「ヒルベルト空間」の版間の差分

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== 歴史 ==
[[Image:Hilbert.jpg|thumb|right|[[ダフィット・ヒルベルト]]]]
ヒルベルト空間開発される以前にも、数学や物理学においてユークリッド空間を一般化する別な概念が知られていた。特に、19世紀の終わりに掛けていくつかの流れの中から[[ベクトル空間|抽象線型空間]]の概念が獲得される<ref>[[オーグスト・フェルディナント・メビウス|メビウス]]の後押しを受けた[[ヘルマン・グラスマン|グラスマン]]の手によるところが大きい {{harv|Boyer|Merzbach|1991|pp=584–586}}。抽象線型空間の現代的にきちんとした公理的取り扱いは、1888年の[[ジゼッペ・ペアノ|ペアノ]]が最初である ({{harvnb|Grattan-Guinness|2000|loc=§5.2.2}}; {{harvnb|O'Connor|Robertson|1996}})。</ref>。これは、その元同士の加法と([[実数]]や[[複素数]]のような)スカラーによる乗法とを備えた空間のことを指すのであって、必ずしも物理的な系における運動量や位置といった[[幾何ベクトル|「幾何学的な」ベクトル]]をその元が同一視される必要はないという性質のものである。20世紀に入ると、数学者たちは新たな対象を扱うようになり、特に[[数列]]の空間([[級数]]論も含む)や函数の空間<ref>ヒルベルト空間の詳しい歴史は {{harvnb|Bourbaki|1987}} に扱われている。</ref> は自然に線型空間と看做すことができる。実際に、函数の場合なら、函数同士の和や定数をスカラーとする乗法が定義できて、それらの演算は空間ベクトルの加法とスカラー倍が従うのと同じ代数法則に従う。
 
20世紀の最初の10年間で、ヒルベルト空間の導入に繋がる展開が同時並行的に現れた。その一つは、[[ダフィット・ヒルベルト|ヒルベルト]]と[[エルハルト・シュミット|シュミット]]の[[積分方程式]]論の研究過程で見出された<ref>{{harvnb|Schmidt|1908}}</ref>。区間 &#x5b;''a'',''b''&#x5d; 上の二つの[[自乗可積分]]な実数値函数 ''f'', ''g'' は「内積」