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{{画像提供依頼|date=2014年9月}}
'''Kamado Jiko'''('''カマド・ジコ''')とは、[[遠野市]]出身の食物栄養研究家{{Sfn|広報遠野|2010|p=10}}<ref group="注釈">広報遠野2010年6月No.60号p.10には『名刺に記した肩書きはずっと「'''食物栄養研究家'''」のまま。「研究に協力してもらった人々への恩返し」という、袈裟さんの活動のスタンスもずっと変わらなかった。』とあるので本人の意思を尊重。</ref>である[[岸田袈裟]]が[[アフリカ]]の[[ケニア]]で[[国際協力機構]]に参加していた時に遠野かまどを手本に発案し、アフリカの乳幼児死亡率低減と薪の使用量削減に成果を挙げた[[かまど]]である{{Sfn|読売国際協力賞|2007}}。「Jiko」とはスワヒリ語で「かまど」の意味。
 
== 注釈概説 ==
Kamado Jikoとは、[[遠野市]]出身の食物栄養研究家{{Sfn|広報遠野|2010|p=10}}<ref group="注釈">広報遠野2010年6月No.60号p.10には『名刺に記した肩書きはずっと「'''食物栄養研究家'''」のまま。「研究に協力してもらった人々への恩返し」という、袈裟さんの活動のスタンスもずっと変わらなかった。』とあるので本人の意思を尊重。</ref>である岸田袈裟が[[アフリカ]]の[[ケニア]]で[[国際協力機構]]に参加していた時に、自身が育った実家にあった《遠野かまど》(「改良かまど」)を手本にして、アフリカの家庭の諸事情も考慮に入れつつデザインし、アフリカで普及活動を行ったものである。
 
当初は最初期に導入されたEnzaro村の名を冠して「Enzaro Jiko」などと呼ばれ、後に岸田の名を冠して呼ばれる動きもあったが、Kamado Jikoの名が提案され、それが正式名称ということになった。→[[#名称の変遷]]
 
素人が手作りで作ることができ、材料は、粘土質の土・石・水・レンガであり、材料費はほとんどが無料で、材料の一部にレンガを使った場合でも日本円にして500円以下で済む。
 
鍋などを火にかける穴「かけ口」は3つあり、そのひとつに素焼き壷を置いておき飲料用の水はそこに入れ自然と熱せられるようにしておくことで、いつも安全な飲料水を飲めるようになり、感染症や寄生虫の害を減らすことができた。
 
Kamado Jikoには様々な利点があり、薪の使用量が従来の「三つ石かまど」の1/4になり森林保護になる、安全な飲料水をいつも得られるようになる、女性の家事の負担を軽減する(3つの調理が同時並行的にできる、薪拾いが減る、男性が台所にに興味を持ち参加する)、腰痛の減少、子供の怪我・やけどの減少 等々等々に役だつ。→[[#効果]]、[[#性能]]
 
アフリカではすでに20万家庭以上に設置されていると推定されており、毎日のようにどこかで製作・設置されているという。2012年にはオバマ大統領の祖母の家にも設置された。→[[#普及]]
 
== 歴史 ==
=== 考案にいたる経緯・背景 ===
=== 必要性 ===
ケニアは以前、国土の17%が森であったが、僅か30年間で2.3%にまで急減した。岸田は調査の結果、ケニアでは三つ石を置いただけのかまどを使っている人が96.8%に達しており(その結果かまどで大量の木材を燃やして消費してしまっており)、かまど(台所で燃やす薪を減らさなければ森は守れず水源も失われると考えた。また1991年に無償の診療が行なわれた際に次のことが判った。
* 三つ石の所で転ぶため子供の火傷が非常に多い
* 女性たちが[[腰痛]]を訴える
* 感染症(腸チフス・コレラ)や[[寄生虫]]も多い
という事が判った。アンケートの回答には、年を追うごとに薪を取りに行く森が逃げていくから年々遠くに行かなければいけない、という意見もあった{{Sfn|環境を考える経済人の会21|2003|pp=3-4,11}}。これらの問題をどう解決するか考えた岸田は村人達と話し合いを重ね、電気も水道もない場所で安全な[[飲料水|飲み水]]を入手する方法として、かけ口」(=鍋などを置くところ)が3つある Enzaro Jiko を考案した{{Sfn|さくまゆみこ|2009|pp=14-15,32}}。
 
[[File:Tono-furusato-mura22s3872.jpg|right|thumb|160px|(参考画像)ウマガマ([[岩手県]][[遠野市]]・[[遠野ふるさと村]])]]
[[Image:Suijik.JPG|right|thumb|160px|(参考画像)日本の改良かまど、「かけ口」が3つあるものの例。あくまで日本のもの。アフリカのKamado Jikoそのものではない<!--Kamado Jikoの写真を記事冒頭に掲載していない場合は、読者に誤解を招かないように、こういう断り書きが必要。-->]]
=== 遠野かまどとの比較 ===
次に、岸田袈裟が手本にした《遠野かまど》(改良かまど)とKamado Jikoとの比較をしてみる。参考までに「ウマガマ(馬釜)」との比較もする。これによって設計上、何を継承しており、何を変更したかが判るであろう。
 
* 「改良かまど」とは、1950年代に遠野で台所用に用いられていた<かまど>の呼び名である。り、かつて岸田袈裟の実家にはかつて台所に改良かまどがあった<ref group="注釈">岸田袈裟の実家にあった改良かまどは消防法の問題のため1980年代に撤去され現存していない。『遠野学』p.260を参照。</ref>。そのかけ口のひとつにはお湯専用の釜が載せられ、湯をひしゃくで汲んで使う、という生活を営んでいた{{Sfn|菊池弥生|2012|p=260}}。
 
