「エントロピー」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
150行目:
エントロピーが増加するために、熱エネルギーのすべてを他のエネルギーに変換することはできない。したがって、熱エネルギーは低品質のエネルギーとも呼ばれる。
 
[[熱力学第一法則]]から、ある熱力学過程の前後での系の[[内部エネルギー]] の変化 {{mvar|ΔU}} は、
熱力学第一法則より次のように表すことができる。
その過程の間に系が外部から得る[[熱]] {{mvar|Q}}、系が外部になす[[仕事 (物理学)|仕事]] {{mvar|W}} により
{{Indent|
<math>dUQ =\Delta d'QU - d'+W</math><ref name="d-prime"/>
}}
と表すことができる。
{{mvar|U}} : 系の[[内部エネルギー]]、{{mvar|Q}}:系が外部から得た熱、{{mvar|W}}:系が外部に為す仕事
無限小の変化で考えると
 
無限小変化は可逆過程とみなせるため、化学反応や電場・磁場等の影響がないとき、{{math|d{{'}}''W'' {{=}} ''p''d''V''}}({{mvar|p}}:系の圧力、{{mvar|V}}:系の体積)およびエントロピーの定義を変形した {{math|d{{'}}''Q'' {{=}} ''T''d''S''}} より、
{{Indent|
<math>dUd'Q =dU TdS -pdV+d'W</math>
}}
となる<ref name="d-prime"/>。
と、内部エネルギーを完全微分の形で表すことができる。ここから直ちに
無限小変化においては常に平衡状態にあるとみなされるため、可逆過程となる。
エントロピーの定義式から無限小変化に対して
{{Indent|
<math>TdS =\left(\frac{\partial Ud'Q}{\partial ST}\right)_V,~</math>
p=-\left(\frac{\partial U}{\partial V}\right)_S</math>
}}
が得られとなる。
系が体積変化 {{mvar|dV}} を通してのみ外部に仕事をなす場合には、系の圧力 {{mvar|p}} として {{math|1=d{{'}}''W''=''pdV''}} となる。
化学反応や電場・磁場などを考慮する際にはそれぞれの仕事を考慮して以下の形になる。
これらをまとめると
{{Indent|
<math>dUdS = TdS -pdV +\mufrac{1}{T} dN(dU +EdP +HdMpdV)</math>
}}
と、内部ネルギントロピーを完全微分の形で表すことができる。ここから直ちに
{{mvar|&mu;}}:[[化学ポテンシャル]]、{{mvar|N}}:[[物質量]]、{{mvar|E}}:外部[[電場]]、{{mvar|P}}:[[誘電分極|分極]]、{{mvar|H}}:外部[[磁場]]、{{mvar|M}}:[[磁化]]
エントロピーは内部エネルギーはエントロピーや体積などの[[示量性]][[状態量]]を変数に持つとき、[[完全な熱力学関数]]となる。
 
ここから直ちに
内部エネルギーはエントロピーや体積などの[[示量性]][[状態量]]を変数に持つとき、[[完全な熱力学関数]]となる。
{{Indent|
<math>\frac{1}{T} =\left( \frac{\partial S}{\partial U} \right)_V,~
\frac{p}{T} =-\left( \frac{\partial US}{\partial V} \right)_S_U</math>
}}
が得られる。
の関係式特に前者は、統計力学において熱力学温度 {{mvar|T}} を導入する際に用いられる関係式である。
(エントロピーの存在を公理的に与える論理展開の場合は、熱力学においてもこの式が熱力学温度の定義式である。)
 
系が化学反応など物質の増減によってエネルギーの移動が生じるときは
また、
{{Indent|
<math>dS =\frac{1}{T}(dU +pdV -\frac{p}{T}dVmu dN)</math>
}}
となる。
と変形できることから、エントロピーはエネルギーおよび体積を自然な引数とする[[完全な熱力学関数]]であることも分かる。特に、
ここで、{{mvar|N}} は[[物質量]]、{{mvar|&mu;}} は[[化学ポテンシャル]]である。
さらに他の示量性状態量の変化 {{mvar|dX}} によるエネルギーの移動があるときは、それに対応する示強性状態量 {{mvar|x}} として
{{Indent|
<math>\left(\frac{\partialdS S}{\partial E}\right)_V=\frac{1}{T}(dU +pdV -\mu dN -xdX)</math>
}}
となる。
の関係式は、統計力学において温度を導入する際に用いられる。
{{mvar|X}} と {{mvar|x}} の組としては
* [[誘電体]]の理論における[[誘電分極]] {{mvar|P}} と[[電場|外部電場]] {{mvar|E}}
* [[磁性体]]の理論における[[磁化]] {{mvar|M}} と[[磁場|外部磁場]] {{mvar|H}}
などがある。
 
===リーブとイングヴァソンによる再構築===