「自由貿易」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
m 記述の移動
m →‎自由貿易の問題: リンク追加
111行目:
== 自由貿易の問題 ==
===グローバル化と病気の播種===
人的物的資本移動の自由に伴い、細菌やウイルスまでも自由に国境を越えて移動するようになっており、そのリスクが国家間で双方向に伝わる<ref name=TSMH2014aug26E>[http://www.smh.com.au/comment/ebola-virus-spreads-while-governments-sleep-on-the-job-20140825-105czk.html Ebola virus spreads while governments sleep on the job] Peter Hartcher, Comment, The Sydney Morning Herald, 26 Aug 2014 </ref>。[[グローバル化]]された世界では一度伝染性疾患が発生すると、ペットやその他の動物の飛行機や船による輸出入を通して一気にそれらの疾患が蔓延してしまう。[[ジェフリー・サックス]]は、これら伝染性疾患や[[新興感染症]]は[[グローバリゼーション]]の新たな側面であり、人やモノの移動によってこの世界がいかに伝染性疾患に脆弱になっているかを示していると述べる
<ref name=sachs2014aug17E>
[http://www.bworldonline.com/content.php?section=Opinion&title=important-lessons-from-ebola-outbreak&id=92924 Important lessons from Ebola outbreak] BusinessWorld, Opinion, Jeffrey Sachs, August 17, 2014</ref>。
125行目:
 
===賃金格差増大===
無制限な資本移動の自由によって開発途上国における賃金格差が増大することが近年{{いつ|date=2014年9月}}わかってきている。1993年から2008年までの間に、サハラ以南のアフリカの国々の[[ジニ係数]]は9%増加した<ref name=economist2014aug23G>[http://www.economist.com/news/finance-and-economics/21613280-why-globalisation-not-reducing-inequality-within-developing-countries-revisiting Free exchange: Revisiting Ricardo] The Economist, 23 Aug 2014</ref>。この現象はリカードの比較優位説に欠陥があることを示唆するものであり、ノーベル賞学者[[エリック・マスキン]]らによる比較優位説修正の動きが始まっている。マスキンによる労働者マッチング法によれば、[[グローバル化]]によって[[中間財]]のアウトソース傾向が強まり、発展途上国の(とりわけ輸出企業の)熟練労働者は先進工業国の非熟練労働者と共同しやすくなり賃金が伸びていく。途上国の非熟練労働者は、グローバル化以前はその途上国内の熟練労働者と共に働いていたがグローバル化によってその共同作業者を失いがちになり、その結果生産性が低下し賃金が伸びない<ref name=economist2014aug23G />。実際にメキシコの輸出企業の労働者は非輸出企業に比べて60%高い賃金を得ている<ref name=economist2014aug23G />。インドネシアでは外資系企業の社員は国産企業の社員より70%高い賃金を得ている<ref name=economist2014aug23G />。
 
経済学者の[[新井明 (経済学者)|新井明]]は「例えば韓国と北朝鮮を比較した場合、輸出額・国民所得は格段の差がついている。韓国の人口が北朝鮮の2倍となったことを考えると格差は大きい。国を開き、比較優位を活かして変化させながら他国と貿易を進めれば、経済が発展する可能性を持つ」と指摘している<ref>新井明・柳川範之・新井紀子・e-教室編 『経済の考え方がわかる本』 岩波書店〈岩波ジュニア新書〉、2005年、171頁。</ref>。
138行目:
 
===金融政策の不確定性の増大===
[[リーマンショック]]後の不況と高失業率に対して米国[[FRB]]は大規模な[[量的緩和]]で対処してきたが、緩やかな回復傾向にある経済にあってもパートタイム労働者の割合の増加や労働参加率の低下やターンオーバーの増加などが見られる。これらが周期的要因で起きているなら金融政策で対処できるが、いくらかの要因には対処できないとする見解を[[ジャネット・イエレン]]をはじめFOMCは出している<ref name=macrobusiness2014aug25G />。またグローバル化(あるいは企業が企業収益のみを追求すること)によって労働者の[[実質賃金]]が低下するケースを[[FOMC]]が金融政策ではコントロールできないと考えており<ref name=macrobusiness2014aug25G>[http://www.macrobusiness.com.au/2014/08/janet-yellen-brings-the-doves/ Janet Yellen brings the doves] MacroBusiness, 25 Aug 2014</ref>、これによって賃金上昇の阻害がおこり労働指標が現実の労働市場を反映しない可能性がある。これによってFOMCのメンバーが、利上げなど金融政策の出口政策を考える上での不確定要素となってしまっている<ref name=macrobusiness2014aug25G />。
 
経済学者の[[アンナ・シュウォーツ]]は「金融当局が政策的に間違わなければ、本来、金融危機は短期的な現象である。公衆の追加的な通貨への需要が緩和されれば、危機は自然に終息する」と指摘している<ref>田中秀臣 『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、127頁。</ref>。