「国鉄客車の車両形式」の版間の差分

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客車は[[機関車]]に牽引されることから、運用する際には常に重量を配慮する必要がある。従ってその形式記号の最初に重量記号が含まれている。用途記号が同じ同一車種(ロネ・ハネ・ハ・ニなど、ハとハフは区別する)については落成した形式順に番号を付けたため、重量記号のみが異なる形式番号(例えば、オハ35形に対するスハ35形)は存在しないのが原則であった<ref group="注">基本的に、重量記号が変更されるとそれに伴い形式数字も変更された。ただし存在時期が重なっていなければ重量記号のみが異なる形式番号が登場したこともある(例えば[[国鉄スハ32系客車#三等車(丸屋根車)|スハ36]]と[[国鉄オハ35系客車#二等車(旧三等車)|オハ36]]は時期の異なる別形式)。</ref>。例としてハとハフについて、2軸ボギー車の最初の30 - 36の形式<ref group="注">時期が異なる別形式がある場合は、先に登場したもの。</ref>を表に示す。国鉄末期にはこの原則は大幅に崩れ、形式番号が同じで重量記号のみが異なる車両が大量に出現した<ref group="注">これは、20系登場以降に新製された固定編成客車の系列の形式数字が他系列と重複しないように2種類ずつ(14系は14形と15形、24系は24形と25形等。ただし20系は20 - 23形の4種類)使用されており、むやみに他の形式数字に飛ばすことができなくなったため。</ref>。
 
ここでの「自重」とは、客車自体の重量に、定員分の乗客または規定積載量の荷物・郵便物の重量を加えたものをいう。従って、荷物車等には積載量を減らして重量クラスを落とす措置をしたものも存在する。
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'''マ=42.5t以上47.5t未満。'''語源は英語のMaximum(極大)から「マキシマム→マ」であるという説が有力である。「ますます大きい→マ」「まことに大きい→マ」という説もある。
 
昭和初期の鋼製3軸ボギー客車の中でも、一部の優等車と重量荷物車が該当。戦後は「ス」級展望車・優等寝台車の冷房化改造で重量が増加し<ref group="注">[[国鉄マロネ40形客車#車軸駆動冷房装置|車軸駆動冷房装置]]も参照。</ref>、「マ」級が増えた。また、荷物車についても満載状態だと「マ」級に該当するものが多かった。
 
現在は[[国鉄24系客車|24系]]の電源車や、事業用車両代用の元荷物車等の例外が少数在籍するに留まる。特殊な例としてJR西日本が保有するマイテ49形展望車がある。
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なお、[[JR東日本E26系客車|E26系]]のカハフE26形は、2階建て構造の1階を電源室としているため重量50.2tであるが、ラウンジカーのため普通車扱いとなり、普通車扱いの客車としては最も重い車両となった。
 
また、[[1988年]]に[[オリエント急行]]の客車が台車を履き替えた上でJR線上を走行した際、仮の形式称号が与えられたが、重量記号はいずれも「カ」級であった<ref group="注">ただし、この時使用された台車が[[国鉄TR37形台車#.E6.B4.BE.E7.94.9F.E5.BD.A2.E5.BC.8F|TR47]]であったことも考慮しなければならない。TR47は乗り心地という点では優れている台車だが、反面大重量で、[[国鉄TR23形台車|TR23]]に取り替えることで5トン近い軽量化に繋がることもあった。</ref>。
 
==用途記号==
用途記号は、客車の用途に応じて単独で、また合造車の場合は下記の順番で重ねて使用される。AB寝台合造車は「ロハネ」、旧一等二等寝台合造車は「イロネ」とそれぞれ標記される。また備考欄の→の左は[[#1960年改正|1960年の二等級制への移行]]以前の等級('''旧'''で示す)、右はそれから1969年の[[等級 (鉄道車両)#モノクラス制|モノクラス制]]移行までを示す。
 
[[緩急車]]については記号の末尾に「フ」が加えられるが、同様の設備を有していても展望車<ref group="注">ただし、JR北海道・ノロッコ号用の展望緩急車(オハテフ500・510形)には「フ」の記号が用いられている。また同列車用のオクハテ510形には推進運転時用の運転台があるため制御車の記号である「ク」が用いられている。</ref>、郵便車・荷物車・事業用車には用いない。緩急車とは車掌室を有し、[[手ブレーキ]]または[[非常ブレーキ|車掌弁]]がある車両のことである。
 