* 「ウマガマ(馬釜)人と馬が共に住む[[曲り家]]の土間にある土製の大釜のことで、岸田袈裟の生家も曲り家であり、ウマガマがあった{{Sfn|菊池弥生|2012|pp=258-260}}。
 
{{Sfn|菊池弥生|2012|p=261}}
 
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:: *右の写真はKamado Jikoではなく、Kamado Jikoに3つの「かけ口」があることをイメージしてもらうために、3つの「かけ口」のかまどを参考までに示したものである。<ref>実際の遠野の改良かまどの例は参考文献{{Sfn|菊池弥生|2012|p=259}}の写真を参照。(ウィキペディアでは「書籍の写真を参照」というコメントはNG)</ref>
* 「ウマガマ」は人と馬が共に住む[[曲り家]]の土間にある土製の大釜で、岸田袈裟の生家も曲り家であり、ウマガマがあった{{Sfn|菊池弥生|2012|pp=258-260}}。
* 「改良かまど」とは、1950年代に遠野で台所用に用いられていたかまどの呼び名である。岸田袈裟の実家にはかつて台所に改良かまどがあった<ref group="注釈">岸田袈裟の実家にあった改良かまどは消防法の問題のため1980年代に撤去され現存していない。『遠野学』p.260を参照。</ref>。そのかけ口のひとつにはお湯専用の釜が載せられ、湯をひしゃくで汲む生活を営んでいた{{Sfn|菊池弥生|2012|p=260}}。
:: 右の写真はKamado Jikoではなく、Kamado Jikoに3つの「かけ口」があることをイメージしてもらうために、3つの「かけ口」のかまどを参考までに示したものである。<ref>実際の遠野の改良かまどの例は参考文献{{Sfn|菊池弥生|2012|p=259}}の写真を参照。(ウィキペディアでは「書籍の写真を参照」というコメントはNG)</ref>
* なおKamado Jiko が「改良かまど」であるというのは、“アフリカ用に改良したかまど” という意味ではなく、遠野で「改良かまど」と呼ばれていた台所用のかまどを、アフリカ現地の粘土や石を利用して製作した、という意味である{{Sfn|菊池弥生|2012|pp=256-262}}。
 
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普及の引き金となったのは、Kamado Jiko を作った家庭に金属製の蛇口をプレゼントするという岸田のアイディアであった。水汲み場に設置した小石・砂・木炭をタンクに入れた簡易浄化装置に加え、Kamado Jiko と蛇口付き素焼き壷により、水道の無い村でありながら、蛇口をひねれば加熱殺菌された安全な水がいつでも飲めるようになった{{Sfn|菊池弥生|2012|p=256}}{{Sfn|環境を考える経済人の会21|2003|pp=7-8}}。素焼き壷は右か左の口にかけておけば、火力の強い中央で煮炊きをする際に余熱で70℃程になる{{Sfn|さくまゆみこ|2010|pp=107-110}}。70℃でほとんどの雑菌が死滅し飲み水として使える事は岸田が専門家に実験を依頼して確認した{{Sfn|環境を考える経済人の会21|2003|pp=5}}。
 
=== 煙突の有無 ===
1991年に Kamado Jiko により色々な問題が解決できたためこれから普及を図ろうという段階では、煙突をつけるか否かは選択に任せていた。岸田は煙突はつけるべきだと考えていたが、「煙突はいらない」という結果になった{{Sfn|環境を考える経済人の会21|2003|p=4}}。
 
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JICAは特定のかまどだけを奨励しているわけではなく、協力隊員が現地の状況に合わせ別のかまどを製作したり<ref>[http://www.jica.go.jp/chubu/topics/2011/110929_01.html 宇宙人の改良かまど普及大作戦] 国際協力機構</ref><ref>[http://www.jica.go.jp/project/ethiopia/5065025E0/news/katsudou/081002.html 少しの工夫でよりよい生活改善を!改良かまど設置編] 国際協力機構</ref>、Kamado Jiko に似た仕組みのかまどを製作する事もあり<ref>[http://www.jica.go.jp/publication/j-world/1002/pdf/02.pdf ゲンバの風 佐藤 真江 JICA専門家] 国際協力機構</ref>役立つ物なら何でも利用する。
 
=== 消失と自主的な再建 ===
岸田が普及につとめた Kamado Jiko であるが、自然災害による村落の移転、家の倒壊や台所の改築、[[ケニア危機 (2007年-2008年)|2007年-2008年のケニア危機]] の際に略奪・破壊に巻き込まれるなどの理由で多くが消失した地域がある。しかし、かつて Kamado Jiko のセミナーに参加していた住民が地元で普及を続けるケースも見られ、また新たにセミナーを開いて普及が図られている<ref>[http://friskc.blogspot.jp/2012/09/blog-post_23.html かまどフォローアップ ー袈裟さんの足跡をたどって] NPO法人「少年ケニヤの友」 2012年9月23日</ref>。
 
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|ref=harv
}}
 
== 脚注 ==
;注釈
<references group="注釈" />
 
;出典
<references />
 
== 関連項目 ==
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* [http://friskc.blogspot.jp/search/label/%E3%81%8B%E3%81%BE%E3%81%A9%E3%82%B8%E3%82%B3 NPO法人「少年ケニヤの友」]
 
== 注釈 ==
<references group="注釈" />
 
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== 脚注 ==
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{{DEFAULTSORT:かまとしこ}}