「実質金利」の版間の差分

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'''実質金利'''(じっしつきんり)とは、[[インフレ]]名目金利から予想される物価上昇、[[デフレ]]率、諸[[経費]]考慮引い上で実際にかかる[[金利]]ことである<ref name="tsuukai100">中谷厳 『痛快!経済学』 集英社〈集英社文庫〉、2002年、100頁。</ref>
 
== 解説 ==
[[金利]]には「'''[[名目金利]]'''<ref>貨幣で計った金利。</ref>」と「実質金利」があり、このことが明確に理解できているか否かで、経済現象の理解に大きな差がでる<ref name="tsuukai99">中谷厳 『痛快!経済学』 集英社〈集英社文庫〉、2002年、99頁。</ref>。名目金利が高いか低いかを判断する場合、物価の変動を考慮しなければならない<ref name="tsuukai99" />。
実質金利 = ('''[[名目金利]]'''<ref>貨幣で計った金利。</ref>)-('''予期インフレ率''')で表すことができる<ref>[http://diamond.jp/articles/-/10042 ようやく世界標準の政策を採った日本銀行 量的緩和は物価・景気にこうやって効く]ダイヤモンド・オンライン 2010年11月11日</ref><ref>[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35376 高橋洋一「ニュースの深層」 純白の政策委員会が真っ黒に!? 黒田日銀の「オセロゲーム」に見る専門家とサラリーマンの違い]現代ビジネス 2013年4月8日</ref><ref name="keizainoshikumi">野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、144頁。</ref>。この関係を解いたのは、アメリカの[[経済学者]]である[[アーヴィング・フィッシャー]]であり、この式は'''[[フィッシャー方程式]]'''といわれている<ref name="keizainoshikumi" /><ref>フィッシャー方程式で算出された期待インフレ率が引き上げられた分だけ名目金利が上がることを'''[[フィッシャー効果]]'''と呼ぶ。</ref>。
 
実質金利 = ('''[[名目金利]]'''<ref>貨幣で計った金利。</ref>)-('''予期[[インフレ]]率''')で表すことができる<ref name="tsuukai100" /><ref name="keizainoshikumi">野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、144頁。</ref><ref>[http://diamond.jp/articles/-/10042 ようやく世界標準の政策を採った日本銀行 量的緩和は物価・景気にこうやって効く]ダイヤモンド・オンライン 2010年11月11日</ref><ref>[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35376 高橋洋一「ニュースの深層」 純白の政策委員会が真っ黒に!? 黒田日銀の「オセロゲーム」に見る専門家とサラリーマンの違い]現代ビジネス 2013年4月8日</ref><ref name="keizainoshikumi">野口旭 『「経済のしくみ」がすんなりわかる講座』 ナツメ社、2003年、144頁。</ref>。この関係を解いたのは、アメリカの[[経済学者]]である[[アーヴィング・フィッシャー]]であり、この式は'''[[フィッシャー方程式]]'''といわれている<ref name="keizainoshikumi" /><ref>フィッシャー方程式で算出された期待インフレ率が引き上げられた分だけ名目金利が上がることを'''[[フィッシャー効果]]'''と呼ぶ。</ref>。
例えば、自分が100万円の商品を購入する際の代金は銀行から名目金利5%で借り、物価の変動(インフレ率)が+4%だったとする。1年後の返済で105万円を支払う必要があるが、100万円の商品の価値は物価の変動に伴い104万円となっているため、実質的には差し引き1万円つまり1%の支払いですむ。上記の式で言えば5%-4%=1%となる<ref name="keizainoshikumi" />。
 
例えば、自分が100万円の商品を購入する際の代金は銀行から名目金利5%で借り、物価の変動(インフレ率)が+4%だったとする。1年後の返済で105万円を支払う必要があるが、100万円の商品の価値は物価の変動に伴い104万円となっているため、実質的には差し引き1万円つまり1%1%の支払いですむ。上記の式で言えば5%-4%=1%となる<ref name="keizainoshikumi" />。
このように物価上昇率(インフレ率)がプラスであれば実質金利は名目金利より低くなる。逆にデフレ期待が高まる(物価が下落する=インフレ率がマイナスとなる)と、実質金利は高くなってしまう。デフレ下においては、通常[[中央銀行]]による金融緩和が行われて、[[政策金利]]が引き下げられるが、名目金利を0%以下に下げることはできない。しかしこの状況では実質金利は高い状態にあるため、借金ができず消費や投資が停滞してしまう現象が見られる(いわゆる「[[流動性の罠]]」)。
 
このように物価上昇率(インフレ率)がプラスであれば実質金利は名目金利より低くなる。逆に[[デフレ]]期待が高まる(物価が下落する=インフレ率がマイナスとなる)と、実質金利は高くなってしまうる<ref name="tsuukai100" />。デフレ下においては、通常[[中央銀行]]による金融緩和が行われて、[[政策金利]]が引き下げられるが、名目金利を0%以下に下げることはできない。しかしこの状況では実質金利は高い状態にあるため、借金ができず消費や投資が停滞してしまう現象が見られる(いわゆる「[[流動性の罠]]」)。
 
名目金利が下げられない以上、実質金利を下げるには上記の式に従うならば、インフレ期待を醸成する必要がある。[[マネタリズム]]は、名目金利を景気判断の材料にするより、貨幣供給の増加率を安定的に保持し、予想実質金利の自動調整機能を利用して景気の安定化を図った方が、結果的に景気の変動をならすことができるとしている<ref>岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、171頁。</ref>。