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| 2 || &nbsp; || [[#1953年称号規程|1953年称号改正]]で一部使用
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| 3 - 5 || 一般形客車<ref>{{refnest|group="注"|国鉄の現場で便宜的に分類呼称したものでこの時点で製造された客車については列車や種別ごとに用途を限定していないが、実態は優等列車用であり、三等車(普通車)に関しては[[優等列車]]への使用を前提に設計され、そのほとんどがデッキ付きの2ドアクロスシートで製作されている。登場後しばらくは優等列車で使用され、後継車の増備や置き換えにつれて捻出した車両は普通列車にも使用されるようになっていた。なお、この時点での規程ではこの区分は存在せず、明確に分類したものではない(JTB<ref>JTBバブリッシング 岡田誠一『国鉄鋼製客車Ⅰ』 p.239)239</ref>}} || [[国鉄スハ32系客車|スハ32系]]・[[国鉄オハ35系客車|オハ35系]]・[[国鉄スハ43系客車|スハ43系]]客車群(5は一部の使用にとどまる<ref>{{refnest|group="注"|二等車とその格下げ車に使用されていた。</ref>}}
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| 6 || 鋼体化客車 || [[国鉄60系客車|60系客車群]]
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1953年規程改正後は、2軸車は10 - 999(3軸車は除外)、雑形2軸ボギー車は1000 - 7999、雑形3軸ボギー車は8000 - 9999、中形2軸ボギー車は10000 - 17999、中形3軸ボギー車は18000 - 19999、大形2軸ボギー車は20000 - 27999、大形3軸ボギー車は28000 - 29999とされた。即ち台車による千位の数字での区分は0 - 7が2軸ボギー車、8、9が3軸ボギー車である。なお改番過程で[[鋼製雑形客車|鋼製雑形]](当時あった貨車改造の[[軍務車]]、買収私鉄から引き継いだ客車等<ref>『鋼製雑形客車』参照。</ref>)は1000 - 2999にまとめ、営業用を2599以下、事業用を2600以上とした。また木造事業用客車についても各区分ごとにヤ・エ・ルの種別と重量記号によって小区分した番号を付けた<ref name="kaiban">星晃「車両称号規定の改正に伴う客車の改番について」。</ref>。
 
この範疇に属する客車はナエ2700が1971年6月11日に廃車されて消滅した<ref>{{refnest|group="注"|元相模鉄道ホ1→買収ナハ2380→ナエ6561→ナエ2700、長らく隅田川、晩年は東横浜に配置された。<ref>『鋼製雑形客車』p.30-31,34-35。</ref>}}。その後貨車の改造により再度JR北海道に[[JR北海道の車両形式#雑形|この範疇の車両]]が現存しているが、番号の付与体系についてはこの規定に全く則っていない。
 
==規程の歴史==
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*1911年(明治44年)1月16日付達第20号により制定された車両称号規程では客車の番号は形式別ではなく、一連の番号で付けており、番号だけでその形式を知ることができる。形式は、一連で付される同一形式車の最初の番号をとることとされ(従って一の位が0の形式の車番は0から始まる)、車両の重量([[換算両数]])を表す記号(ボギー車のみ)と用途(等級等)を表す記号が併せて標記される。ただし同形式が予想以上に増備されると空き番がなくなる恐れがあった。
*したがって客車の形式は、[[#1941年称号規程|1941年称号規程]]で鋼製客車について改訂される以前は、厳密には番号のみで表される。しかし実際には分かりやすさのために記号を前に付けた形で呼ばれることが多く、以下でもそれに従う。
*現在と異なる用途の記号は、特別車=トク、試験車=ケンなど。また電車=デ、気動車=ジ(自動から<ref>{{refnest|group="注"|最初の気動車は[[蒸気動車]]であるが、それが(当初は内燃動車はなかったため)「自動車」「自働客車」などと呼ばれた。(<ref>『日本の蒸気動車』上 p.2)。2</ref>}}。)も客車の内に含まれた(ただし電車・気動車共に後ろにイロハの等級を付けない)。ボギー車の重量記号は、コ・ホ・ナ・オ・スのみで、積車換算両数から決められた。
*当初は2軸車が1 - 4499、準客車が4500 - 4899、3軸車が4900 - 4999、ボギー車が5000 - 9999となるように考えられたが、後に数回にわたって改訂が行われた<ref>川上、上巻 p.121。</ref>。
*ボギー車については、結局次の表のように番号が割り当てられた。1912年特急用客車の製造の際に4桁に収まりきらず10000番台を使用したこと、客車・電車の増加分に15000 - を使用したこと、また1918年(大正7年)以降に長軸ボギー台車をはいた客車に20000番台を割り当てたことなどにより、使用範囲が拡大した<ref>『百年史』6巻 p.308の表を元にしたが左欄が「雑形」右欄が「基本形」とあるのを、川上、上巻 p.121により、修正すると共に、改訂経緯を記述。なお</ref>{{refnest|group="注"|20000番台は必ずしも大形客車に限る訳ではなく、暖房車ホヌ20200(後のホヌ30)などはかなり小さくても長軸のためこれに当てはめられた。ただし1928年改正では雑形に分類された。<ref>『国鉄暖房車』p.8)8</ref>}}
 
