juvenile}}) と、亜成体または未成体 ({{en|subadult}}) という用語は、しばしば幼生も加えて混用されるが、厳密な定義ではそれぞれ異なる。変態(あるいは変態に相当する変化)後も成長する動物、または変態しない動物に、これらの段階がある。
 
; 幼体 {{weight|normal|({{en|juvenile}})}}
: 幼体は、幼生よりは後の段階である。つまり、変態する動物の場合、変態後である。あるいは、幼生段階がない場合は、孵化直後から幼体となる<ref name="Y&H"/>。
; 亜成体{{weight|normal|または}}未成体 {{weight|normal|({{en|subadult}})}}
: 亜成体または未成体は、幼体より後で、[[生殖]]能力と大きさ以外では成体と同じ形態となった段階である<ref name="Y&H"/>。
 
== 例外的な現象 ==
=== 変態しない幼生 ===
[[魚類]]や[[頭足類]]の仔も幼生と呼ばれるが、それらは変態を経ず、幼生と成体の違いも形態的 ({{en|morphology}}) ではなく[[形態計測]]的({{en|morphometry}}、大きさや比率)な変化にすぎない<ref name="Y&H"/>ので、幼生を変態するものに限定するなら、厳密には幼生とは言えないことになる。
 
しかし、魚類や頭足類の仔のように、[[プランクトン]]として生活するなどの「幼生的形質」を持ち、多数の構造の協同的で急峻な成長を行うなら、幼生と呼べるとする主張もある<ref>{{cite | last=Nesis | first=K. N. | year=1979 | title=Larvae of cephalopods | journal=Biol. Morya | volume=4 | pages=26–37}} (translated 1980 for Pfenunn Publishing Corporation).</ref><ref name="Y&H"/>。
 
ただし[[1988年]]以降、幼生の定義の混乱を避け、頭足類の仔は {{en|paralarva}}(定訳はないが仔稚と訳されることがある<ref>{{cite | url=http://tulip.agri.pref.toyama.jp/nsgc/suisan/webfile/t1_09df1a05c13501945e036d9789790f0d.pdf | title=富山湾産ホタルイカの資源生物学的研究 | author=[[林清志]] | journal=富山県水産試験場研究報告 | number=7 | year=1995 | page=10 }}</ref>)と呼ぶ傾向にある(幼生でなくなったわけではない)<ref name="Y&H"/>。
 
=== 孵化前の幼生 ===
普通、幼生と言われるのは卵から孵化して、独立に栄養を取り、成長して親になるまでの間の[[個体]]である。卵の中にある間はこれを[[胚]]と言い、また、[[胎生]]や[[卵胎生]]のもので、親の体内にいる場合これを[[胎児]]という。ただし、分類群によって孵化の時期は異なり、近縁なグループでは既に孵化している段階のものが、別のグループではいまだに卵の中にいるという場合もある。極端なものでは親の体内で卵が親の段階にまで成長してしまうものもあり、この場合には幼生の時期はない、とも言える。しかし、近縁の群で見られる幼生の姿が卵の中で形成される場合も多く、その形態が明確な場合には、それをその幼生の名で呼ぶことも可能である。
 
=== 幼生による繁殖 ===
一般に、幼生と成体の違いは繁殖力の有無である。繁殖能力の獲得をもって、成熟の目安とするのが普通である。しかし、中には幼生が大いに繁殖する例もある。ただし、その繁殖は普通は[[無性生殖]]かそれに近い形を取る。
 
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幼生の形が共通することは、それだけ[[進化]]の過程において多くを共有してきたものと見なすのが、[[反復説]]である。その可否は置くとしても、いくつかの門に共通する構造の幼生がある場合、それらの類縁性を考えるのが普通である。たとえば[[環形動物]]と[[軟体動物]]などに見られる[[トロコフォア]]幼生がそのような例である。
 
== 個別の呼称 ==
幼生の形は分類群によりさまざまであり、それぞれに固有のものがあるので、それぞれに命名されている。海産[[無脊椎動物]]では、幼生の時期を[[プランクトン]]で暮らすものがあり、それを'''幼生プランクトン'''という。そのようなものでは、親とのつながりが分かる前に、幼生が発見され、独自に命名される場合もある。そのような例に、[[ホウキムシ]]の幼生であるアクチノトロカ幼生や、[[イセエビ]]などの幼生の[[フィロソマ]]がある。また、いまだに幼生しか発見されていない動物もある。
多くの動物の幼生にはラテン語系の名がつけられている。日本ではこれの読みのカタカナ表記に幼生をつけて呼ぶことが多い。ただし、[[プラヌラ]]や[[ポリプ]]、レディアやセルカリア(ラテン語読みではケルカリア)など、慣用的に幼生をつけないことが多いものもある。
 
多くの動物の幼生にはラテン語系の名がつけられている。日本ではこれの読みのカタカナ表記に幼生をつけて呼ぶことが多い。ただし、[[プラヌラ]]や[[ポリプ]]、レディアやセルカリア(ラテン語読みではケルカリア)など、慣用的に幼生をつけないことが多いものもある。
また、幼生という言葉自体を用いない例もある。陸上[[脊椎動物]]に対しては、まず使わない。'''幼獣'''や'''幼体'''などが使われることが多く、一般的には'''子供'''も使われる。[[鳥類]]に対しては'''幼鳥'''または'''雛'''(ひな)が用いられる。
 
節足動物では、昆虫に例外が多い。まず、幼生ではなく[[幼虫]]を使う。それに、個々の幼虫に対して慣用的に使われる名前(イモムシ・ケムシ・ボウフラ・ヤゴ・ウジ等)が多いので、一般にはそれで流通する。また、[[蛹]]と呼ばれる時期もある。
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昆虫に倣って、陸上の節足動物では、幼虫が使われることも多い。学問的には、昆虫の場合も含めて幼生が使われる。ダニなどでは若虫という名で呼ばれる時期もある。
 
なお、[[花虫綱]]以外の刺胞動物の場合には、[[クラゲ]]の姿が[[有性生殖]]を行うので、[[ポリプ]]は幼生という位置付けになるが、ポリプは[[無性生殖]]を行い、クラゲ以上に長命であったり、より発達した姿である場合もあり、これを独立した世代とみなす見方もある。その場合、その生物はクラゲとポリプの2つの世代をもつ持ち、[[世代交代]]を行うという。
 
== 代表的な分類群固有の幼生の名 ==
 
*[[刺胞動物]]:[[プラヌラ]] - [[ポリプ]] - ストロビラ - エフィラ - [[アクチヌラ]]
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***[[チョウチョウウオ科]]:トリクティス
**[[両生類]]:[[オタマジャクシ]]
 
== 概論出典 ==
{{Reflist}}
 
== 関連項目 ==
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[[Category:幼生|*]]
[[Category:生物学]]
 
[[en:Larva#Selected_types_of_larvae]]