「煙草と悪魔」の版間の差分

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== あらすじ ==
[[Image:Nicotiana at IE island.jpg|thumb|160px|タバコの花]]
[[天文 (元号)|天文]]18年([[1549年]])、[[フランシスコ・ザビエル]]は[[キリスト教]]を広めるべく日本に渡来した。一方、彼に仕えるイルマン([[宣教師]])に化けた悪魔も日本にやってきた。[[マルコ・ポーロ]]の[[東方見聞録]]にある[[ジパング]]の記述とは程遠い日本の景色を見物して歩きながら、日本人をどうやって誘惑してやろうかと一人ほくそ笑む悪魔だったが、そもそも[[キリシタン]]が居ないことには誰も誘惑しようがない。そこで悪魔は当座の暇つぶしとして、畑と農具を借り、園芸を始めることにした。ザビエルも、彼が西洋の薬用植物か何かを日本で栽培するのだと思って、「それはとてもいいですね」と賛同した。おりしも春たけなわ。遠くの寺の[[梵鐘]]の音が聞こえてくる。それがまたのどかで、西洋の教会の甲高い鐘の音に慣れていた悪魔にとって、こののんびりとした梵鐘の音を聞きながら霞でぼんやりとした日の光にあたっていると、不思議と心が緩んできてしまい、悪をする気になれず、かといって善をなす気にもなれない。そんなもやもやとした眠気を払うかのように、大嫌いな労働であるはずの畑仕事に、より一層精を出す悪魔だった。
 
耕し終えた畑に、悪魔は耳の中に隠し持っていた何かの種をまく。やがて芽吹いて成長し、夏の終わりに至るや、漏斗のような形をした紫色の花が開いた。しかし、その植物の名を知るものは、誰も居ない。ザビエルが尋ねても、悪魔はただ笑うばかりだった。