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材料がどれくらいの繰り返し応力に耐えられるか、どれくらいの回数を与えるとどれくらいの応力で破断するのかをあらわすためには'''S-N曲線'''(S-N curve)が広く使われている。S-N曲線は、縦軸に応力振幅(stress amplitude)あるいは応力範囲(stress range)、横軸にその応力を繰り返し負荷して破断するまでの繰り返し回数(number of cycles)の[[対数]]で表される[[グラフ]]である。S-N曲線は、世界で最初にS-N曲線を見つけ出したドイツの技術者アウグスト・ヴェーラーの名前から、ヴェーラー曲線(Wöhler curve)」と呼ばれることもある。材料のS-N曲線を求めるためには、疲労試験装置に試験片を取り付け、破断するまで繰り返し応力を加えて求められる。
繰り返し数が10<sup>5</sup>回程度以上で発生する疲労破壊を高サイクル疲労(high cycle fatigue)と呼び、10<sup>4</sup>回程度以下で発生するものを低サイクル疲労(low cycle fatigue)あるいは塑性疲労と呼ぶ<ref name = "機械工学辞典_1109"/><ref name = "疲労設計便覧_8"/>。低サイクル疲労では負荷される応力が材料の[[降伏 (物理)|降伏応力]]以上となるため、材料の疲労試験をする際には、繰り返し応力振幅を一定にして試験する場合と繰り返しひずみを一定にして試験する場合で結果が異なる。繰り返しひずみ一定の場合の疲労評価を表す場合は、応力振幅の代わりに全塑性ひずみ幅Δε<sub>t</sub>を用いたε-N曲線が使用される<ref name = "疲労設計便覧_133"/>。またさらに、10<sup>7</sup>回以上の繰り返し数でも疲労破壊が起こる場合があり、このような繰り返し数領域での疲労を超高サイクル疲労(very high cycle fatigue)あるいはギガサイクル疲労(Gigacycle fatigue)などと呼ぶ<ref>{{Cite
鉄鋼系材料であれば、10<sup>6</sup>から10<sup>7</sup>回ほど繰り返したところで、S-N曲線がほぼ横ばいになり、それ以下の応力では何度回数を繰り返しても破断しないと考えられる応力振幅の限界点が存在する場合がある。この時の応力振幅を[[疲労限度]](fatigue limit)または耐久限度(endurance limit)と呼び、長期間変動荷重に晒されるものを設計する際の目安になる。ただし、対象となる部材の表面状態や欠陥・切欠き等の有無、雰囲気、外気温度、繰り返し応力の加わり方などによって疲労限度は大きく異なり、あるいは疲労限度が存在しなくなる場合も存在する。疲労の許容応力をどのように評価するかは、実験値の疲労限度のみならず、対象物の実際の使用状況を検討し、多くの影響因子を考慮して決める必要がある。また、右下がりに傾斜している範囲の応力を時間強度(strength at finite life)あるいは単に疲労強度(fatigue strength)と呼び{{refnest|group="注釈"|ただし疲労限度も含めたその材料の一般的な疲労に対する強度のことを疲労強度と呼ぶことも多い。}}、例えば10<sup>6</sup>回に対応する時間強度(応力)を10<sup>6</sup>時間強度などと呼ぶ。[[アルミニウム]]や[[黄銅]]、あるいは[[プラスチック]]などは、鉄鋼系材料のような明確な疲労限度を持たず、繰り返し回数を多くするほど破断応力は低下する傾向を示す。このような材料では10<sup>7</sup>~10<sup>8</sup>回程度の時間強度を疲労限度と同じような目安と見なして取り扱う<ref name = "機械工学辞典_1110"/>。▼
S-N曲線であらわされる耐久性は、装置上で試験片に、ごく単純な正弦波状の繰り返し応力を加え続けたものであり、材料の形状や温度変化、[[腐食]]など性質の変化、時間的に非連続的な応力がかかることなどは考慮されていない。そのため実際に材料が使われている状況とは違うことを考慮することが必要である<ref name = "金属疲労の盲点"/>。
破断する確率を統計的に取り扱う場合には[[ワイブル分布]]が用いられる。
=== 疲労限度 ===
{{Main|疲労限度}}
▲鉄鋼系材料であれば、10<sup>6</sup>から10<sup>7</sup>回ほど繰り返したところで、S-N曲線がほぼ横ばいになり、それ以下の応力では何度回数を繰り返しても破断しないと考えられる応力振幅の限界点が存在する場合がある。この時の応力振幅を[[疲労限度]](fatigue limit)または耐久限度(endurance limit)と呼び、長期間変動荷重に晒されるものを設計する際の目安になる。ただし、対象となる部材の表面状態や欠陥・切欠き等の有無、雰囲気、外気温度、繰り返し応力の加わり方などによって疲労限度は大きく異なり、あるいは疲労限度が存在しなくなる場合も存在する。疲労の許容応力をどのように評価するかは、実験値の疲労限度のみならず、対象物の実際の使用状況を検討し、多くの影響因子を考慮して決める必要がある。また、右下がりに傾斜している範囲の応力を時間強度(strength at finite life)あるいは単に疲労強度(fatigue strength)と呼び{{refnest|group="注釈"|ただし疲労限度も含めたその材料の一般的な疲労に対する強度のことを疲労強度と呼ぶことも多い。}}、例えば10<sup>6</sup>回に対応する時間強度(応力)を10<sup>6</sup>時間強度などと呼ぶ。[[アルミニウム]]や[[黄銅]]、あるいは[[プラスチック]]などは、鉄鋼系材料のような明確な疲労限度を持たず、繰り返し回数を多くするほど破断応力は低下する傾向を示す。このような材料では10<sup>7</sup>~10<sup>8</sup>回程度の時間強度を疲労限度と同じような目安と見なして取り扱う<ref name = "機械工学辞典_1110"/>。
