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1光年は約63 241[[天文単位]]に等しい。光年で示されることの多い[[距離]]のものについては記事「[[1 E15 m]]」を参照のこと。
 
光年に関連して、[[光]]が1日間・1時間・1分間・1秒間に進む距離として'''光日'''・'''光時'''・'''光分'''・'''[[光秒]]'''という[[単位]]も定義できる。1光日は 25 902 068 371 200m、1光時は 1 079 252 848 800 m、1光分は 17 987 547 480 m、1光秒は 299 792 458 m となる。大まかな距離を表すのに1光年の12分の1の'''光月'''という単位も時折使われている<ref>{{citation | author = Fujisawa, K.; Inoue, M.; Kobayashi, H.; Murata, Y.; Wajima, K.; Kameno, S.; Edwards, P. G.; Hirabayashi, H.; Morimoto, M. | year = 2000 | title = Large Angle Bending of the Light-Month Jet in Centaurus A | url = http://sciencelinks.jp/j-east/article/200123/000020012301A0179284.php | journal = Publ. Astron. Soc. Jpn. | volume = 52 | issue = 6 | pages = 1021–26}}</ref><ref>{{citation | author = Junor, W.; Biretta, J. A. | year = 1994 | contribution = The Inner Light-Month of the M87 Jet | url = http://articles.adsabs.harvard.edu/full/1994cers.conf...97J | title = Compact Extragalactic Radio Sources, Proceedings of the NRAO workshop held at Socorro, New Mexico, February 11–12, 1994 | editor = Zensus, J. Anton; Kellermann; Kenneth I. | location = Green Bank, WV | publisher = National Radio Astronomy Observatory (NRAO) | page = 97}}</ref>。ただし、光月は月の時間間隔を定めていないので厳密な定義が存在しない<ref group="注釈">ユリウス暦では1か月は平均30.4375日であり、ユリウス年(365.25日)を12で割った値に等しい。ただグレゴリオ暦では30.436875日となるので、どちらの暦由来の値を使うかを指定しないかぎり「光月」は定義できない</ref>。
 
== 光年の扱いに注意すべきこと ==
光年は、かならず時間の経過を考慮する必要がある<ref group="注釈">これは光年に限ったことではなく、距離を測る尺度に有限である光速を使うには、時間との積をとったスケールが必要となることよる要請である。</ref>ことには注意すべきである。例えば[[地球]]からの距離が1光年の星を見る場合、見ている光はその星から1年前に発せられたものであるため、1 年前に 1 光年の距離にあったその星をいま地球で見ていることになる。仮に、たった今その星が何らかの原因で消滅したとしても、地球からはその星の 1 年前の光しか見ることができないため、みかけ上は今後1年間は星がまだ存在しているように見える。
 
大きな[[赤方偏移]]が観測されるような非常に遠方の天体の場合、例えば2014年現在最も遠い天体である[[MACS0647-JD]]は赤方偏移 z = 10.7 の値を持ち、距離は 133 9200 万光年、[[ハッブルの法則]]により地球からは光速の 98.5% にあたる 295,444 km/s で後退しているように見えると計算される。しかし、これはこの天体から133 9200 万年前に発せられた光を元に計算されたみかけ上の値(このような距離を[[{{仮リンク|光行距離]]|en|Distance measures (cosmology)#Light-travel distance}}、{{lang-en-short|''Light-travel distance''}} という)であり、実際はいま時点では 319 3900 万光年の距離(このような距離を[[{{仮リンク|共動距離]]|en|Comoving distance}}、{{lang-en-short|''Comoving Distance''}} という)<ref>例えば、走っている車の位置を測るのに、先に車の後尾の位置を測り、時間を置いてから車の先頭の位置を測って車の長さを割り出すのと同じである。車の速度や時刻を考慮せずに位置だけで測ると、車は進んでしまっているので車の長さは実際より長いと結論してしまう。</ref>にあり、後退速度は実光速の2倍以上にもなる 695,115 km/s である。このようなスケールでの後退速度は実際は[[フリードマン・ルメートル・ロバートソン・ウォーカー計量|計量]]自体の拡大速度であり、天体自体はこの計量上を光速度以下で運動していて[[特殊相対性理論|光速不変の原理]]とは矛盾しない。
 
== 光年の換算 ==
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* = 約 0.306 601 pc([[パーセク]])
 
