「先物取引」の版間の差分

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===高度な信頼依存性===
先物取引は約束(契約)を根拠に、あらかじめ金銭上の受渡しを確約する契約形態であるため、債務不履行によるカウンターパーティリスクが非常に高い契約形態である。特に契約上不利益な結果に決着した側が債務の支払いを拒否したり、あらかじめ支払うべき額を用意せず破産に及ぶ場合、契約当初から支払う意思がなければ[[詐欺]]であり民事上の不法行為以前に刑事罰の対象となる。歴史的には[[ギルド]]や[[座]]における帳合取引(帳面だけによる予約取引)上の信頼性の確保は、加盟権の制限や自主的な懲罰規定(破約があれば永久追放)により担保されていた。また、未知の個々の市場参加者の信用リスクを遮断するため、[[クリアリングハウス]]で、精算・決済している先物取引所がある。市場参加者同士が行った売買をクリアリングハウスと市場参加者が売買代金の決済を行う方法「クリアリングハウス=セントラル・カウンターパーティー(central counterparty、CCP)」により、こうしたクリアリングの仕組みを通じ、個々の市場参加者(売り手・買い手)の[[信用リスク]]を遮断する。万が一、市場参加者がクリアリングハウスに対する債務不履行を起こした場合でも、クリアリングハウスが債務については市場参加者に履行する義務を負うため、[[信用リスク]]は市場参加者の支払い能力ではなくクリアリングハウスの支払い能力のみということになる。クリアリングハウスごとに制度が異なるが、例えば、清算参加者の違約対策として、適正な証拠金・預託金の確保、クリアリングハウスの強固な財産基盤、違約対策保険の導入や、清算参加者の相互保証(特別負担金)などで、違約対策財源等の確保している。その他、市場参加者の債務不履行時等でも清算参加者の立替金による決済も行っている<ref>[http://www.tradershd.com/tmp/timely/20110331155226_1.pdf 経営成績に影響を与える事象の発生に関するお知らせ(トレイダーズホールディングス株式会社)] 参考材料として</ref>。このような方法により市場参加者等の債務不履行に対する対策が施されていて、[[リーマンショック]]時においても、[[相対取引]]とは異なり、決済が円滑になされていて評価されている<ref>[http://oilgas-info.jogmec.go.jp/pdf/4/4335/201103_001a.pdf#search='%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%8F%E3%82%A6%E3%82%B9+++%E5%8F%96%E5%BC%95%E6%89%80++%E4%BF%A1%E7%94%A8%E4%B8%8D%E5%AE%89' 世界の石油市場と商品先物取引所] 参考材料として</ref><ref>[http://tama-riskmanagement.jp/message/graffiti_8.pdf “クリアリング・システムこそが先物取引の心臓部であることの再確認”] 参考材料として</ref>。現在でも信頼関係による契約履行の担保は先物取引の大前提であり、不特定多数の一般投資家の参入を前提とした取引所先物取引では、証拠金や値幅制限の規定、決済日が約定日の翌日(T+1)など取引の決済や建玉の値洗い(値洗制度)による差金の受渡しの期間を短く規定し決済リスクを軽減する、クリアリングハウスの設置<ref>[http://www.tama-riskmanagement.jp/cftc/cftc_27.pdf#search='%EF%BC%AC%EF%BC%AD%EF%BC%A5++%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0' 「錫危機」が証明したカウンター・パーティ・リスクと価格消失の恐怖] 参考材料として</ref>、あるいはブローカーの[[信用リスク]]に対する顧客資産への安全策(例えば、ブローカーによる顧客の有価証券や金銭等の流用の法令等による禁止、クリアリングハウスへの預託など資金の分別管理、ブローカーの支払不能対策保険契約、投資家保護基金等。なお、分別管理について、証券取引ではあるが破産した[[丸大証券]]の使い込みによる違法な信託保全すべき資金の不足の事例があり<ref>[http://kantou.mof.go.jp/kinyuu/kinshotorihou/9814syobun241205.pdf 丸大証券株式会社に対する行政処分ついて] 平成24年3月13日付け関東財務局ウェブサイト</ref>[[日本投資者保護基金]]が保証する1000万円ではカバーされない見込みで損失見込みとなった顧客もいて<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC2301R_T20C12A3EE1000/ 投資者保護基金、丸大証券の顧客資金補償へ] 平成24年3月23日付け日本経済新聞 電子版</ref>、さらに、FX事業では[[イニシア・スター証券]]でも、使い込みによる違法な信託保全すべき資金の不足が発生していて<ref>[http://kantou.mof.go.jp/kinyuu/kinshotorihou/9814syobun241205.pdf イニシア・スター証券株式会社に対する行政処分ついて] 平成24年12月5日付け関東財務局ウェブサイト</ref>、信託保全方式による分別管理は結局のところ業者の[[道徳|モラル]]に頼っているところが大きい。しかし、国内先物取引においてクリアリングハウスへの預託すべき資金の不足の事例がない。また、取引所FXの例ではあるが、[[大証FX]]では、大証に預託されている証拠金の残高を、各投資家が大証ホームページで直接照会、確認できるというサービスも導入されている)などが要請されている。米国では1929年の[[世界恐慌]]以降、相対契約を含めた一般信用取引を包括的に統制するための法整備が進み1934年証券取引所法や1936年商品取引所法が制定され、[[w:en:Commodity Futures Trading Commission|CFTC]](米国商品先物取引委員会)やSEC([[証券取引委員会|米国証券取引委員会]])が設置された。
 
クリアリングハウスにおける決済不履行時の対応例