「観念的競合」の版間の差分

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== 位置付け ==
観念的競合については、実体法上一罪であるとする見解と、実体法上は数罪であるが[[科刑上一罪]]として取り扱われるにすぎないとする見解があるが、判例・通説は科刑上一罪説である。すなわち、[[最高裁判所 (日本)|最高裁]]昭和49年5月29日大法廷判決<ref>最高裁判所昭和49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁・[http://www.courts.go.jp/searchapp/jhsp0030hanrei_jp/detail2?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=26882&hanreiKbnid=0151047 判例情報]</ref>は、観念的競合の規定は、1個の行為が同時に数個の犯罪[[構成要件]]に該当して数個の犯罪が競合する場合において、これを処断上の一罪として刑を科する趣旨のものであるとする。
 
観念的競合が併合罪の場合より軽く扱われる理由については、犯罪的意思活動の一回性・単一性のゆえに[[責任]]非難が減少するため、数個の犯罪の間で違法要素が共通・重複する部分があることから全体として[[違法性]]が減少するため、あるいはその双方が減少するためなどと説明されている。
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作為犯の場合は、行為者の動態を外部的・客観的に認識しやすいのに対し、[[不作為犯]]の場合は、不作為の状態があるだけであるため、これが同時に複数の作為義務違反に当たる場合に観念的競合と解するか併合罪とするかが大きな問題となる。
 
ひき逃げ犯人が現場から逃走する場合の、[[道路交通法]]上の救護義務違反の罪(同法72条1項前段、117条1項)と報告義務違反の罪(同法72条1項後段、119条1項10号)の罪数について、二つの不作為犯がそれぞれ成立し併合罪の関係に立つとするのが従来の判例<ref>最高裁判所昭和38年4月17日大法廷判決・刑集17巻3号229頁・[http://www.courts.go.jp/searchapp/jhsp0030hanrei_jp/detail2?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=28512&hanreiKbnid=0151753 判例情報]</ref>・多数説であったが、最高裁昭和51年9月22日大法廷判決<ref>最高裁判所昭和51年9月22日大法廷判決・刑集30巻8号1640頁・[http://www.courts.go.jp/searchapp/jhsp0030hanrei_jp/detail2?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=26687&hanreiKbnid=0151103 判例情報]</ref>は、自然的観察のもとでは「ひき逃げ」という1個の行為であるとして、従来の判例を変更し、両者は観念的競合に当たるとした。
 
=== 過失犯の罪数 ===
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=== 共犯の罪数 ===
最高裁昭和57年2月17日決定<ref>最高裁判所昭和57年2月17日決定・刑集36巻2号206頁・[http://www.courts.go.jp/searchapp/jhsp0030hanrei_jp/detail2?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=26313&hanreiKbnid=0157031 判例情報]</ref>は、[[幇助]]罪の個数は正犯の罪の数によって決定され、幇助罪が数個成立する場合にそれらが1個の行為によるものであるかは、幇助行為それ自体について判断すべきであるとした。
 
== 処断刑 ==
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どの刑が最も重いかは刑法10条により定まる。原則として、重いものから死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料の順であり(同条1項)、同じ刑種の間では、刑期や罰金額で比較し(同条2項)、刑期・罰金額が同じ場合には犯情の重い方を「重い刑」とする(同条3項)。
 
刑の比較に際しては、刑種の選択や刑の加重・減軽を行う前の[[法定刑]]自体を比較することとされている(大審院大正5年4月17日判決・民録22輯570頁)。すなわち、重い刑種のみをそれぞれ取り出して比較対照するという'''重点的対照主義'''がとられている(最高裁昭和23年4月8日判決<ref>最高裁判所第一小法廷判決昭和23年4月8日(昭和22年(れ)第222号・昭和23年4月8日第一小法廷判決・刑集2巻4号307頁・[http://www.courts.go.jp/searchapp/jhsp0030hanrei_jp/detail2?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=32636&hanreiKbnid=0156415 判例情報]</ref>)。もっとも、判例は、刑法54条1項の規定は軽い罪の最下限の刑よりも軽く処断することはできないという趣旨を含むとして、重点的対照主義を修正している(最高裁昭和28年4月14日判決<ref>最高裁判所昭和27年(あ)664号・三小法廷判決昭和28年4月14日(昭和27年(あ)三小法廷判決・664号)刑集7巻4号850頁・[http://www.courts.go.jp/searchapp/jhsp0030hanrei_jp/detail2?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=31183&hanreiKbnid=0154709 判例情報]。重い罪の法定刑が懲役刑と罰金刑で、軽い罪の法定刑が懲役刑のみの場合、罰金刑を選択することはできない。</ref>、最高裁昭和32年2月14日判決<ref>最高裁判所第一小法廷判決昭和32年2月14日(昭和29年(あ)第3573号・昭和32年2月14日判決・刑集11巻2号715頁・[http://www.courts.go.jp/searchapp/jhsp0030hanrei_jp/detail2?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=30051&hanreiKbnid=0151365 判例情報]</ref>)。また、最も重い罪の刑は懲役刑のみであるがその他の罪に罰金刑の任意的併科の定めがあるときには、最も重い罪の懲役刑にその他の罪の罰金刑を併科することができる(最高裁平成19年12月3日決定<ref>最高裁判所第一小法廷決定平成19年12月3日(平成18年(あ)第2516号・平成19年12月3日第一小法廷決定・刑集61巻9号821頁・[http://www.courts.go.jp/searchapp/jhsp0030hanrei_jp/detail2?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNoid=35462&hanreiKbn=01 判例情報]・判例タイムズ1273号135頁。この事例では、法定刑が「10年以下の懲役」である[[詐欺罪]]と、法定刑が「5年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科」である[[組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律|犯罪収益等隠匿罪]]が観念的競合に立つ場合に、重い詐欺罪の懲役刑に犯罪収益等隠匿罪の罰金刑を併科することが許される。</ref>)。
 
== 訴訟法上の取扱い ==