=== 歴史的な値および不正確な値 ===
1984年以前、[[国際天文学連合]] (IAU) は1964年に定めた[[太陽年]](ユリウス年とは異なる)と光速の実測値(定義値ではない)を天文定数体系に含めており、それを1968年から1983年まで使用していた<ref name=Seidelmann>P. Kenneth Seidelmann, ed., ''[http://books.google.com/books?ct=result&id=uJ4JhGJANb4C&pg=PP1&lpg=PP1#PPA656,M1 Explanatory Supplement to the Astronomical Almanac]'' (Mill Valey, California: University Science Books, 1992) 656. ISBN 0-935702-68-7</ref>。[[サイモン・ニューカム]]は、[[元期|J1900.0]]の平均太陽年 31 556 925.9747 [[暦表時|暦表秒]]と光速度 299 792.5 km/s から1光年を 9.460 530{{E|15}} m と計算した(光速度の[[有効数字]]7桁で丸めている)。この値がいくつかの最近の文献にも記載されているが<ref>Sierra College, [http://astronomy.sierracollege.edu/Resources/Reference/basic%20Contants%20app2.htm Basic Constants]</ref><ref>Marc Sauvage, [http://marc.sauvage.free.fr/astro_book/Cts_pages/astro.html Table of astronomical constants]</ref><ref>Robert A. Braeunig, [http://www.braeunig.us/space/constant.htm Basic Constants]</ref>、おそらく1973年の有名な本<ref>C. W. Allen, ''Astrophysical Quantities'' (third edition, London: Athlone, 1973) 16. ISBN 0-485-11150-0</ref>を参照したものと思われ、この文献は2000年まで改版されていなかった<ref>Arthur N. Cox, ed., ''[http://books.google.com/books?id=w8PK2XFLLH8C&pg=PP1&lpg=PP1#PPA12,M1 Allen's Astrophysical Quantities]'' (fourth edition, New York: Springer-Valeg, 2000) 12. ISBN 0-387-98746-0</ref>。
 
他の高精度の値は一貫したIAU体系のみからでは導出できない。9.460 536 207{{E|15}} m という不正確な値がいくつかの現代の文献に見られるが<ref>Nick Strobel, [http://www.astronomynotes.com/tables/tablesa.htm Astronomical Constants]</ref><ref>[[高エネルギー加速器研究機構|KEK]]B [http://www-acc.kek.jp/kekb/Introduction/misc/astronomical_constant.html Astronomical Constants]</ref>、平均[[グレゴリオ暦|グレゴリオ年]]365.2425日(31 556 952秒)と光速度の定義 (299 792 458 m/s) を使って計算したものであろう。9.460 528 405{{E|15}} m という不正確な値もあるが<ref>Thomas Szirtes, [http://books.google.com/books?id=8Fk__-TUdCEC&pg=PA60 ''Applied dimensional analysis and modeling''] (New York: McGraw-Hill, 1997) 60.</ref><ref>[http://www.scienceclarified.com/everyday/Real-Life-Chemistry-Vol-7/Sun-Moon-and-Earth.html Sun, Moon, and Earth: Light-year]</ref>、これはJ1900.0の平均太陽年と光速度の定義を使って求めたものであろう。
 
== 「光年」を使った距離の表現事例 ==
1光年以下の単位(光月など)は、[[星系]]内の天体に関してよく使われる。光年は比較的近い[[恒星]]間の距離、同じ[[渦巻銀河]]内や[[球状星団]]内の恒星間の距離を表すのに使われる。
 
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|-
|46.5{{E|9}} ly
|地球から[[観測可能な宇宙]]の果てまでの[[共動距離]]は約4645.57ギガ光年(465(457億光年)である。これは[[宇宙マイクロ波背景放射]]から得られる[[宇宙の年齢]]より大きい。詳しくは[[観測可能な宇宙#誤解]]を参照。
|}
 
