「団体交渉拒否」の版間の差分

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'''団体交渉拒否'''(だんたいこうしょうきょひ)は、労働者あるいは[[労働組合]]の[[団体交渉]]の申し入れに対し、[[使用者]]が団体交渉を拒否すること。'''団交拒否'''(だんこうきょひ)とも呼ばれる。不利益取扱、[[支配介入]]と並ぶ[[不当労働行為]]の類型である。
 
== 労働組合法の規定 ==
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第7条(不当労働行為)
労働組合法第7条2号では、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」を[[不当労働行為]]としている。不利益取扱、[[支配介入]]と並ぶ不当労働行為の一類型とされる。ここでいう「雇用する労働者の代表者」とは、同法上の労働組合のみを指し、同法第2条の要件を満たさない団体(単なる従業員会や親睦会など)は同法上の団体交渉の主体とはなりえない。
使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 (略)
ニ 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと
三(以下略)
 
== 団交拒否の内容 ==
[[西谷敏]](西谷・後掲書)によれば、次のような使用者の態度は団交拒否と看做される。
=== 窓口拒否 ===
労働者の団申し入れに対し、正当な理由なくただ単純に拒否することは、当然に不当労働行為となる。労働組合法第7条2号の文言から当然に導かれる。
 
=== 不誠実な交渉態度 ===
使用者は、単に団体交渉に応じるのみならず、誠実交渉をなす義務を負うとされ、これに反した場合は不当労働行為となる。具体的には組合の要求・主張に対し回答や反論をなし、これによって'''組合との合意達成の可能性を模索する'''ことである。また、必要な資料の提示を求められた場合は、合理的理由がない限りこれを提示しなければならない。
 
カール・ツアイス事件(東京地方裁判所平成元年9月22日判決)では、「使用者には、誠実に団体交渉にあたる義務があり、……自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、誠意を持って団体交渉に当たらなければなら」ないと示されている。
 
もっとも、使用者は団体交渉において組合に対し譲歩や合意をなす義務までは求められていない(使用者が譲歩しなければ、組合は[[ストライキ]]等で譲歩を迫ればよいというのが労働組合法の考えである)。
 
=== 複数組合の取扱差別 ===
企業内に複数組合がある場合、そのいずれとも十分な団体交渉を行う義務がある。一方の組合だけに団交を応諾したり、それぞれの組合の団交に応じたとしても同じ要求に対し合理的な理由なく回答が違う異なる場合は、不当労働行為となる。
 
実際にも、複数組合に対し、使用者は同一の提案・回答をすることが交渉の正道である。同一回答をする限り、それを呑む呑まないは各組合の任意であり、それによって一方の組合の組合員のみが不利益を受けたとしても、それはその組合の自主的選択の結果であり、使用者が非難さるべきではない。もっとも同一回答であっても、使用者が特定組合の弱体化を企図して団体交渉を操作したと認められる場合は不当労働行為となる。
 
=== 団交の一方的打ち切り ===
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=== 団交を経ない労働条件の変更 ===
[[就業規則]]の一方的変更を団体交渉を経ずに行なうことは、団交拒否の不当労働行為となる可能性がある。もっも労働基準法第90条では、就業規則の作成・変更につう学説て、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合の'''意見を聴かなければならない'''とすのみで、団体交渉そのものを義務付けたものではない
 
== 団交拒否の救済 ==
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== 参考文献 ==
*[[西谷敏]]『労働組合法 第2版』(有斐閣、2006年)308頁
*[[浅倉むつ子]]・島田陽一・[[盛誠吾]]『労働法 第3版』(有斐閣、2008年)353頁(盛執筆部分)
*[[菅野和夫]]『労働法 第5版補正2版』(弘文堂、2001年)532頁
*菊池高志「誠実団交義務─カール・ツアイス事件」菅野和夫・西谷敏・[[荒木尚志]]編『労働判例百選 第7版』(有斐閣、2002年)244頁
*橋詰洋三「団体交渉の打切りと再開─寿建築研究所事件」菅野ほか編上掲書、248頁
*菅野和夫『雇用社会の法』(有斐閣、1996年)253頁~
 
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