「ウスバカゲロウ」の版間の差分

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ウスバカゲロウ科は「[[カゲロウ]]」という名が付けられているが[[カゲロウ目]]とは縁遠い昆虫である。ただし、一般的に区別はあまり気にされていない。いわゆる「'''アリジゴク'''」の成虫の名として有名であるが、本科全ての種の幼虫がアリジゴクを経ているわけではない。[[卵]]→[[幼虫]]→[[蛹]]→[[成虫]]という[[完全変態]]をする昆虫である。
 
外見は[[トンボ]]によく似ていて、細長い体、丸い頭と細長い羽根[[翅]]を持っている。ただし、止まるときは羽根を背中に伏せてたたむこと、頭は小さくて[[複眼]]がさほど巨大ではないこと、[[触角]]が短いながらも太いことなどで区別できる。また、「カゲロウ」というだけあってその飛び方はひらひらと舞うようであり、トンボのように上手ではない。触角が短いので[[ツノトンボ]]と区別できる。
 
地方によっては'''極楽トンボ'''、'''神様トンボ'''など様々な俗称がある。
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 このグループの一部の[[幼虫]]は'''アリジゴク(蟻地獄)'''と呼ばれ、軒下等の風雨を避けられるさらさらした砂地にすり鉢のようなくぼみを作り、その底に住み、迷い落ちてきた[[アリ]]や[[ダンゴムシ]]等の地上を歩く小動物に大あごを使って砂を浴びせかけ、すり鉢の中心部に滑り落として捕らえることで有名である。捕らえた獲物には消化液を注入し、体組織を分解した上で口器より吸い取る。この吐き戻し液は獲物に対して毒性を示し、しかも獲物は昆虫病原菌に感染したかのように黒変して致死する。その毒物質は、アリジゴクと共生関係にあるエンテロバクター・アエロゲネスなどに由来する。生きているアリジゴクのそ嚢に多数の昆虫病原菌が共生しており、殺虫活性はフグ毒の[[テトロドトキシン]]の130倍といわれている。 
 
 吸い取った後の抜け殻は、再び大あごを使ってすり鉢の外に放り投げる。アリジゴクは、後ろにしか進めないが、初齢幼虫の頃は前進して自ら餌を捉える。また、アリジゴクは[[肛門]]を閉ざして[[糞]]をせず、成虫になる羽化時に幼虫の間に溜まった糞をする。幼虫は蛹になるとき土中に丸い繭をつくる。羽化後は幼虫時と同様に肉食の食性を示す<ref>[http://kyoushien.kyokyo-u.ac.jp/matsura/ アリジゴクの世界]京都教育大学理学科教授 松良俊明</ref>。かつてはウスバカゲロウ類の成虫は水だけを摂取して生きるという説が存在したが、オオウスバカゲロウなど一部の種では肉食の食性が判明している<ref>[http://www.pref.ishikawa.lg.jp/sizen/reddata/rdb_2009/4_ato/kennsaku2/documents/5-95oousubakagerou_1.pdf オオウスバカゲロウ] - いしかわレッドデータブック動物編2009</ref>。成虫も幼虫時と同じく、消化液の注入により体組織を分解する能力を備えている。ウスバカゲロウの成虫はカゲロウの成虫のようにほど短命ではなく、羽化後2 - 3週間は生きる。
 
 一般にはアリジゴクは、羽化時まで糞だけでなく尿も排泄しないということが通説化していたが、2010年にこれが覆されたと報道された<ref>アリジゴクがおしっこ 通説「排泄しない」は誤り? 2010年11月4日付 朝日新聞夕刊12面</ref><ref>http://www.asahi.com/special/playback/TKY201011040161.html アリジゴク、おしっこする 千葉の小4が通説覆す発見(asahi.com 2010年11月8日9時11分)]</ref>。報道によれば、[[千葉県]][[袖ヶ浦市]]在住の小学校4年生がアリジゴクのお尻から黄色い液体が出ることを発見し、日本昆虫協会に報告した。1998年には研究者が「糞は排泄しないが尿はする」ことを調べ、尿の成分に関する論文も発表していたが<ref>[http://kyoushien.kyokyo-u.ac.jp/matsura/ref.htm アリジゴクに関する文献一覧](アリジゴクの世界、京都教育大学・松良俊明)</ref>、多くの人が長年確かめようとしなかった昆虫の生理生態を小学生が自力で発見したことが評価され、この研究に対して協会より「夏休み昆虫研究大賞」が授与された。