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*1927年(昭和2年)の鋼製客車(当時のオハ44400形の系列、後の[[国鉄オハ31系客車|オハ31系]])の登場にあたっては、空き番号の40000番台<ref>{{refnest|group="注"|30000番台は既に番号区分をはみ出した形式が使っていた。例:ナハ24400→34400以降。</ref>}}が割り当てられた。ただし千位以下の数字で形式を区分する方式は20000番台と同様である。({{refnest|group="注"|同様の考え方は、1928年称号規程以降のスハ32600形の系列等でも区分を変えつつ踏襲されている}}
 
===1913年改正===
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*1941年11月4日達639号(10月1日施行)<!-- 施行の方が先になっている -->により、その他の客車から区別して鋼製客車に独自の称号規程が制定された。これにより、形式はオハ等の記号と、2桁の数字(形式番号)で表され、その後に製造番号を1から付番するという現在のような方式になった。形式番号は30 - 99とし、第2位(一の位)の数字0 - 6が2軸ボギー車、7 - 9が3軸ボギー車を表す。そして車種別(ロネ・ハ・ハフ等)ごとに落成順に形式を付ける。ただし実際には鋼製2軸ボギー車には30 - 36、40 - 46、3軸ボギー車には37 - 39、47 - 49を当てた<ref>『百年史』11巻 p.700。なお10 - 29をこのとき使わなかったのは、10000・20000番台の木造客車がまだ多数在籍していたので混乱を避けるため。</ref>。また形式番号と製造番号の間の空白はないため、オハ351、スハ32600のような標記となる。
*なおこのときスハ33650形→オハ35形など、重量記号の変更も多数生じているが、例えばオハ35形でいえば実は製造時から重量としては'''オ'''級だったが'''スハ'''としていたものについて、重量記号の改正が同時に行われたものである。詳細は[[国鉄オハ35系客車#三等車|当該項目]]参照。
*暖房車は雑形に分類されたままであったが、1949年7月24日国鉄作47号で鋼製2軸ボギー客車として扱うことになり、改番された<ref>{{refnest|group="注"|星晃によれば1941年に改番を失念したものではないかという<ref>『国鉄暖房車』p.30</ref>。}}
 
*[[1942年]]に、輸送量の増大に伴い、7月30日達423号により車両換算法が改正され、客貨車と機関車の換算法が統一されたが、主に貨車の輸送改善に関わる<ref>『百年史』11巻 p.238-239</ref>。
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*形式番号は10 - 99とし、形式番号第2位の数字による台車の区分を、3軸の減少傾向から7を2軸ボギーに譲り、その位が7であった3軸ボギー客車は、形式称号が変更された。
*木造ボギー客車の台車による千位の数字での区分も上と同様に変更した。詳細は上記[[#木造・雑形客車等の形式番号|木造・雑形客車等の形式番号]]を参照。
*前々項により形式番号37の車輌は二重屋根の車を含むものが多い<ref group="注">上記1941年規定で3軸ボギー車の最初の形式番号であったため、鋼製初期の客車が37になることが多かったことによる。</ref>ので原則29に変更し、その中で丸屋根のものは番号を100番台とした。一方全て丸屋根の形式は38に変更した(マロネロ37→38等)<ref name="kaiban"/>。
*車輌換算法の改正で、冷房付きの車は夏季冷房期間中は一様に重量記号の表す換算両数に0.5を加算して扱う<ref group="注">冷房装置の重量と車軸から動力を取るための走行抵抗の増加を合わせて5t分と見なすということである。</ref>ことになるので(これ以前は車種により1を加算するものと0.5を加算するものがあった)、夏季に冷房を取り付けることになっている車両の形式は'''マ'''に統一した。これにより'''ス'''の場合同形式中でも冷房取り付けの有無により形式を変え、スシ37は冷房付をマシ29に(前項の適用)、他をスシ28(同例外)に変更した<ref name="kaiban"/>。
*事業用車中、救援車'''エ'''と配給車'''ル'''を区分した。
*広義の「客車」の中に「気動車」という分類を設けることとした<ref name="kaiban"/>。
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==脚注==
===注釈===
{{Reflist|group="注"|2}}
===出典===
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