「推力偏向」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
m →‎実用化: 内部リンク修正
11行目:
[[画像:Vector-nozzle-sea-harrier-jet-common.jpg|thumb|200px|シーハリアーの排気ノズル。後方 (0°) から真下 (90°) を超えて斜め前方にまで角度変更が可能なことがわかる。]]
[[Image:Boeing-X36-InFlight.jpg|thumb|ヨーイングに推力偏向を利用した無尾翼実験機 X-36]]
推力偏向は小回りのよさや高い運動性が求められる軍用機で主に利用されてきた。アイデア自体は航空機の黎明期からあったものと思われるが、実用段階に達し始めるのは[[第二次世界大戦]]以後のVTOL機の開発においてである。離陸着陸の際には推力で直接機体を持ち上げ、水平飛行時には推力を進行方向へとスイッチするデザインの機体が各国で試作・実験された(詳しくは[[垂直離着陸機]]を参照)<ref>通常VTOL機とは呼ばれないが、[[ヘリコプター]]もそのような機体開発の流れの中で生まれた。ヘリコプターの[[翼#回転翼|ローター]]は回転面を傾けることで浮揚力と推進力を生み出しているので、広い意味では推力偏向の一種と言える。</ref>。この種の機体の推力方向の切り替えは[[ティルトローター]]や[[ホーカー・シドレー ハリアー|ハリアー]]のようにプロペラやローターあるいはジェット噴射の向きを90&deg;程度回転させて行うというものが多い。
 
近年ではジェット戦闘機の運動性向上のための手段として利用されている。この場合、排気[[ノズル]]や排気パドルの向きを制御することで推力偏向を実現する<ref>運動性向上のために推力偏向が利用されるようになったのは、偏向機構の研究や大推力エンジンの開発が進んだこともあるが、何よりフライ・バイ・ワイヤと[[コンピュータ]]を用いた飛行制御システムが発展したことが大きい。</ref>。これは[[第4世代ジェット戦闘機|第4世代]]以上のジェット戦闘機では基本的な要素の一つとされている。特に、方向舵など空気力学的な機体制御は超音速領域では効果が小さく、超音速域においても高い機動性を発揮するには、推力偏向は必須の機能である。推力偏向によるポストストール機動<ref>高迎え角時における[[失速]]状態で行う機動の事。有名なものには[[コブラ (マニューバ)|コブラ]]がある。</ref>を行うと抵抗が増えて[[運動エネルギー]]を急激に消耗してしまうリスクがあるため、一概に[[空中戦]]で有利になるとはいえないが、使い方次第では空中戦の定理を根底から覆す可能性を秘めている。