「アルバコア (SS-218)」の版間の差分

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純之助 (会話 | 投稿記録)
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この間、一つの動きが起こりつつあった。6月13日、[[レッドフィン (潜水艦)|レッドフィン]] (''USS Redfin, SS-272'') による[[小沢治三郎]]中将麾下の[[第一機動艦隊]]以下日本艦隊出撃の報を受け、太平洋艦隊潜水艦部隊司令部は艦隊の予想進路上にある潜水艦に、予想海域に向かうよう下令した。[[フライングフィッシュ (潜水艦)|フライングフィッシュ]] (''USS Flying Fish, SS-229'') 、[[シーホース (潜水艦)|シーホース]] (''USS Seahorse, SS-304'') からの情報を元に潜水艦がマリアナ諸島西方海面に集まってくる。最初に第一機動艦隊に接触したのは[[カヴァラ (潜水艦)|カヴァラ]] (''USS Cavalla, SS-244'') であった。カヴァラは第一機動艦隊の補給船団を追撃するうちに[[戦艦]][[大和 (戦艦)|大和]]、[[武蔵 (戦艦)|武蔵]]、空母[[千歳 (空母)|千歳]]を含む艦隊を発見したが、駆逐艦に発見されて制圧され一時避退ののち浮上し、艦隊発見を打電。6月19日未明、カヴァラはついに第一機動艦隊の主力を発見した。その報を受け、数隻の潜水艦がその方向に向かったが、そのうちもっとも第一機動部隊に近かったのがアルバコアであった。アルバコアは6月18日に報を受け、マリアナ諸島の西南海域に位置していた<ref name="j">[[#SS-218, USS ALBACORE, Part2]]p.114</ref>。
 
6月19日7時50分、その少し前の7時16分に[[一式陸上攻撃機]]と思しき航空機を発見して潜航していた<ref name="j"/>アルバコアは、左舷前方13,000ヤード(約11.8キロ)の距離に空母と重巡洋艦、駆逐艦を潜望鏡越しに望見し、ほどなく右舷側にも空母を発見した<ref name="k">[[#SS-218, USS ALBACORE, Part2]]p.115,144</ref>。この時、左舷に見えたのが[[翔鶴 (空母)|翔鶴]]であり、右舷に見えたのが新鋭空母'''[[大鳳 (空母)|大鳳]]'''であった。アルバコアは徐々に距離をつめたが、それでも5,300ヤード(約4,800メートル)ぐらいの距離はあった。駆逐艦も潜望鏡の視界内に入ってくる<ref name="q">[[#Blair ]]p.655</ref>。8時10分、諸計算を{{仮リンク|TDC (兵器)魚雷発射指揮装置|en|Torpedo Data Computer|label=TDC}}に委ねたアルバコアは、「どれかが当たるだろう」というブランチャード艦長の運にその可能性に賭けて、{{coor dm|12|22|N|137|04|E|}}の地点で大鳳に向けて魚雷6本を発射した<ref name="k"/><ref name="q"/><ref group="注釈">この時の彼我の距離は1,400ヤード(約1,300メートル)と記録されており([[#SS-218, USS ALBACORE, Part2]]p.144)、カヴァラが翔鶴に対して魚雷を発射したときの距離1,200ヤード(約1,100メートル)([[#SS-244, USS CAVALLA]]p.52)と、実はあまり違いはない。ただし、あくまでもTDCが[[プロット]]と音源から算出した値であり、速力の記載が欠けている。</ref>。大鳳を発艦直後の[[彗星 (航空機)|彗星]]1機が、大鳳に向かってくる魚雷を発見し体当たりを試みたが失敗し海中に突入した<ref>[[#木俣空母]]p.638</ref>。アルバコアは即座に深深度潜航で避退したが、直後から3隻の駆逐艦から25発もの爆雷攻撃を受けた。6本のうち5本は距離が遠すぎて大鳳の後方を掠め去ったが、残った1本は大鳳の右舷前部に命中した。アルバコアでは大鳳に魚雷を命中させた1つの命中音やちょっとした爆発音を確認し、これは6番目に発射した魚雷によるものと判断した<ref name="l">[[#SS-218, USS ALBACORE, Part2]]p.116</ref>。
 
しかし、大鳳がどうなったのかは一切分からなかった。ましてや沈むとは誰も考えていなかった。ブランチャード艦長も「絶好のチャンスを逃した」と考えていた。そして、これは司令部でも同様の考えであり、この時点では暗号解読でも翔鶴の沈没しか確認できなかった<ref name="m">[[#谷光]]p.535</ref>。戦果は「翔鶴型空母1隻撃破」として処理された<ref>[[#SS-218, USS ALBACORE, Part2]]p.144,164,167</ref>。アルバコアは12時に浮上し<ref name="l"/>、[[ヤップ島]]と[[ウルシー環礁]]方面でパイロット救助任務に従事した。6月30日には[[ファイス島]]の[[リン酸塩]]生産施設に対して午前と午後に一度ずつ[[艦砲射撃]]を行い<ref>[[#SS-218, USS ALBACORE, Part2]]pp.145-146</ref>、7月2日にヤップとパラオ間の交通路の哨戒に転じた。7月3日、アルバコアは{{coor dm|06|10|N|136|18|E|}}の地点で<ref>[[#SS-218, USS ALBACORE, Part2]]p.147</ref>木製機帆船'''大栄丸'''(共同水産、130トン)<ref name="n">[[#大栄丸]]p.23</ref>を発見。大栄丸には、ヤップ島から[[パラオ]]への疎開者78名が乗船していた<ref name="n"/>。アルバコアは4インチ砲と機銃で、後方から大栄丸を攻撃して炎上させ撃沈した<ref name="p"/><ref name="o">[[#大栄丸]]pp.20-21</ref><ref>[[#SS-218, USS ALBACORE, Part2]]p.164</ref>。やがて航空機が飛来してきたので潜航し、浮上後に女性と幼児の生存者を救助した<ref>[[#SS-218, USS ALBACORE, Part2]]p.128</ref>。この際、日本側に救助された大栄丸船長らの証言によれば、アルバコアの乗員は海中に放り出された疎開者に対して発砲したり、棒でつついたりして虐殺を楽しんでいたように見えたという<ref name="o"/>。事が表沙汰になると、日本側の新聞はこの「残虐行為」に対して非難する記事を書きたてた<ref>[[#大栄丸]]p.6,8</ref>。