「小早川家の秋」の版間の差分

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小津は松竹からスタッフを1人も連れて行かずにこの作品を撮った。東宝は小津を招くということで、当時の東宝を代表する一流のスタッフを揃えた。撮影の中井朝一は黒澤明作品の常連であり、照明の石井長四郎は成瀬巳喜男作品を支えてきたスタッフである。そのため、小津の他の松竹作品とは違った独特の緊張感が漂っている。ただし、編集に関しては、自分の生理にあったフィルムの繋ぎにこだわるあまり1コマを半分に切ることまでする小津の要求に応えることは困難を極め、最終的には松竹から小津の長年のパートナーである浜村義康が急遽呼ばれることとなった。また、赤い色にこだわる小津は、この作品でも松竹作品と同じくアグファ社のフィルムを使用している。赤い色へのこだわりは、撮影のほか、衣装や小道具にも及び、赤い小道具を撮影する際には、スタッフ全員でスタジオ内を掃除し、異物が写り込まないように細心の注意を払った。ラストシーンで、葬送の行列が川にかかった橋を渡る際に、カットによって川の流れの向きが逆になっている。このミスを指摘したのは試写を見た藤本真澄だったが、実際にはミスとはほとんど気づかないくらいの些細なものであるという。
== あらすじ ==
京都の造り酒屋・小早川の長男は早く死に、その未亡人の秋子に小早川所縁親戚の北川が再婚話を持ってくる。相手の磯村は鉄工所の社長でちょっとお調子者だ。また、次女の紀子も婚期を迎えて縁談が持ち込まれるが、彼女は大学時代の友人で、札幌に転勤することになっている寺本に思いを寄せていた。一方、小早川の当主・万兵衛は最近、行き先も告げずにこそこそと出かけることが目立つようになった。店員の丸山が後を尾けるが、したたかな万兵衛に見つかってしまい失敗。小早川の経営を取り仕切る入り婿の久夫と長女の文子夫婦が心配して行方を突き止めると、そこは祇園に住む万兵衛のかつての愛人・佐々木つねの家だった。さんざん死んだ母を泣かせた万兵衛の女好きがまた始まったと怒る文子。万兵衛はつねとその娘百合子との触れあいに、特別な安らぎを感じているようだったが、そこで倒れて亡くなる。葬式の日、紀子は秋子に札幌へ寺本と一緒に行く決心を告げるのだった。
 
== スタッフ ==
* 監督:[[小津安二郎]]