=== 宇宙の大きさと光年の理解との関係 ===
== 備考 ==
”[[観測可能な宇宙]]”の大きさは、この共動距離の理解からおよそ 457 億光年(14 ギガパーセク)<ref name="mapofuniverse">{{cite journal|last = Gott III|first = J. Richard|coauthors = Mario Jurić, David Schlegel, Fiona Hoyle, Michael Vogeley, Max Tegmark, Neta Bahcall, Jon Brinkmann|title = A Map of the Universe|url=http://www.astro.princeton.edu/universe/ms.pdf|journal = The Astrophysics Journal|volume = 624|issue = 2|page = 463|year = 2005|doi = 10.1086/428890|bibcode=2005ApJ...624..463G| arxiv=astro-ph/0310571}}</ref>とされているが、これは [[宇宙マイクロ波背景放射]]({{lang-en-short|''cosmic microwave background radiation''}}、CMB )の赤方偏移の観測値 z = 1090 から計算される共動距離の値で、誕生してからおよそ 38 万年後<ref name='planck_cosmological_parameters'>{{cite arXiv |class=astro-ph.CO | eprint=1303.5076 | title=Planck 2013 results. XVI. Cosmological parameters | author=Planck collaboration | year=2013}}</ref>の宇宙が膨張により移動して現在「在る」場所から、それを観測している現在の我々までの距離をいう(つまり、457 億年前の光をいま観察しているのでもないし、457 億光年離れた距離を計測できているわけでもない。観測できる宇宙の過去は宇宙が誕生した138億年前が限界である。{138 億年 - 38 万年}前の光を発した空間が「現在」は 457 億年先にまで進んでいるという説明にすぎず、「現在」までにその空間で何が起きたかを我々は知る術もない)。宇宙はもっと先にまで広がっているかもしれないが<ref group="注釈">[[宇宙原理]]に従えば、宇宙はどこまでも果てしなく広がっている。</ref>、「(理論の検証のための)観測ができない以上は考えても意味が無い(=理論が証明できない)」とするのが現在の[[宇宙論]]の立場である。”観測可能な宇宙”は宇宙論の立場では我々を中心に置いたこの半径 457 億年の球体内となり、この球面が宇宙論の立場での「宇宙の果て」「宇宙の大きさ」ということになる。CMB の観察結果よりも過去の宇宙の情報を知る手段で観測できるのであれば、”観測可能な宇宙”はさらに大きくなる<ref group="注釈">例えば[[宇宙ニュートリノ背景]](CνB、{{lang-en-short|''Cosmic neutrino background''}} )を考慮した理論計算では、観測可能な宇宙は半径 466 億光年、14.3 ギガパーセクとさらに 2% ほど大きくなる。[[重力波]]を用いる理論でさらに過去を見ようとする試みもある。宇宙の年齢のすべてを見通せるとすれば、無限遠の宇宙も観測可能となる。</ref>。
「[[年]]」とついているが[[時間]]の単位ではない。[[日本]]の漫画やゲーム作品では、時間の単位と勘違いした誤用を用いたネタがみられる<ref>漫画では新声社刊『ゲーメストワールドVol5』66頁から70頁に掲載された漫画のキャラクターにこれを用いて頭の悪さを表現したり、ゲームボーイソフト『[[ポケットモンスター 赤・緑]]』のポケモントレーナーにこのネタをセリフに用いたキャラクターがいる事が確認できる。また「[[Happy Go Lucky! ドキドキ!プリキュア/この空の向こう|この空の向こう]]」ではこのことをネタにした歌詞が存在する。</ref>。
 
逆説的だが、我々が現在観測している CMB の光は、赤方偏移から逆算すると共動距離で 3600 万光年しか進んでいないことになる(これも、3600 万年前の[[黒体]]放射を観測しているのではないし、3600 万光年の距離を実測できているわけでもない)。過去のそれより小さい距離(共動距離)で起きた事象を我々は観測できていない<ref group="注釈">これはその事象が我々をすでに通りすぎてしまったから観測できないのではない。宇宙原理により、過去の事象はその後の[[光円錐]]内の全宇宙で観測できるはずだが、まだ我々は CMB より以前の光を捉える手段がないのである。</ref>。
== 脚注・出典 ==
 
<references/>
このように矛盾に思えるような光年スケールでの解釈は、宇宙が拡大しているという事実と、有限である光速を使った'''光年'''を距離の単位に使うという事実の両方からくる非日常さゆえに理解が難しいとされることがある<ref group="注釈">日常生活では光速が有限であることさえも感じとれる場面がほとんどないが、近年では[[放送]]の[[衛星中継]]や[[惑星探査]]の映像の中継、[[GPS]]計測などでこれは徐々に認識されつつある。</ref><ref group="注釈">一部の観測できる[[超光速]]の事象についても同様のことが言える。詳細は[[光速]]を参照。</ref>。
 
=== 時間の単位であるとの誤解 ===
「[[年]]」とついているが[[時間]]の間隔や日付や時刻の単位ではなく、距離の単位である。
 
「[[年]]」とついているが[[時間]]の単位ではない。[[日本]]の漫画やゲーム作品では、時間の単位と勘違いした誤用を用いたネタがみられる<ref group="注釈">漫画では新声社刊『ゲーメストワールドVol5』66頁から70頁に掲載された漫画のキャラクターにこれを用いて頭の悪さを表現したり、ゲームボーイソフト『[[ポケットモンスター 赤・緑]]』のポケモントレーナーにこのネタをセリフに用いたキャラクターがいる事が確認できる。また「[[Happy Go Lucky! ドキドキ!プリキュア/この空の向こう|この空の向こう]]」ではこのことをネタにした歌詞が存在する。</ref>。
 
== 備考脚注 ==
=== 注釈 ===
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=== 脚注・出典 ===
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== 関連項目 ==