「自由貿易」の版間の差分

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経済学者の[[ディーン・ベーカー]]<ref name="baker2013">[http://www.theguardian.com/commentisfree/2013/nov/11/support-real-free-trade-medical-costs Want 'free trade'? Open the medical and drug industry to competition] Dean Baker, The Guardian, 11 November 2013</ref>は、近年の自由貿易協定は一般労働者の労働条件を向上させるものではないと論じる。現実には[[自由貿易協定]]は、多くの経済学者が理想として描くものとは大きくかけ離れているとベーカーは述べる。例えば[[NAFTA]]とその後続協定は、それらの協定がアウトソーシングを容易にするものだったために、労働者の賃金を下げる性格を有する協約だったからである。NAFTAによって米国の鉄鋼所職工や自動車製造労働者が、発展途上国の低賃金労働者との競争にさらされ、その結果米国の製造業労働者の賃金低下を招いた。NAFTAなどの協定は、大企業がその国の民主的プロセスを握りつぶすために使う道具であるとベーカーは論じる。環境保護、安全、健康などについての基準は民主的に選ばれた政権によって規制がかけられる。大企業は、NAFTAその他の協定を利用してそれらの規制を妨害することができる。[[環太平洋戦略的経済連携協定]]でも同じことが起こるとベーカーは述べる。米国では、とある特許政策のために、抑制されないほどの独占が数十年間も製薬会社に与えられていた<ref name="baker2013" />。米国民は、米国以外の先進国(それら先進国では、製薬会社による市場独占をある程度制限している。)での価格の2倍の価格で処方薬剤を購入している。
 
ジョセフ・E・スティグリッツは、アメリカ財務省・IMFの「ワシントン・コンセンサス」が、貿易の自由化・資本の自由化を強制することで、途上国の人々を苦境に陥らせていると指摘している<ref>田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、115-116頁。</ref>。ジョセフ・E・スティグリッツは「貿易の自由化は経済成長をもたらすとされているが、ひいき目で見てもこの主張を裏づける証拠はない。国際貿易協定が発展途上国を経済成長に導けなかった一因にバランスの欠如がある。先進国には裁量的な関税率が認められる一方で、途上国には平均して4倍の関税率を設けてきた。また、途上国が国内産業への補助金を撤廃させられた一方で、先進国は巨額の農業の補助金が認められてきた」と指摘している<ref>ジョセフ・E・スティグリッツ 『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』 徳間書店、2006年、53頁。</ref>。スティグリッツは、[[独占]]・[[寡占]]の弊害を防ぐための[[競争政策]]を提案している<ref>田中秀臣 『不謹慎な経済学』 講談社〈講談社biz〉、2008年、116頁。</ref>。
 
またスティグリッツは「発効から10年以上を経て、NAFTAの失敗は既成事実となっている<ref>ジョセフ・E・スティグリッツ 『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』 徳間書店、2006年、114頁。</ref>」「NAFTA成立から10年間で、アメリカ・メキシコ両国間の所得格差は10%以上広がり、メキシコ経済を急成長させるという結果ももたらさなかった。メキシコの10年間の経済成長率は、実質で一人当たりの国民所得で1.8%に過ぎなかった。また、NAFTAはメキシコの貧困を悪化させた一因となった。NAFTAは関税を撤廃させた一方で、非関税障壁が丸ごと存続された<ref>ジョセフ・E・スティグリッツ 『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』 徳間書店、2006年、117-118頁。</ref>」「関税にとらわれ過ぎた結果、メキシコは競争力強化に必要な措置をおろそかにしてしまった<ref>ジョセフ・E・スティグリッツ 『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』 徳間書店、2006年、118頁。</ref>」と指摘している。