「行動主義心理学」の版間の差分

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かな〜り、久しぶりの更新。説明が足りない部分を補いました。
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=== 定義 ===
スキナーは、徹底的行動主義を打ち立てた。徹底的行動主義は、彼が行った研究(行動の実験行動分析と呼ばれる)を基に体制化された哲学である。徹底的行動主義は、意識・認知・内観などは観察可能な行動と同様の原理が働くとし、意識・認知・内観を行動とは異なる二元論的なものとはしない。そして、意識・認知・内観は顕在的行動と同様に科学的に論じられうるとして、それらの存在を受け入れている。
 
また、“全ての行動が反射である”という説明を受け入れない点が、ワトソンの古典的行動主義(S-R心理学)と大きく異なる点であり、意識・認知・内観などの心的過程に行動の原因を求めない点が、新行動主義以降の方法論的行動主義と大きく異なる点である。
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徹底的行動主義は、ラットとハトを使ったスキナーの初期の実験研究の成果によって構築された。なお、彼の初期の研究は、『生活体の行動』(Skinner, 1938)や『強化スケジュール』(Skinner & Ferster, 1957)などの彼の著書に記されている。徹底的行動主義の重要な概念は、彼が生み出した[[オペラント条件づけ|オペラント反応]](ラットのレバー押しがこの反応の代表的な例として頻繁に取り上げられる)である。オペラントは、構造的に異なっていても、機能的に等価である反応の事をいう。例えば、ラットが左足でレバーを押す事と右足やお尻で押す事は、同様に世界に作用し、同じ結果を生むという点から、同じオペラントである。
 
スキナーの“フリーオペラント”を使った実証的研究は、ソーンダイクやガスリーなどが行った試行錯誤学習の概念を、ソーンダイクのように刺激-反応“連合”を用いずに、明確化し、拡張した。なお“フリーオペラント”とは、被験体の任意な(割合での)オペラント反応である
 
代表的なフリーオペラントの実験では、ラットは、レバーがあり餌が出る装置がついた箱(スキナーボックス)の中に入れる。ラットがレバーに近づいたところで餌を出すことで、ラットがレバーに近づく頻度が増加する。次に、レバーに触れたところで餌を出すことで、レバーに触れる行動が増加する。最終的に、レバーを押したところで餌を出すことで、レバーを押す頻度が増加する。この実験では、実験者は餌を出す装置(環境)を操作しているが、ラットの行動を直接制御していない。ラットは箱の中を「自由」に動き回ることができていたため、ラットの行動はフリーオペラントと呼ばれる。そして、レバー押しの頻度が増えたことは、行動(レバーを押した)とその行動の結果(餌が出た)の関数関係(関数(function)は「機能」とも翻訳される)で説明され、この説明法は関数分析(機能分析)と呼ばれる。
スキナーはフリーオペラントを使った実験で、強化スケジュール(様々な強化率)の差異による、オペラント反応率の変化の違いを、実証的に研究した。そして、行動レベルの視点で、動物に様々な種類・頻度で反応を自発させることに成功したスキナーは、その実証的研究を根拠に厳密な理論的分析を行った。例えば、論文『学習理論は必要か?』の中で、スキナーは一般的な心理学が抱えている理論的弱点を批判している。
 
スキナーはフリーオペラントを使った実験で、強化スケジュール(様々な強化率先の例では、実験者が餌を出すタイミング)の差異による、オペラント反応率の変化の違いを、実証的に研究した。そして、行動レベルの視点で、動物に様々な種類・頻度で反応を自発させることに成功したスキナーは、その実証的研究を根拠に厳密な理論的分析を行った。例えば、論文『学習理論は必要か?』の中で、スキナーは一般的な心理学が抱えている理論的弱点を批判している。
 
=== 言語(的)行動 ===
スキナーは、行動の科学の哲学的基盤を考察する過程で、人間の[[言語]]に関心を持つようになった。そして、著書『[[言語行動|言語(的)行動]]』(Skinner, 1957)の中で、言語(的)行動を機能的分析するための概念と理論を発表した。この本は、言語学者の[[ノーム・チョムスキー]]のレビュー(Chomsky, 1959)によって厳しく酷評されたが、スキナー自身は「チョムスキーは、私が何について話しているのかを分かっておらず、どういう訳か、彼はそれを理解することができない」というコメント(Skinner, 1972)を残している程度で、このレビューに目立った反応をしていない。
 
スキナーは、言語(的)行動を「他者の仲介を通して強化された行動」と定義し、言語を他のオペラント行動と同様の方法(関数分析)で研究可能だと考えた。スキナーは、[[言語獲得]]よりも、言語と顕在的行動の相互作用への興味が強かった。彼は、著書『強化随伴性』(Skinner, 1969)の中で、ヒトは言語(的)刺激を構成し、言語(的)刺激は外的刺激と同様の方法で行動を制御出来る事を指摘している。この行動への言語(的)刺激という“教示性制御”の存在の可能性により、強化随伴性は他の動物の行動に影響するのと同様の現象を、ヒトの行動に必ずしももたらす訳でない事が指摘された。
 
これにより、徹底的行動主義によるヒトの行動の研究は、教示性制御と随伴性制御の相互作用を理解する試みへと移った。そして、<どのような教示が自発されるか>や<どのような行動の支配を教示が獲得するか>を決める行動過程の研究が行われるようになった。