=== 寿命予測式 ===
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==== マイナー則 ====
変動応力を受ける場合の寿命予測には、マイナー則または線形累積損傷則と呼ばれる経験則が使用される。
{{Main|線形累積損傷則}}
| author = 遠藤達雄・松石正典・光永公一・小林角市 | title = 「Rain Flow Method」の提案とその応用 | journal = 九州工業大学研究報告 | year = 1974 | publisher = 九州工業大学 | url = https://ds.lib.kyutech.ac.jp/dspace/bitstream/10228/3927/1/tech28_p33_62.pdf | format = PDF}}</ref>が良く使用されている<ref name = "疲労き裂_182"/>。
▲マイナー則により寿命を予測するには、実働応力の応力頻度分布(発生する''σ<sub>i</sub>''とそれに対する''n<sub>i</sub>'')を求める必要がある。このために種々の応力頻度計数法が提案されており、遠藤らにより提案されたレインフロー法(雨だれ法)([[w:rainflow-counting algorithm|rainflow-counting algorithm]])<ref name = "「Rain Flow Method」の提案とその応用"/>が良く使用されている<ref name = "疲労き裂_182"/>。
== 歴史 ==
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[[1870年]]、ヴェーラーは、車輪に10<sup>6</sup>回程度振動を繰り返した後は、どれだけ回数を繰り返しても耐久応力が下がらず、永久に耐え続けられるある一定の応力があることを発表した。このことをヴェーラー自身は耐久限度(Endurance limit)と呼んでいたが、後に疲労限度と呼ばれるものと全く同じである。
[[1963年]]、ポール・パリス(Paul Paris)らにより、き裂の繰返し荷重1サイクル当たりの進展速度(da/dN)が応力拡大係数で整理でき、進展速度を予測可能であることが発表された<ref>{{Cite
[[1971年]]、ウォルフ・エルバー(Wolf Elber)により、き裂先端部の局所的塑性変形により引張荷重下でもき裂が閉じるき裂閉口現象の発生機構とその重要性について発表された<ref name = "疲労き裂_4"/>。
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=== 出典 ===
{{Reflist|2|refs=
<ref name = "機械工学辞典_1110">[[#機械工学辞典|「機械工学辞典」p.1110]]</ref>
<ref name = "機械工学辞典_1211">[[#機械工学辞典|「機械工学辞典」p.1211]]</ref>
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<ref name = "絵とき「金属疲労」基礎のきそ">[[#絵とき「金属疲労」基礎のきそ|「絵とき「金属疲労」基礎のきそ」]]</ref>
<ref name = "金属疲労の盲点">[[#金属疲労の盲点|「金属疲労の盲点」]]</ref>
<ref name = "疲労き裂_182">[[#疲労き裂|「疲労き裂」p.182]]</ref>▼
<ref name = "疲労き裂_4">[[#疲労き裂|「疲労き裂」p.4]]</ref>
▲<ref name = "疲労き裂_182">[[#疲労き裂|「疲労き裂」p.182]]</ref>
<ref name = "疲労設計便覧_2">[[#疲労設計便覧|「疲労設計便覧」p.2]]</ref>
<ref name = "疲労設計便覧_133">[[#疲労設計便覧|「疲労設計便覧」p.133]]</ref>
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<ref name = "疲労設計便覧_205">[[#疲労設計便覧|「疲労設計便覧」p.205]]</ref>
<ref name = "疲労設計便覧_129-130">[[#疲労設計便覧|「疲労設計便覧」pp.129-130]]</ref>
<ref name = "機械材料学_37">[[#機械材料学|「機械材料学」p.37]]</ref>
<ref name = "図解入門よくわかる最新金属疲労の基本と仕組み_12-14">[[#図解入門よくわかる最新金属疲労の基本と仕組み|「図解入門よくわかる最新金属疲労の基本と仕組み」pp.12-14]]</ref>
}}
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|ISBN=978-4-7980-2972-6
|ref=図解入門よくわかる最新金属疲労の基本と仕組み
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